京都大学野生動物研究センター屋久島フィールドワーク講座 >第9回・2007年の活動−シカ班−感想文

第9回・2007年の活動

シカ班 − 感想文

参加者感想文

「考える」ことを学べたフィールドワーク講座

伊藤宗彦

 屋久島フィールドワーク講座の一週間はあっという間に過ぎてゆきました。このフィールドワーク講座を通して、研究の難しさ、自然の複雑怪奇さを知りました。大学でお世話になっている先生が以前研究について、「本当の事は誰にも分からない。見えるものから真実の世界を作り出す」とおっしゃっていたのですが、その意味が少し分かったような気もしました。
 僕は屋久島には去年も行ったのですが、そのときは白谷雲水峡へ行ったり、縄文杉を見たりと、単なる観光に終わってしまいました。しかし、今年は深い屋久島を見ることができた気がします。たとえば、シカが増えた原因の一つが、実は国有林での駆除ができなくなってしまったことだと知り、人間と自然の関わり方の難しさを実感しました。
 グループでは調査方法をどう設定するのかを話し合ったことが、とても「考える」勉強になりました。現象をできるだけ正確に捉えようと考えるのは、頭の普段は使わないところを使ったような感じで、なかなか大変でした。
 このフィールドワーク講座でいろいろなことを学び視野が広がりました。本当にありがとうございました!

やらなきゃわからない!フィールドワーク

亀樋成美

 屋久島フィールドワーク講座を終えて、私の視野が広くなったと感じます。屋久島の大自然の中でシカや植物を実際に見て、触って、調べてゆくフィールドワークは、体感すると同時に新しい発見の連続でした。
 最初は、1週間も知らない人ばかりで過ごすことに不安もありました。案の定、私は人見知りをして、自分の意見がなかなか言えませんでした。しかし、周りの人たちの積極性や、探究心に触れて、だんだん不安も無くなり、私もいろんな事を学んで帰ろうと強く思うようになりました。
 調査する中で、次第に屋久島の植生やヤクシカの現状が分かってくるとともに、野生動物と人との関わり、野生動物と自然の関わりを考えるようになりました。野生動物だから保護するというだけでなく、他の自然への影響も考えて対策をとること、被害の実態調査の大切さなどが身にしみて分かった気がします。
 また、シカの解剖や、シカ肉のご馳走など、シカを直に実感することができて、とても貴重な経験になりました。百聞は一見に如かずと言いますが、フィールドワークは、やらなきゃわからない!といえるぐらい結果が決まっていません。調査を続けることで分かっていくことがあり、そしてさらに分からないことがでてきて、また調べる。そうしたおもしろさが今回経験できたことがよかったです。
 そして、人と人とのつながりも、フィールドワークで学んだ気がします、立澤先生や、寺田さん、川村さんのおかげで、実り多いフィールドワークになりました。本当にありがとうございました。そして班のみんなが、それぞれ自分の意見をちゃんと持っているのをみて、自分の意見をはっきりと相手に伝えることが大切なのだと再確認しました。結果をまとめるとき、自分が正しいと思っていることが、みんなの意見を聞くことで、違う観点からの考えや、自分では分からないことがあったりして、何度も深く考えるという経験ができました。みなさんのおかげで人間として成長しました!ありがとうございます。
 これから、私は、いろんなことに目を向けようと思います。屋久島での野生動物と人とのかかわりは、今後、自然が少なくなっていく世界でさらに大切な問題になると思います。今回の調査では、比較できるような過去のデータがあまり無いことで、変化があまり分かりませんでした。今後の地球環境のためにも、現状把握と調査が大切です、屋久島は世界遺産に登録されているなど、ゆたかな自然にあふれています。屋久島での自然環境と人とのかかわりの経験を、世界へ伝えてゆければ良いと思います。

△このページのトップへ戻る

屋久島フィールドワークの感想

山岡昭士
 今回、屋久島フィールドワーク講座に参加できて本当にいい経験ができました。フィールドワークは今までしかことが無く、始めはとても不安でした。でも、先生をはじめ皆さんとても優しくその不安はすぐに消えました。しかし、あまり積極的に参加できていなかった自分がいたので帰ってきてから反省しました。自分から進んで行動することの大切さを教えてもらいました。
 フィールドワークは思っていたよりも大変でした。また、フィールドワークはただ調査するわけではなく、準備や結果のまとめ、考察することが重要で、調査よりも難しいことがわかりました。そして、フィールドワークは一人ではできないことや、仲間と力を合わせることの大切を知ることができました。
 屋久島での経験はとても刺激的でした。改めて屋久島での経験を考えると自分は全然だめだなぁと思いました。調査ももっといい調査ができたのではないのかなぁとも思いました。今回の経験を生かしていろいろなことに挑戦したいと思います。みなさんありがとうございました。

研究のたのしさと屋久島のすばらしさ

山田規子
 実は、2007年の夏は、必ずや屋久島に行こう、と6月くらいから計画を立てていました。せっかく世界遺産の屋久島に行くのに、現地の植物や動物を観察しないのはもったいない!!そして研究者の方々が数多くいる(という噂)なのに交流もできないのは悔しい!!と考え、そのようなチャンスを探していた時に、大学構内の掲示板で、この屋久島フィールドワーク講座の案内の張り紙を偶然見つけたのです。屋久島の研究者の方々と交流できる!、自分も研究に携われる!と、この講座の内容にひかれ、早速応募したのでした。
 屋久島には、講座の始まる2日前にわたり、自転車で島を1周するという、無謀なことをしました。でも、そのお陰で、島の各地の名前や位置関係、シカ班の調査の拠点となる西部林道の様子などを把握することができ、参加の準備も万端に、講座の会場となる一湊に向かいました。
 講座が始まると、いきなり第1日目から講義、2日目以降は朝から夜までフィールドに出て観察や調査の繰り返しで、体力的につらい日々が続きました。おかげで、研究の地道さ、そして結果を目に見えるようにしてゆくことの大変さを知りました。特に、シカ班は、シカが活発になる夜を狙って調査に出かけたので、ほかの班の人たちと生活時間が合わず、毎日睡眠不足ぎみで、車での移動中が睡眠時間になってしまったりもしました。
 しかし、そのようなハードな毎日と寂しい食事メニューに耐えられたのは、ひとえに研究の楽しさと屋久島での生活の素晴らしさがあったからです。調査の仕方について班のみんなで悩んだことや、シカについての知識がなくて一から覚えながらの実習だったことなど、毎日なにがしかの障害がありました。でも、森、山、海、空のどんな瞬間もきれいな屋久島での実習は、それらの大変さを忘れるほどに素晴らしいものでした。
 一つ心残りなのは、調査時間が少なくて、つっこんだ研究ができなかったことです。もっと時間があれば、討論も裏付けもできたのになあ、とくやしく思います。ぜひ、来年のフィールドワーク講座は2週間にしてほしいです!!!
 短い間でしたが、私たちの世話と調査の指導をしてくださった先生方、チューターの方々、上屋久町の職員の方、猟友会の方々、ありがとうございました。上屋久町と屋久町が合併することもあって、来年度からは講座が開催できるかどうか分からないということでしたが、このような機会があることは、本格的に研究をしたことのない学生にとってとても素晴らしいことだと思います。来年もフィールドワーク講座が開講することを願っています!!!

△このページのトップへ戻る

はじめてのチューター経験!

寺田千里
 今回は初めてチューターとして補助をする立場に携わりました。つい最近までは、私が学生の立場だったので、とても不思議な気分で参加してしまいました。皆さんと一緒にたくさんのことを考え、楽しむことができ、そして学ぶことができました。
 今回のテーマは「ヤクシカと植物の関係を探る」ということで、私が学部生時代に行ってきた調査と似たような調査・方法となったので、自分の調査を客観的に見ることができた気がします。
 調査方法を考えるとき、調査中、そして自分たちで収集したデータをまとめるとき、問題とぶつかり試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ進んでいくみんなの姿をとても頼もしく思いました。
 意見がすれ違ったり、共通理解がなかなかできなかったり・・・そんな時は4人の誰かが「ちょっと待って!」とストップをかけ、冷静に4人で話し合って、(無理やりながらも?) 4人が納得して一歩ずつ進んで行ったのがよかったと思います。4人の姿を見ていて、共同研究をするということは難しいことであるけれども、共通理解ができたときにはとても頼もしい味方とタッグを組んで進んでいけるのだなと感じました。
 特に私の印象に残っているのが、まとめ作業時の4人の姿です。自分たちの収集したデータから何がいえるのかを真剣に考えている姿が心に残ります。今回取ったデータだけでシカと植物の関係を考察するには、足りない点も多かったと思います。しかし、自分たちのとったデータの中で何が言えるか、みんなで頭をひねって考えて、目的に立ち戻り、自分たちは何を示したいのかを話し合っている姿は立派だと思いました。
 私自身も、ある目的を持って調査を計画・実行し、それを文章にまとめるという作業は初心者であるため、苦しんでいる毎日です。今回のフィールドワーク講座で調査・データまとめの大変さと楽しさを再確認できました。
 私は屋久島、鹿児島の自然がとても好きです。そしてその自然についてもっと知りたいです。屋久島(鹿児島)に対する私の役割は、自然(特にシカ)について調査・研究し、得られた情報を地元の方に発信することだと思っています。これからもたくさんの自然や人とふれあい、「おもしろい」と思えるような情報を人に伝えられるように、調査、研究へ邁進したいです。
 皆さん、朝から夜遅くまでのヤクシカ調査やフィールドワークの日々、お疲れ様でした!

また遊びにきてください!

川村貴志

 屋久島へ移住してから5年,シカの調査研究に関わってから3年がたちます。元来自然好きの生物好きで,野や山をかけまわり,海や川に飛び込んで,ひたすらいろいろな観察をしてきました。その(病が高じた)結果なのでしょう,2年続けて,屋久島フィールドワーク講座のチューターをやらせてもらうことになりました。
 しかしこのフィールドワーク講座,一週間で,計画をたて,効率よくデータを集め,いっぱしの結果を出そうというのですから,正直大変です。この荷は重く,講師陣を含めた参加者全員にのしかかります.特に学も芸も金もない僕は,当然のごとく,教える側ではなく,習う側になってしまうのです。いやあ,本当に勉強になります。
 立場的に全く役に立っていないことは問題なのですが,それはさておき,地元住民(Iターンですが)の目線からの屋久島の面白さや楽しさといったものを僅かでも参加してくれた人々へ伝えられたなら幸いです。もしかすると,参加者の中から屋久島を調査地として研究を進める人が現れるかもしれず,そう想像するのも楽しいものです。屋久島を知るのに,一週間ではとても足りなかったと思います。ぜひともまた,遊びに来てください。

おわりに

立澤史郎

 シカ班はかなり変な班でしたね。なんと言っても’ほったらかし’。今年は特に,目的から調査方法,まとめの仕方まで,野外調査がほとんど初心者の受講者4人に考えてもらいました。そうして大変な苦境に陥ってしまいましたね(^^;)。
 目的が明確にならないうちに二つの調査が始まり,調査で得られる結果と目的とが整合しなかったり,二つの調査が研究全体の中でしっかりかみ合わなかったり,あげくは時間が無くなってきて効率よくやろうと思って調査法を簡略化してかえってまとめにくくなったり・・・.今思い出してもめまいがしますよね。
 少しやりすぎたかなと反省もしています。でも,感想文でも触れてくれているように,研究は設計が命であることを学んでくれたのではないでしょうか。もちろん漫然と観察するうちにアイデアがひらめくことも多々ありますが,それを研究という形あるものに組み立て,そのパーツである各々の調査を遂行するには,設計図が不可欠です。
 逆説的ですが,今回シカ班は,この設計図のどういうところがほころびやすいかを,身をもって体験しました。そして,どのデータが使えて,何が足りないか,発表会準備やレポート作成をしながら必死で考えました。提出されたレポートは発表会よりはるかに深化していて,みなさんの成長を確信しました。
 ですから,この報告書原稿の中で,「考察」だけはほぼそのままレポートから抜粋しました(結果まではかなり編集しました)。単なる推測だったり考察になっていない部分もありますが,それも含めて互いに読みあい,「考える」ことの糧にしてもらえれば幸いです。
 さて,閉校式でも言いましたが,本講座の講師をするにあたり,私はあることを常に意図しています。それは地元の方々,特にシカと深くつきあっている猟師や農家の方々と交流してもらうことです。
 そのために今回も,川村さんにチューターをお願いしました。また,30年近くも屋久島の獣害問題に向き合ってこられた村田豊昭さん(上屋久町農林水産課長)に特別レクチャーをお願いし,上屋久町猟友会の方々にはシカ肉の提供や貴重な懇談の機会をいただきました。三岳とシカ刺,本当にあうでしょ?
 この1週間をすごした限り,「屋久島」と聞いて動物や植物の名前しか浮かばない人にはならないでくださいね。いつかまたみなさんと地元の人々と一緒に,屋久島の自然を堪能できる日を楽しみにしています。

△このページのトップへ戻る

京都大学野生動物研究センター屋久島フィールドワーク講座 >第9回・2007年の活動−シカ班−感想文

このページの問い合わせ先:京都大学野生動物研究センター 杉浦秀樹