京都大学野生動物研究センター屋久島フィールドワーク講座 >第10回・2008年の活動−スタッフより

第10回・2008年の活動

スタッフより

フィールドワーク講座を担当して

屋久島町環境政策課 泊征一郎

 今年は10回目を数え、新生屋久島町としては初めての屋久島フィールドワーク講座の開催となりましたが、人と自然班、シカ班、ヤモリ班、サル班の4コースに計15名の大学生が集い、残暑の厳しい中、また天候に恵まれない日もあったものの、無事7泊8日の講座を終了することができたことを、大変うれしく思います。
 また、人と自然班に1日間教職員研修として町内の教員の方を参加させて欲しいとの屋久島環境文化財団からの依頼がありましたが、講師の方々には快く引き受けていただき、感謝申し上げます。双方にいい影響を与え合うことができたらいいなと思い相談したところですが、いかがだったでしょうか。
 さらに、記念すべき10回目ということで、これまでの10年を振り返り、今後のオープンフィールド博物館のあり方を考えようと、「屋久島野外博物館構想10周年シンポジウム〜学び場としての屋久島を考える〜」と題して、本講座の礎を築いた先生方が中心となって記念シンポジウムも開催されました。第1部では、過去に大学生及び屋久島高校生として本講座に参加した人たちの話を聞かせてもらいました。いかに参加者のその後に影響を与えているのかが感じられ、本講座の意義を改めて認識したところですが、開催期間の関係で昨年今年と屋久島高校からの参加が得られず、担当としてはまた力不足をも感じたところです。
 今回、NHK鹿児島放送局様からは、シンポジウムの開催やフィールドワーク講座の広報等に多大なご支援をいただきました。加えて、講座期間中の食事のお世話を引き受けくださいました手塚様、山尾様他皆さま、及び、お忙しいなか10年の間変わらず熱い思いを持ってこの講座を作り上げてこられました講師陣の方々のご尽力もあり、「屋久島フィールドワーク講座」が記念の10回目を盛大に刻むことができました。改めて感謝申し上げます。
 今回の受講生の皆さんにおかれましても、フィールドワークを通して素の屋久島に触れたことで、多少なりとも今後の人生を歩んでいくうえで良い影響を受けていただけたとしたら幸いに思います。
 この10年を礎にした「オープンフィールド博物館」のさらなる発展及び屋久島町の環境行政に今後ともお力添えくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

「屋久島野外博物館構想10周年シンポジウム〜学びの場としての屋久島〜」開催にあたって

NHK鹿児島放送局放送部編成事業 宮形 佳孝
 つい先日のように屋久島の楽しかった生活を思い出します。
 屋久島にはじめて足を踏み入れたのは8年前です。最初はウミガメの調査で2年間。その後はヒキガエルの研究で雨や雪が降っても毎日調査を続けていました。その中で、たくさんの島の皆さんからサポートを得られ、自信を持って屋久島の研究に取り組む研究者にお会いできたことはいまでも貴重な財産です。また、NHK鹿児島放送局が本シンポジウムの一旦を担えたのも、そのおかげといっても過言ではありません。
 屋久島は、世界自然遺産に登録されて既に15年が経過し、いまなお多くの注目が集まります。それも屋久島の重要性にいち早く気づいた先人が、長年における屋久島の調査研究を続けて内外にその重要性を発信し、島の皆さんもその重要性を認識し活動してきた成果に他なりません。今年、講座に参加した皆さんもその歴史の一部を担っています。この活動の成果が、目に見えて現れてくるのは、まだまだ先かもしれません。自然を相手に何かを行っていく場合、そのタイムスケールを自然に合わせて、数十年、数百年のスケールで自然の変化を見続ける必要があるのでしょう。現代の社会システムでは、このような悠長なことを言っていると笑われるのかもしれません。
 シンポジウムの間、学生の皆さんが自分で得た情報を発表し、それを見ながら楽しそうに昔の思い出話をされている地元の方々を見ていました。この光景こそシンポジウムの趣旨である「学びの場としての屋久島」と「野外博物館活動」が屋久島にとってどのような意義があるのかという点を具現化していたと思います。
 本講座に参加した一人ひとりには、島を離れても自分なりの思い描く“屋久島の記憶”があると思います。いつかまた、屋久島に戻ってきたときにその感動がこの先ずっと変らないことを願うばかりです。また、おいしい魚を肴に焼酎を飲みながらここで出会った皆さんと屋久島の地で屋久島の自然について語り合えることを楽しみにしています。
 最後に、地元の放送局に勤める者として、このような機会を与えていただき関係者の皆様には、この場をお借りして感謝の意を述べたいと思います。本当にありがとうございました。

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ボランティアスタッフ

岡山大学大学院 社会文化基礎学専攻 大学院生 高田直子
今回、ボランティアとして参加させていただきました、第8回修了生の高田です。この夏、私と屋久島で出会ってくださったすべての皆様、本当にどうもありがとうございました。ボランティアという立場ながら、とてもとても大きな収穫を得させていただいた1週間になりました。それはやはり、受講生の皆さんや先生方の研究に対する真っ直ぐな姿勢に因るところが大きいと思います。1週間という短い間でしたが、毎日毎日「新しい」ものを求めて、フィールドを駆け回る皆さんの姿には、とても感動しました。ここでのフィールドとは、野外のことだけではありません。ある晩台所で、先生がその日の反省について感想を話されていると、そこに班員が集まって熱心に耳を傾ける姿が見られました。この夏、屋久島で過ごしたすべての時間がフィールドだったのだと思います。そこで、そんな皆さんと一緒に充実した1週間を過ごせた私は、本当に幸せでした。岡山大学大学院 社会文化基礎学専攻 大学院生 やはり私は「ルーチンワーク」ではなく「フィールドワーク」を一生続けて行きたいと思いました。毎日同じことを繰り返すことも大切なことですが、同じ毎日を生きるエネルギーを使うのだったら、新しい出会い、新しい発見、新しい思考の展開を求めて、自分の殻を破り続け、駆け回り続ける方が、刺激的で楽しいだろうと思いました。この講座で出会った受講生の皆さん、先生方、そして屋久島の皆さんの真っ直ぐな姿勢は、物事に真っ直ぐ向き合うことの大切さを教えてくれました。今年屋久島で得た、この「新しいもの」をさらに越えるためにまた、人に出会い続けるというフィールドワークを、一生かけてし続けていきたいと思いました。皆様、本当にどうもありがとうございました。またお会いできるのを、楽しみにしています。

事務局、校長先生(というよりは用務員さん)

杉浦秀樹
 今回、特筆すべきなのは、以下の3点でしょう。
 まずは食事です。今回は屋久島在住の手塚田津子さんと山尾晴子さんに食事を作っていただきました。毎日、屋久島の新鮮な素材を使った家庭料理で、本当においしかったです。今回の受講生は、本当にラッキーだったのですよ!屋久島の旅館に泊まってもこんなにおいしくて屋久島らしい物は食べられません。このおいしさは、素材の良さに支えられた、本物の味です。新鮮で安全な素材を使っていただいて、本当に質のよい食事を作っていただきました。
 最終日には、「潜る板前」高橋健二さんに来ていただき、目の前で屋久島の魚をおろして、食べさせていただきました。私ごとで恐縮ですが、私も屋久島で魚をおろすことを覚え、うちの「魚係」をしています。板前さんでもある高橋さんの包丁さばきは、(比べるのも失礼ですが)自分では到底まねのできないような、「ほおっ」とため息のでる見事さでした。一番前でじっと拝見させていただき、もちろん、出てきた魚もすかさずいただきました。
 こういったアレンジをしていただいたのは、手塚賢至さんです。今年のフィールドワーク講座の相談をしているときに、「食事は私たちで何とかしましょう」と手を挙げていただきました。シンポジウムでもお世話になりましたが、こういったところでもお世話になっていたのです。本当に助かりました。
 2番目はシンポジウムです。やはり10年目の節目であり、一度、この活動のまとめをしないといけないと思いました。揚妻さんには人選や企画など、シンポジウムの最も重要な部分を行っていただきました。揚妻さんのアレンジのおかげで有意義な議論ができたと思います。
 講座の発表会をポスター形式で公開でやろうと言ったのは私だったと思います。若干の不安もありましたが、予想以上に地元の方に熱心に聞いていただくことができ、本当によかったと思いました。実際には聴いていただくだけでなく、いろいろと教えていただいたというのが本当のところだと思います。やっぱり今年の受講生はラッキーだったぞ!
 3番目は、学生の頃に屋久島で調査をしていた人が、職を得て、また屋久島で活動してくれているということです。今回は予算の少ない中、NHK鹿児島放送局の宮形さんにいろいろとお金の工面をしていただきました。(宮形さん、いろいろおねだりばかりしてごめんなさい。)実際、シンポジウムはNHKの援助がなければ難しかったでしょう。宮形さんは前ページにもかかれていますが、大学院生の時に屋久島で研究されていました。就職されて、また別の立場から屋久島に関わっていただきました。
 シンポジウムに卒業生として来ていただいた4人の方もそうです。たとえば川野さんは、高校の先生として、毎年、生徒を屋久島に連れてきて屋久島の自然を体験する授業をされています。屋久島で育っていった人が、ウミガメのようにまた屋久島に帰ってくるというのが、本当に続いているのだなあと思います。

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このページの問い合わせ先:京都大学野生動物研究センター 杉浦秀樹