京都大学野生動物研究センター屋久島フィールドワーク講座>第8回・2006年の活動−ヤモリ班−報告書

第8回・2006年の活動

ヤモリ班 − 感想文

参加者の感想文

青山正志 創価大学工学部3年
 今回、ヤモリ班として屋久島フィールドワークに参加させていただきました。このフィールドワーク講座の存在は大学の掲示板で知りました。実は、これはまったくの偶然だったんですが、この講座のことを知る前から友人と屋久島に行く計画を立てていました。男二人で行く予定でしたから、なんと鹿児島まで鈍行を乗り継いでいくという無謀なプランを立てていました。その矢先だったのです。早くも青春18切符の方が安いか直接切符を買ったほうが安いかという計算を始めようとしていたときに、たまたまこの講座のプリントを目にしました。1週間の滞在費込みでこの値段・・・悪くないな。しかも講師陣はあの京都大学の先生方を中心とするメンバーです。極めつけはそのテーマでした。シカとサルの関係、シカと植物の関係、植物の多様性と有用性、ヒトと自然のかかわり、ヤモリ・・・ヤモリ?この言葉が自分をひきつけました。自分、実は爬虫類好きです。でも専門家による実際の爬虫類の研究現場というのにはなかなか出くわさないものです。爬虫類を研究している先生に会うこと自体、自分にとってはそんなに容易ではありません。プロの先生と会い、しかも一週間もフィールドに立ち会わせていただく機会などもう二度とないかもしれません。行くしかない。気がつくといつのまにか大学事務室で申込書を受け取っていました。
 迎えたフィールドワーク講座は本当に楽しく密度の濃いものでした。ヤモリの分布調査がどのようなものなのか知らなかった自分にはすべてが新鮮でした。調査方法はいたってシンプルで、あらかじめヤモリのいそうなポイントに目星をつけておいて夜間に訪れヤモリを捕獲・種を同定するという方法でしたが、シンプルゆえに一歩一歩分布を明らかにした実感があります。もっとも車を運転して連れて行ってくれたのは先生でしたが。
 この調査で得られたヤモリのうち、必要なものはホルマリン標本にして保存します。この標本作成もやらせていただきましたが、自分たちの作った標本が半永久的に保存されるといわれ、科学の責任も感じることができました。
 他にも書きたいことは色々ありますが、今回の講座で得られたもののすべてが自分にとってはかけがえのない経験です。研究職を目指す身として、とてもいい刺激になりました。
 末筆になりましたが、チームを率いて指導してくださった戸田先生および疋田先生、チームの皆、講師陣の先生方および山極校長先生、ボランティアの村山さん、上屋久町役場の方々、そして帰り際で始末に困ったバーナー用ガスカートリッジを快く引き取ってくださったシカ班の立澤先生に深く御礼申し上げます。

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後藤田綾 東京農業大学農学部4年
 私は世界遺産である屋久島にずっと行ってみたいと思っていた。またエコツーリズムの地として、観光だけでは終わらせたくないという思いがあったので、今回のフィールドワーク講座は私にとってとてもいい機会だった。自分でもこんなに早く屋久島に行けるとは思っていなかったので、感想文を書いている今でもまだ驚いている。
 フィールドワーク講座は大きな期待とちょっとの不安でスタートした。私はヤモリ班になったものの、今まで一度もヤモリを素手で触ったことがなかったので、捕まえられるかどうか不安だった。しかし実際にはヤモリを見つけることが大変だったため、見つかったら嬉しくて夢中で捕まえていた。初めて見つけて自分で捕まえた時のあの驚きと感動は一生忘れられない。そんな訳で私もついにヤモリデビューを果たしたのである。
 ヤモリは夜行性なので、昼間はヤモリがいそうな所の下見、見つけたヤモリの標本作業、昼寝、夜に行動開始というスケジュールだった。私はどちらかというと夜行性ではないので、睡魔に勝てず車の中で寝てしまい、気がつけば研修所ということもあった。夜にヤモリを探すのは睡魔と闘うという点では大変だったが、それ以外ではわくわくの連続だった。皆でこっそりとライトを照らしながら下見した場所を回るのは、少しスリルがあった。屋久島の夜はなんと言っても満天の星空が美しい。道で皆と一緒に寝っころがって見た星空は最高だった。
 一週間ヤモリを追って、ヤクヤモリとミナミヤモリの区別がつくようになった。雑種と思われるヤモリを見つけた時は少し同定に悩まされたが。本当に雑種であるのかDNA鑑定の結果や、今後ヤモリの分布域がどのように変化していくのかが楽しみである。
 私は、全国の大学生や先生方、地元の方々と交流できることもフィールドワーク講座の醍醐味だと思う。育った土地や考え方も違う人達と交流できたことは本当に貴重な体験となったし、とても楽しく有意義なものだった。私は学生生活最後の夏休みだったので、フィールドワーク講座に参加できて本当に良かった。最後に、屋久島フィールドワーク講座でお世話になった上屋久町の職員の方々、屋久島高校の方々、講師の先生方、本当にありがとうございました。

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木場成未 鹿児島県立屋久島高校環境科
 この夏休みに体験したフィールドワーク講座で、私はヤモリの研究をしました。ヤモリを研究することを選んだのは、ヤモリが好きだからとか爬虫類が好きだからとかそういう理由ではなく、ただ単に一番先に目に入ったからという理由でした。その様な単純な理由でヤモリのグループに入ってしまったため、大学生や先生方の話しているヤモリの話やいろいろな専門用語は私にとって理解がとても難しく、何の話をしているのか分からないことがほとんどでした。しかし一緒に研究を続けていくうちにヤモリの話も分かってきたし、専門的な用語も理解できるようになっていきました。
 ヤモリを探しに行ったり見つけに行ったりするのはとても難しくたいへんな事でした。私は屋久島にどのくらいのヤモリがいて、どこに生息しているのかなど、今まで全く知りませんでした。屋久島に2種類のヤモリしかいない事も初めて知りました。今ではその2種類だけでなく、それらの交雑個体も見分ける事ができるようになり、自分でも驚いています。約一週間の調査は、そのほとんどが夜中に行う調査でした。朝も、朝食のために8時ぐらいには起きないといけず、とてもハードなスケジュールでした。研究を仕事にする方々はいつもこんなハードな事を行っているのかと思うと、絶対私には無理だと思いました。
 調査ではたくさんのヤクヤモリとミナミヤモリをとりました。大学生や先生方はヤモリのことをかわいいと言っていて、自分の研究をしている生物などに愛情をもって研究できる事はすごい事だと思いました。しかし、最終日近くにした解剖は、少しかわいそうな気もしました。解剖は簡単に見えますが、意外と難しく、ヤモリの姿をきちんと残し、あまり血が出ないようにしなくてはいけなくて、私はあまりできませんでした。ヤモリから採った肝臓などを液体窒素に入れるのは、なんかとても楽しかったです。
 最終日は夜中まで、みんなでまとめをしました。大学生はとてもしっかりしていて、きちんとまとめていました。その時の話し合いも難しく、あまり理解できませんでしたが、なんとかやっとついていけました。まとめも終わり、発表はとても緊張しましたが、大学生の方達が助けてくれて、どうにか発表できました。今回の講座は体力的にも精神的にもとても疲れましたし、きつかったですが、学べたことがたくさんあり、すごくいい経験になりました。

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栗田和紀 北海道大学理学部3年
 実習中はただ楽しくて仕方がなかった。1匹でも多くのヤモリを見つけて捕まえるのだという思いでフィールドに出ていた。実習を振り返ってみても自分がヤモリを捕まえた場所やどんな建物でどこら辺にいたか、時刻はどのくらいだったかも思い出すことができる。
 ただ今はそれだけではなく、何かすごいことをやったような気でいる。だって、今まで分からなかったことが今回調査をしてみて明らかになったのだから。屋久島に生息するヤクヤモリとミナミヤモリの分布がさらに詳しく分かったのだ。「屋久島に生息するミナミヤモリの分布は局所的であった」「安房でヤクヤモリとミナミヤモリの交雑個体が新たに見つかった」ことは、まだヤモリ班のメンバーと発表会で聞いてくれた人しか知らないだろう。ずっとずっと内緒にして僕たちだけの秘密にしたいけど、そんなことは許されない。より多くの人に今回の結果を見てもらい、いろいろな意見をもらいさらに次回の調査に役立てることがフィールドワークであり、科学的な研究なのだ。真夜中に道路の真ん中でパンとバナナを食べたことは初めての経験だったけど、まだ誰も知らないことを明らかにすることも初めての経験だった。僕は、自分が大好きな生き物のことをたくさん知れるから理学部に入った。しかし、今回の講座に参加して短い期間で本格的な調査をやってみて、未知なることを明らかにすることはそれと同じくらい楽しく、面白いことなのだということを知ることができた。
 今回の調査が楽しかったのは愉快な先生方がいたからでもありました。戸田先生はヤモリが好きです。ヤモリを探している戸田先生はとても楽しそうで、なかなかヤモリがみつからない時でも先生の姿に励まされました。ある調査地点でヤモリを探している時に、戸田先生が「おれがヤモリだったら絶対あの壁につくのにな」と言ったことがありました。この言葉はただヤモリが好きなだけではなく、数多くの経験とヤモリの習性を熟知しているからこそ出てくる言葉で、フィールドに出てからいかに力を発揮できるかはフィールドに出る前の勉強の上に成り立っているということを知ることができました。一方「腹が減っては調査はできぬ」ということを語らずも教えてくれたのは疋田先生です。先生の思いっきり食べて思いっきり寝る姿はまさにフィールドワーカーだなと思いました。神社でヤモリを捕ろうとしたときに先生が崖から落ちたことがありました。幸い大事に至らなく良かったのですが、そんな時でも笑顔でいる姿はとても印象的でした。僕も自然に身を委ねられるような体力を養おうと感じました。これらのこと以外にも2人の先生は多くのことを教えてくれました。いつも楽しく、自然が大好きな先生方とフィールドワークができてうれしかったです。
 ヤモリ調査は楽しかったけれど眠かったのは事実です。昼間のデータ整理になると眠くなり、班のみんなに迷惑をかけました。結果として新事実が明らかになったけど、ただ楽しんでいるだけでみんなに成果を伝えることに力を注げなかったのは反省すべき点です。
 僕は、生物の分布には、気温や地形などの物理的要因や餌などの資源、外敵などの多種の影響が大きく関わっていると思っていました。しかし今回の調査で、人間の生活圏に生息する生物の分布は、人間活動の影響を大きく受けていることを実際に知ることができました。
 最後になりましたが、憧れの人にも会え、僕の夢に近づける機会を作っていただいた上屋久町・京都大学21世紀COEプログラムの皆さん、講師の先生方、参加者の皆さん、どうもありがとうございました。

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このページの問い合わせ先:京都大学野生動物研究センター 杉浦秀樹