動物園や水族館は、日本人に野生動物に対する好奇心を喚起し続けてきた。現代人の自然観の醸成に大きな貢献を果たし、自然環境や野生動物の保全思想の基盤を作るためにそれなりの役割を果たしてきた。ところが最近、動物園・水族館の苦悩が膨らんでいる。動物に対する福祉の概念が広まるにつれて、野生動物を飼育するのはけしからん、飼うならもっと環境を整えろ、と動物園や水族館が一方的に非難されることとなった。映像でみればいいという人もいるが、五感が刺激される動物の実体と映像の中の動物とは、まるで違う。野生動物の飼育を否定することで、人間は野生動物との接点まで失うことになるのではないか。人がヒトらしく生きるために動物園も水族館も必要なのだ。では、どうすればいいのだろうか。