京都大学野生動物研究センター屋久島フィールドワーク講座 > 第10回・2008年の活動−博物館班−感想文

第10回・2008年の活動

博物館班の活動

感想

屋久島フィールドワークの感想

光田 衣里
 一週間という短い期間でしたが、屋久島で過したこと、その豊かな環境で毎日、何かに一生懸命になれたことは今までにない貴重な経験となりました。
 人があまり足を踏み入れない森を散策し、木々や植物、そこに生きる生き物までも自らが発見し、知ることから広がっていくオープンフィールド博物館には、私の知らない世界が広がっていました。見る物すべてが新鮮で逆に集落跡を見つけたときには、違和感を覚えるほどでした。しかし、集落跡から見つかる釜戸跡、畑の跡杉などや昔の人々が通っていたのであろう道跡をたどることで、以前の暮らしや生活を垣間見ることができました。自分たちの手で探り、GPS、写真、文献などを使って丁寧によみといていくことで、不確かなものではありますが復元していくことができます。そんな発見から私たちがオープンフィールド博物館として「展示品」といわれるものに説明を付け加え、それを一人でも多くの方に知ってもらい個々の新たな発見、学びとしてもらえることはとても素敵なことだと実感しました。
 知識が乏しくついていけないことも多々ありましたが、先生や班の皆に教えてもらい小さな発見が知識となってどんどん繋がっていくことへの楽しさそして、喜びを教えてもらいました。それは私にとって今回のフィールドワークでの調査以上に大きな収穫だと思いました。そして、屋久島フィールドワークから帰ってきて、道を歩くとふと目にする木や植物がなんなのか、なぜここに生えているのか、深い意味合いはわかりませんが知りたいと思う探究心と当たり前にあるものでも意味をなしていることを少し考えるようになりました。おまけに小さな虫だけですが、苦手であった昆虫まで触れることができるようにもなりました。
 私はオープンフィールドミュージアム班として、参加できたことを本当にうれしく思い、感謝したいと思っております。最後になりましたが、調査を支えてくださった先生方とチューターの方々、調査を共に仲良く行ってくれた班の仲間たちとボランティアさんそして、参加者の皆さん、滞在中の面倒を見てくださったスタッフの方々に心からお礼を申し上げます。貴重な経験をさせて頂き、本当にありがとうございました。

講師から
屋久島FW講座に参加して

鈴木 真理子
 私はヤクシマザルの研究のため、5年ほど屋久島の西部林道に通っている。その間に、いくつか西部海岸域の過去を推察させるような遺物、建造物を見聞きしていたが、深く調べる機会を得ずにいた。今回チューターとしてOFM班に参加し、その機会を得ることができた。その中でも参加したことによって再確認し、大きく感じ入ったことが二つある。
 ひとつは西部海岸域が開拓されたことのある二次林であることだ。知ってはいたが、開拓の歴史を踏まえて森を歩くと、伐採が森に与えた影響を実感できる。耕作がおこなわれていた場所は、背丈のそろった一種類の木が並び、下草がほとんどない味気ない森になっていた。人が残した跡は、数十年ぽっちでは消えない。森との付き合い方を知らない現代人の残す跡はもっとひどいに違いない、などといろいろ考えてしまった。
 もうひとつは厳しい自然と共に生活したかつての、そして今の屋久島の人々のことである。少し森の中に入ればわかるが、西部海岸域はけして緩やかな土地ではない。この土地で生活していくのは並大抵の力では無理だ。美しく厳しい自然と地元の人たちの苦労や貧困は常に一緒に存在している。5年目にしてようやく屋久島を発見したような気がした。今回突然の訪問にもかかわらず、快く昔話を聞かせてくださった栗生の方々には心からお礼を言いたいと思う。

楽しんでしまいました(すみません)

杉浦秀樹
 屋久島フィールドワーク講座は、「オープンフィールド博物館構想」から始まったものです(詳細はシンポジウムの記録をご覧ください)。とはいえ「オープンフィールド博物館」にまともに取り組むのは容易ではなく、この講座も自然科学実習の色合いの強いものになっていました。これはこれで、非常に充実したプログラムだったのですが、「オープンフィールド博物館」というものに近づくような努力もしなくてはいけないなあと思っていました。実のところ、オープンフィールド博物館がどういうものか、自分でもよく分からないままに始めてしまったのですが、世間にも「これこそがオープンフィールド博物館」という固まったものもないようなので、勝手にそう名乗ることにしました。
 最初は、自分でもよく知っている、半山か川原にしようかと思っていました。自分が知っているところでやれば、いろいろと計算もできますし、失敗がありません。しかし、そういうことをしても自分が面白くありません。せっかくなら、まだ、行ったこともない瀬切に行くことにしました。このように決心したのは、たしか、講座の始まる1−2週間前だったと思います。講座が始まって早々、「いやあ、初めていくところなんで、何があるかよくわかんないんだよねー」などとヘラヘラしゃべっていたのですが、この一言が、参加者やチューターの鈴木さんをかなり不安にさせていたことが、あとで分かりました。
 しかし、ふたを開けてみたら、そんな心配は無用でした。次から次へといろいろなものが見つかり、私自身も大変に楽しめました。何かを見つけるワクワク感というのを受講生の皆さんと共有できたのではないかと思っています。この感じというのが、フィールドワークでは大事なことだと私は思っているのですが、、、
 今回は、公開シンポジウムという場で、島の方にも発表を聞いていただくことができました。やはり身近な場所だと非常に興味を持っていただけるようで、特に栗生の方にいろいろとお話を伺うことができました。
 「屋久島オープンフィールド博物館」というと、どうも、大げさ過ぎるかもしれません。この名前だと、宮之浦岳周辺の山岳地帯とか、屋久杉なんかを入れないといけないような気がしてきます。でも、「栗生オープンフィールド博物館」ということにすると、とたんに身近でリアルなものになってきませんか?「栗生オープンフィールド博物館」、とか、「永田オープンフィールド博物館」といった集落ごとの積み重なっていって、屋久島オープンフィールド博物館というのができるといいのではないかと思いました。もちろん、これは、自分たちの住んでいるところでも同じことです。○○オープンフィールド博物館に、自分のすんでいる地名を入れて見ましょう。なるべく狭い地域がいいと思います。なにかできるような気がしてきましたね(?)。

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