京都大学野生動物研究センター屋久島フィールドワーク講座>第10回・2008年の活動−ヤモリ班−感想文

第10回・2008年の活動

ヤモリ班 - 感想文

参加者感想文

「自分の将来を変えた屋久島フィールドワーク」

小島光明(群馬大学教育学部)
   自分は、この屋久島フィールドワーク講座の話を大学の掲示板で見つけたときに、「自分がやりたかったことはコレだ!」と思い、すぐに参加申し込みをしました。志望動機は様々ありましたが、その中で一番大きかったのは、自分は将来教員を目指すのか、それとも研究者を目指すのかを決める、ということでした。
 そんな中、屋久島で過ごした1週間は非常に楽しく、始めは長いかなと思っていた1週間も瞬く間に過ぎてしまいました。夜になるとヤモリを採りに道沿いの電柱や、トイレを懐中電灯で照らしながら歩き回り、朝方までヤモリを採る。合宿所に帰ってきたら昼まで眠り、遅い朝飯を食べた後は採集したヤモリを標本にしたり、次の採集場所をどうするかミーティングをしたり、記録したデータからわかることを考えたり、時にはヤモリ以外の動物を観察したり…と本当に充実した時間でした。今も屋久島での日々を思い出すと、また屋久島に戻りたくなってしまいます。機会があるならば、是非また屋久島へ行きたいです。
 行ったフィールドワーク自体も非常に楽しく有意義だったので、非常に良かったのですが、それと同じ位良かったのが同じヤモリ班のみんなとの出会いでした。この班のメンバーと一緒にフィールドワークが行えたからこそ、充実した1週間になったのだと思います。また、この楽しさがあったからこそ、自分はフィールドワークをこれからも行っていこうかなと思えました。
 自分は今回の貴重な体験をこれからの人生の糧として、様々なことを頑張っていこうと思いました。最後になりましたが、今回のフィールドワーク講座中、様々なことを指導してくださった戸田先生、疋田先生、チューターの河合さん、ヤモリ班の皆様に感謝したいです。本当にありがとうございました。

「この夏屋久島で学んだこと」

坂田ゆず(京都大学農学部)

 屋久島といえば、私は中学生の時に行った石川賢治さんの‘月光の屋久島’の写真展が忘れられなかった。青く光る古木や滝の写真集を暗い部屋で見ながら、付属の効果音の入ったCDを聞いていると、本当に夜屋久島の森の中にいるような気持ちになる。真っ暗な夜・・・月光に照らされて、青白く光りそびえ立つヤクタネゴヨウの古い白骨木・・・そこにへばりつくヤモリ・・・ヤモリの特性を理解していなかった私は、そんな光景でのヤモリの調査に思いをはせて屋久島に向かった。しかし、実際はそんな高度が高い山の上にヤモリがいるわけもなく、毎日トイレや電柱、ガジュマルなどを巡る日々が始まった。毎晩のヤモリ探しで、最初は、こんなところにもいるのかというようにヤモリの生息場所の広さと同時に探している場所で必ず見つけ出す先生の目と根性に感動していたが、次第に大きな視点での生息環境を踏まえながら、細かい場所のイメージを持って見極めて探すということを知り、いないところには全くいないし、いるところには密集していることが見えてきた。次から次へと出てくる疑問や発見と共に、得られたデータをもとに、もしかしたらこうなのではと考える自分の思考に会わせて、専門の知識を持った先生方や実際に研究をされているチューターの方に一つ一つ答えていただくことは、私にとって新鮮だった。今回のフィールドワークでは、予想を持ちながらも、実際に外に出て観察し、そこから分かることを答えがない中、考える楽しさを知ることができたと思う。だが時には、その予想が実は自分の見る目を知らないうちに支配してしまい、実際は混沌とした自然界の中に自分よがりの秩序をつくってしまうのだろう。屋久島でもたくさんの固有の生物がどこからやってきて、どこに生息しており、どのように多くの種がうまくすみわけ、個体群を維持しているのかは基本的なことに思えて、実はそれをはっきりと示すことはとても難しい問題であることを感じた。
 このフィールドワーク講座は、全国から様々な分野を専攻している学生が集まりそのテーマの専門知識がなくても共に参加できる講座である。そのテーマの内容だけでなく、地元で活動をされている方からお話を聞いたり、屋久島の郷土料理を作っていただいたり、様々な形で屋久島を体験できたと思う。屋久島という一つの場所が、大きな教育の場となり始めていることを感じた。その中で、多面的な視点で生物を見ることで自然の価値を示すことができる研究者の役割、それがどうあるべきかをのぞかせてもらった。発表では島の方々がヤモリを身近に感じ関心を持っておられることを知り、嬉しかった。この小さな発表がまた、地元の方に屋久島固有の生き物への興味を持っていただくきっかけとなるのかなと感じた。
 屋久島から帰ってきて、ふとした隙間を見るとヤモリがいるような気になってしまう・・・でも同じ島でも私の住んでいる人工島にはいない。それはきっと周りの環境が違うから?だろう。最後に戸田先生がおっしゃった、屋久島だけでなく身近な自然に対しても何かを感じて欲しいという言葉を忘れずに、自分の身のまわりのことにも当たり前とは思わず、フィールドワークの魅力といただいたエネルギーをもとにこれからの自分の将来を考えていきたい。

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「ヤモリとともに生きた一週間」

前田真希(京都大学農学部)

 大学構内で見つけた屋久島フィールドワーク講座のポスター。最初は屋久島という言葉に惹かれ、さらに大学の講義でこの講座の紹介を聞いたのが決め手となり、応募しました。実験室を抜け出して、実際に自然の中にいる生き物(ヤモリ)に触れながら、新しく知り合った仲間とともに考え、何か形にしてみたい。そんな期待に胸を膨らませて屋久島に降り立ちました。
 いざヤモリ調査が始まって、屋久島で有名な苔の森、とはほど遠い場所(汚いトイレや蚊の多い学校など!)を歩き回ってヤモリを捕獲したり、その結果を見て考察したりするうちに、どんどんヤモリ調査にのめりこんでいきました。夜、雨の降る中でも、ヤモリを見つけたいという執念は衰えず、完全にヤモリ探しにはまってしまっている自分にびっくりしました。本当に、フィールドワークってこんなに楽しいものなのかと、目から鱗が落ちる思いでした。
 また、前日の徹夜で何とか間に合わせた最後のシンポジウムでは、地元の方々の前で研究成果を発表する機会に恵まれ、この講座が始まって10年という節目の年に参加できた自分は幸運だったなと感じました。質問の時には厳しいご指摘を頂いたりして、非常に刺激的な体験となりました。
 このフィールドワーク講座では、自分の体を動かし、五感を働かせながらヤモリを採り、その結果を自分の頭で考えることができたと思います。研究の現場に自分自身が参加できた、夢のような一週間でした。特に、もともと決められた課題をこなすのではなく、得られたデータを見ながら次にどの場所を探すべきか考え、行き当たりばったりで調査を行うことが出来たのにとても満足しています。まさに、フィールドワークの醍醐味を味わうことが出来ました。
 またこのフィールドワーク講座で様々な方と知り合って、その人それぞれの生き方、考え方に触れることが出来たのも、私を大きく成長させてくれたと思います。中でもヤモリ班でお世話になった、どこでも寝ることができるというフィールドワーカーとしての得意技をもった疋田先生、ヤモリがいそうな電柱を一瞬で見分けてしまう戸田先生、腰痛に苦しみながらも私が捕まえ損ねたヤモリをすぐに捕まえてしまうチューターの河合さんからは、研究者が持つ熱い心を感じました。
 最後となりましたが、手弁当で参加してくださっている先生方、一緒に研究をしたみんな、このフィールドワーク講座を支えてくださった様々な方々にとても感謝しています。皆さんのおかげで、苔の森を観光するよりもずっとずっと面白い一週間となりました。今後は、今回のフィールドワーク講座で得た経験を糧にして、自分なりの哲学をもって、自分なりの視点を見つけて生き物や自然と関わりあっていきたいと思っています。どうも有難うございました。

「ヤモリに魅せられて」

正井佐知(神戸大学法学部)

 ヤモリ!?それは、大学の掲示板に貼られていた一枚のプリントでした。前を通り過ぎようとした時に目に入った文字、「ヤモリ」。爬虫類・両生類が好きな私は、食い入るようにプリントを見ました。これがフィールドワーク講座参加へのきっかけでした。これが専門家から直接ヤモリについて学べる最初で最後の機会だろう、講座内容がとても興味深い、でも私は文系学部なので応募してもきっと落ちるだろうな、などと悩んだけれど、とりあえず駄目元で課題を出してみることにしました。意外な選考結果が分かった時は小躍りして喜びました。
 そして実際に参加してみて、まず驚いたのがフィールドワークそのものと先生・チューターの方々の雰囲気です。それは私が日頃身をおいている法学系のものとはかなり違っていて本当にカルチャーショックでした。自由な気風。自らの研究に対して溢れ出る情熱、探究心。暗記だけに留まらない幅広い知識・考察、関連付ける力、既存の説に囚われない姿勢、失敗するかもしれないけれどとりあえずフィールドに出てやってみるという姿勢。そんな気概を感じて、これこそが学問(自然科学・生物学系)をするという事なのだなと強く実感しました。調査方法ですが、ヤモリ班の場合は主に夜間フィールドに出ます。そして、ヤモリの居そうな場所を探して捕獲、種の同定をします。次の日の昼、必要なものは標本にします。私は夜行性人間なので睡眠時間の方は問題無かったのですが、日ごろの運動不足が祟ってひどい筋肉痛になったり、何度か転んで青アザだらけになったりと疲労困憊していました。でも、ヤクヤモリかミナミヤモリか交雑個体かを同定して、何が屋久島で起こっているのかを紐解くわくわくとした気持ちが疲労感に勝り、楽しく歩き続けることができました。また、疋田先生・戸田先生やチューターの河合さんから聞く私にとって未知領域の話はとても新鮮で興味深いものでした。その他、フィールドワーク講座中に見た色々な虫、初めて見る変わった魚、木々、植物、可愛いカエル、ヘビ、コウモリ、子ガメ、滝、美しい海、素敵な星空、おいしい料理、主に水しか出ないシャワー、シンポジウムなど驚きの連続で気づけばあっという間に八日間が過ぎていました。色々なことを考え体験し体感したことで、私の予想をはるかに超えるほど有意義で一生忘れないであろう八日間を過ごすことができました。ただ、一度ヤモリを捕獲する際に勢い余って踏んでしまったことと、あまり自分の意見が論理的に言えなかったことは反省すべき点です。後者は口下手な私の昔からの良くない所で未だにあまり改善されていません。その点は、ヤモリ班のメンバー三人から学ぶことが多かったです。
 最後になりますが、いつもご飯に目を光らせている豪快な疋田先生、アロハシャツが似合うお茶目な戸田先生、先輩として見習う点が多いチューターの河合さん、個性的なヤモリ班のメンバー小島くん、坂田さん、前田さん、他三班の先生方・チューターの方々と学生の皆さん、屋久島の皆さん本当にありがとうございました。

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このページの問い合わせ先:京都大学野生動物研究センター 杉浦秀樹