センター長挨拶

2012年4月
京都大学野生動物研究センター長 幸島 司郎


 京都大学野生動物研究センターは、主に絶滅が危惧されている野生動物の研究を目的に、2008年に設立された新しい研究センターです。本センターは、50年以上の歴史を持つ霊長類学を初めとする京都大学のフィールド・ワークの伝統と技術を継承・発展させ、様々な野生動物、特に絶滅が危惧されているのに研究者が少ない、海外の大型野生動物の研究を推進する事を目的に設立されました。専任教員6名の本当に小さな研究センターですが、幸い、「苦労してでも野生動物の研究がしたい」という、志の高い大学院生が多く集まり、既に、ゾウやキリン、ハイラックス、オオカミ、ガンジスカワイルカ、アマゾンカワイルカ、イロワケイルカ、アザラシ、オランウータン、ジャコウネコ、ヤマアラシ等々、様々な野生動物のフィールド研究が世界各地で始まっています。
本センターの大きな特徴の一つは、動物園や水族館との連携によって野生動物に関する研究・保全・教育を推進しようとしている点です。野生動物を絶滅から守り生物多様性を維持するには、自然生息地での研究・保全を行っている研究者と動物園・水族館職員が連携・交流することが非常に重要であると考えているからです。既に、京都市動物園、名古屋市東山動植物園、よこはま動物園・ズーラシア、熊本市動植物園、名古屋港水族館、京都水族館と、野生動物の研究・保全・教育に関する正式な連携協定を結び、ゾウやキリン、チンパンジー、ベルーガ、オオカミ、ドールなど、動物園・水族館で飼育されている各種の動物の行動や形態、遺伝子の研究、飼育環境や飼育法の改善を進めています。
 もう一つの特徴は、フィールド研究だけでなくゲノム科学など、多様な分野の研究を統合した保全研究を目指している事です。これまで次世代シーケンサーを初めとする遺伝子解析設備の整備や多様な野生動物の遺伝子試料の収集と共同利用にも力を入れてきました。また、昨年度発足した熊本サンクチャリを始め、幸島や屋久島などに国内研究拠点を持つ他、アフリカやアジアに多くの海外研究拠点を持つ事も特徴の一つです。本センターは、これらの研究資源を、学内外はもとより海外の研究者にも有効に活用していただくことによって、高次の学際研究の場として成長することを志しています。
 2011年度からは、文部科学省の共同利用・共同研究拠点「絶滅の危機に瀕する野生動物(大型哺乳類等)の保全に関する研究拠点」として認定されたことにより、日本全国の研究機関や動物園・水族館との連携による、野生動物に関する研究・保全・教育の推進体制がさらに強化されました。また今年度、日本学術振興会の研究拠点形成事業(先端拠点形成型)「大型動物研究を軸とする熱帯生物多様性保全研究」が採択されたことを機に、今後、マレーシア、ブラジル、インドを初めとする海外の研究機関との共同研究と研究者交流をますます盛んにしてゆきたいと考えています。
最後になりますが、これまで本センターの設立や運営にご尽力いただいた、伊谷原一前センター長を初めとする学内外の多くの教職員及び関係者のみなさまに対し、深く感謝の意を表するとともに、今後も変わらぬご指導、ご協力をお願い申し上げます。