京都大学野生動物研究センター屋久島フィールドワーク講座>第9回・2007年の活動−植物班−感想文

第9回・2007年の活動

植物班 − 感想文

感想文

屋久島フィールドワーク講座に参加した感想
 井上太樹

 2006年夏、私は人生初の一人旅で屋久島を訪れた。屋久島の雄大な自然と一対一で向き合い、心底感動し、絶対またここに来る!と屋久島に誓って帰りの船に乗ったのをよく覚えている。そんなわけで、先輩や先生からこの屋久島フィールドワーク講座を勧められたときに行くしかないと思い、迷わず参加申込をした。
 屋久島フィールドワーク講座で過ごした日々は本当に素晴らしいものであった。植物1種を探すのにまるまる2日間も歩き回り、結局一個体しか採取できなかったり、調査中何度も屋久島らしい激しい雨に打たれたり、山を歩いて疲れた体を温泉で癒したり、うどんとそばとごはんを一食で食べたり・・・・挙げればきりがないが、とにかくこの屋久島フィールドワーク講座に参加しなければ体験できない貴重な経験をたくさんさせてもらった。
 しかし、この屋久島フィールドワーク講座で最も大切だったこと、それは「出会い」だったのではないかと私は思う。わざわざ夏休みを返上して参加してくる全国の熱い学生たちや、熱心に指導してくださる先生方との出会い。この屋久島フィールドワーク講座に参加しなければ、この人達と恐らく顔を合わせることは無かったと思う。これが一期一会というものなのだろう。そんな人たちとの出会いを通して、自分に足りないものをたくさん見つけることが出来た。たくさんありすぎて恥ずかしいので何を見つけたかは秘密にしておくが、この発見が私にとって非常に貴重なものであり、きっとこれからの人生において糧となるに違いない。いや、糧にしないといけない。そうすることがこの屋久島フィールドワーク講座に参加した私の責任なのではないだろうか。
 最後になりましたが、共に汗を流し頑張った植物班のみんな。力不足な私を最後までご指導してくださった村上先生・チューターの瀬尾さんをはじめ講師・チューターの皆さま。フィールドワーク講座中、色々とお世話になった屋久島の方々。そして、素晴らしい時間を与えてくれた屋久島。本当にありがとうございました!

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屋久島フィールドワーク講座感想
 大久保 未菜

 屋久島フィールドワーク講座での一週間は、毎日が新鮮で、あっというまに過ぎていったと思います。屋久島へは,もともと観光ツアーで行こうと思っていました。でも、この屋久島フィールドワーク講座に応募したおかげで、想定外のハプニングを参加者同士で楽しんだり、足元に生えているシダ類を細胞単位で観察する事など、ツアーでは絶対に経験できないことまでたくさん体験することができました。
 調査対象の植物のサンプルを1日中探したのに、全く見つからなかった日の夜は、班内に絶望に近い雰囲気が漂っていました。でも、「よし、ヒメタカノハウラボシで行こう!」という提案がされて、1063個体分のサンプル・データが取れたときには、「多すぎて困る!」というくらい嬉しかったのを覚えています。終盤でデータ整理を始めると、今まで秩序の見出せなかったいろいろな数字がすーっとひとつの方向性を指し示していくような、不思議な感じがしました。それは、植物にとって環境に適応するための戦略がそれぞれ違うからこそ起こりうることも、その時に知りました。
 私は、この屋久島フィールドワーク講座に行く前まで、「屋久島の自然を見て、そこに畏敬を感じることが大切」と思っていました。でも、ただ見るだけで自然への畏敬を感じることは無理なのではないかと思うようになりました。例えば、野生植物の環境適応の戦略に感動するためには、その植物のデータを1週間近く地道に取らなければならないし、永田いなか浜のあの夕日は、永田歩道で靴擦れとマメを作った帰りに見ないと泣けなかったと思います。屋久島で感動するためには、多少の苦労は必要だったのだと考えるようになりました。
 植物班内で唯一文系の私にもわかりやすい指導をしてくださった村上先生と瀬尾さん。そして同じ植物班の桑原さん・井上さん・悠ちゃん(中村さん)は、私に快く足をひっぱられてくれてありがとうございました。調査対象として予定していたヤクシマヒヨドリもヤマヒヨドリも全く見つからず、おろおろしながらとうとう見つけたと思ったヤマヒヨドリが実は,そうではなくて外来の雑草(ヒヨドリバナの近縁種)だと分かったときの激しい脱落感、発表のためのパワーポイントをまとめている時のあの焦燥感、報告会が終わったときの叫びたいような爽快感、そのすべての悔しい思いと楽しい思い出が、自分のなかで花揚川の沢の音とともに最高の思い出として残っています。
 植物班のメンバーに加え、自分たちが打った鹿をプレゼントしてくれた猟友会の方たち、屋久島案内をしてくれた川村さん、この講座を仕切ってくれた上屋久町役場のみなさん、ボランティアとして一生懸命働いていた久保ちゃん、シカ班、サル班、人と自然班のみなさん。この講座に参加されたすべてのみなさんにお会いできたことが、私の今夏1番の幸運と思っています。ほんとうに、本当にありがとうございました。
 最後に…私は、屋久島フィールドワーク講座後も1週間屋久島に滞在していましたが、屋久島を満喫し切ったとは、とうとう最後まで思えませんでした。小さい島なのに(周囲が100キロ以上もあるので、小さくはないか?)なかなか知ったつもりになれない、侮れない島です。また機会を作って是非訪ねてみたいと思います。

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屋久島フィールドワーク講座を経験して
 桑原翔太朗

 屋久島。その言葉からもたらされる最も強い印象といえるものを言葉であらわすならば、「好奇心をかきたてられる」ではないだろうか。実際、自分もそうであったように思う。屋久島という地名も知っているし、代表的な観光物も知っている人が多い。けれども、まだ多くの人にとって未知の部分を多く残していて、同じ日本なのだけれど、どこか異国のような神秘的な要素がそうさせるのではないかと感じた。私自身も、あまり島への旅行経験がないということも手伝ってか、応募当初はそうした好奇心が動機の大部分を占めていたように思う。しかし、この屋久島フィールドワーク講座を経験して、自分の中での屋久島という土地の位置づけが少し変わったということは、どうやら間違いない事実のようである。
 私は植物が好きで、卒業研究でもずっと植物と向き合っている。屋久島には多くの固有植物や、本土ではあまり見られないような南国系の植物、さらには高山系の植物まで多種多様な植物群が存在している。そうしたことは知識として多少は知ってはいたものの、実際に目にする前と後とでは知識の重さが違うように思う。百聞は一見に如かずと言うが、事実、体験として、そういったものと対峙する機会をもてたことは、すごく有意義であったと思う。本土で見られるような植物と比べるということは、本土の植物を多少意識的に見ていないと難しいように思うが、幸いなことに、そうした経験を私が普段つんでいたために屋久島に生育する植物群をとても新鮮に見ることができた。
 今回は材料としてシダ植物のヒメタカノハウラボシや高山植物のイッスンキンカなどを用いた。正直なところシダ植物やキク科の植物は、自分の中で苦手な植物群というイメージが定着していたのだが、今回の調査対象として選んだことや、特にシダ植物については村上先生が専門であったこともあって、とても深いお話をうかがうことができ、いわゆる苦手意識というものがあまりなくなったようである。また、多くのシダ植物を実際に見られたことも大きく影響しているように思う。
 屋久島に行って考えが大きくかわるほどの衝撃を受けたという人も実際自分のまわりにいるけれども、残念なことに私の中ではそうではなかったようである。しかし、屋久島での経験は自身の中にしっかりと象徴的な存在として残っている。講座終了から一月ほどたち、振り返って考えてみて、ありきたりな言葉かもしれないが、「参加してよかったな」と改めて思っている。

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屋久島フィールドワーク講座を終えて
 中村 悠

 私は、このフィールドワーク講座を大学の掲示板で見つけた瞬間、これだと思い応募しました。以前から屋久島(というよりも縄文杉)に興味を持っていたのと、1年ほど前に友人が屋久島に行き、その旅の写真が非常に印象的で、屋久島に行きたいと強く思っていました。さらに、このフィールドワークという形で生物学の一分野を学べるのは一石二鳥だと思ったことも理由になります。そして、ダメもとで応募した屋久島フィールドワーク講座でしたが、植物班の一員として参加することができました。
 今回のテーマは、高度の差での植物の小型化と渓流沿い植物の小型化という二つの軸で展開していきました。それらを調査するにもまずはその対象の植物を探して採集するところから・・・。雨にもうたれつつ、1800m級の黒味岳に登ったり、渓流沿いの石をぴょんぴょん飛び移りながら移動したり、とにかくアクティブ!!普段、フィールドワークなんてしたことのないフィールドワーク初心者の私は、ぜいぜい息をしながらもなんとかついていきました。これだけ苦労しても、とある一日は目的の植物は見つからず、次の日にやっと見つけても1個体だけで、結局分析にかけられなかったというハプニングもありました。しかし、そんなこともこうやってフィールドワークに参加してみないとわからなかったことであるし、とてもいい勉強になりました。そして、採集が一通りすんだらデータ取りとその分析です。苦労して採集したものを分析するのは苦労した分だけ非常にやりがいがあり、本当に楽しかったです。ただ、最後のほうになり疲れがたまり、みんなより先に寝てしまったときはごめんなさい。
 屋久島フィールドワーク講座ではさまざまな場所から集まったみんなと真剣な話からふざけた話までいろんな話をして本当に楽しく過ごせました。こういう毎日の会話の中で他の班のフィールドワークの話を聞くのも毎日楽しみでした(特に応募のときに迷ったサル班)。そして、指導してくださった村上先生、瀬尾さん、はじめ講師、チューターの方々のお話も大変興味深かったです。みなさん、本当にありがとうございました。また、お世話になった役場の方、屋久島の住民の方々にも感謝したいです。
 感想はまだまだ書ききれないほどありますがこれくらいにしておきます。最後に、屋久島を離れるのがものすごくさびしかったです。また、機会をみつけて絶対、屋久島に行こうと思います。

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このページの問い合わせ先:京都大学野生動物研究センター 杉浦秀樹