京都大学野生動物研究センター屋久島フィールドワーク講座 >第8回・2006年の活動−シカ班−感想文

第8回・2006年の活動

シカ班 − 感想文

参加者感想文

屋久島フィールドワーク講座に参加した感想

民法沙希
 今回屋久島フィールドワーク講座に参加できて、本当に良かったと思います。なかなか体験できないことばかりだったこの1週間はどの時間もとても楽しく、大変充実していました。調査したシカや植物のことだけでなく、こんなに吸収することが多くて密度の濃い1週間は他に過ごしたことがありません。初めは、同じ班の人たちと合わなかったり、講師の先生が厳しかったらどうしようといろいろ心配しましたが、全然心配する必要はありませんでした。班のメンバーも講師の先生方もいい人ばかりで、毎日みんなと顔を合わせるのがとても楽しみでした。みんなで調査だけでなくて、川にお昼ご飯を食べに行ったり遊んだり、シカの胃袋も観察できました。またこの講座中、いろいろな人と話すことができて大変勉強になり、新しく人と関わっていくことはとてもいいものだなぁと感じました。
 全国各地の大学から来ている学生や講師の先生方ともお話ができ、とても貴重な機会だったと思います。打ち上げでは他の班の先生方とも話すことができました。このような場を用意して下さって感謝しています。また、調査が終わってみんなで結果をグラフにしたりそこから考察していくとき、いろいろな人の意見を聞いて自分の意見も言うことが、1人で考えるよりも理解を深めることができることを実感しました。
 屋久島にいて、山に入ったり川に入ったりして1週間も過ごすと、なんだか本当の人間になったようなというか、人間のあるべき姿はこうではないのかなと感じました。体の深いところからきれいになっていくような、とても気持ちの良いところでした。普段の生活ではこんなに自然は近くにありません。今、屋久島から離れて、それがとても寂しいです。自然の中で、自然と密接に関わって生活するほうが、この便利な生活をするよりよっぽど豊かだと感じました。これからも時々屋久島に行きたいです。この講座に参加して、今までよりいろんな方面に関心が持てるようになり、視野も広がりました。この経験は一生忘れられず、自分自身の成長や生き方に大きく影響していくような気がしています。本当にありがとうございました。

感想

真津達巳
 今回フィールドワークに初めて参加させてもらい、非常に有意義な一週間を過ごすことができました。元々屋久島に住んでいながら自分が知らなかったことがこんなにも多かったのはショックでしたが、それよりも新しく得た知識に対する興味が先行し、終始好奇心の尽きない一週間でした。
 僕にとって「ヤクシカ」は子供の頃から特に慣れ親しんだものとは言い難く、どちらかと言えば「ヤクザル」の方が頻繁に目にしていたし、被害としても猿害がポピュラーなように感じていました。だから今回の課題で「ヤクシカと植物の関係」というタイトルを見たときにヤクシカがこんなにも注目を浴びていることに正直驚きました(だからこそ興味が湧いた訳ですが)。
 無事選考にも通って8月22日、待望のフィールドワーク講座がスタートしました。僕は一応理学部生物学科というかたちで今回参加しましたが、こういった全国クラスでのフィールドワークは初めてだったので、周りについていけるか不安でした。講師は凄い気難しい感じで、学生も話しかけづらい雰囲気かなと思っていたら・・・講師陣は自己紹介の時点で強烈な個性を発揮しまくりで、周りは明るい、まるで高校生みたいなノリの女性ばっかり。良い意味で予想がはずれ、本当に楽しい環境のなかで研究できたと思います。
 シカ班の講師の方々は特にいい人ばかりで、分からないところは親切に教えてもらい、ただ教えるだけでなく学生の意見も尊重してくれて、時には(多分に)冗談も織り交ぜながらご指導下さって本当に感謝しています。そのおかげで一週間という、最初は長いかなと思えた日数もあっという間に過ぎ去ってしまいました。この一週間、自分たちで興味を持ったことをどうすれば研究課題へと発展させてゆけるか、そして他人にどう表現するか、どうすれば最も分かりやすいか、皆で試行錯誤しながら作り上げたプレゼンは、他の班とは一味違う、シカ班らしい満足のいく発表になったと思います。欲を言うなら、時間が少なすぎたことくらいです。
 まだまだ研究としては詰めるところはあったと思うし、そうであれば調査自体改良する点も見つかってきます。そういう意味では次につながる研究が出来たんじゃないかなと思います。また自分自身も今回、学校の実験とは違う、生の研究が体験できたということでワンステップ進めたような気がします。それほどこのフィールドワークは僕にとって、僕の人生にとって大きな第一歩だったんじゃないかと思います。本当に参加して良かったなと思えるフィールドワーク講座でした。
 最後に今回ご指導いただいた講師の方々、様々な面でご協力下さった上屋久町役場の方々、そして今回こうした研究の場を一緒に持ち、研究してきた学生の皆さん、本当にありがとうございました。また機会があればぜひ屋久島以外でもお会い出来る日を楽しみにしています。

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感想文

山根晶子
 屋久島から帰って一ヶ月がたちました。屋久島で体験したことは私にとってめっちゃインパクトがあって、いまだに消化しきれていません。
 自然の中に直接入っていってそこで生きている動植物を自分自身で感じることができる「フィールドワーク」に惚れて今回の参加を決意。しかも屋久島!しかも全国から人が集まってくる!期待でいっぱいでした。しかし心踊る私はこの屋久島で数々のショックに打ちのめされるのでした☆
 まず参加者のキャラの濃さ。さすがは全国から集まっただけあります。みんなのモチベーションの高さに、人前が苦手・人見知りな私は完全にのまれました!そして講師の方々はさらに変な人たちばかり。でもみんなキラキラしていて楽しそうで羨ましかった。憧れる方々ばかりでした。
 次にフィールドワークの自由さ。この活動にはお手本も答えもありません。様々なところにアンテナをのばし、自分で考える。課題を与えられる環境に慣れてしまっていた私には一番難しいことでした。けれど無限の可能性を秘めたフィールドワークはとても魅力的でドキドキしました。
 そしてフィールドワークというのは決して一人では出来ず、人と人との繋がりがあってこそ成せるものだということ。果てしなく大きい自然・自由過ぎる動物達の相手をするためには、ちっぽけな私たち人間は協力して踏み込んでいかなければならないと感じました。
 屋久島での活動は刺激的過ぎて、期間中はいっぱいいっぱいだったのが実際のところでした。帰ってきて冷静になって振り返って見ると、さらに疑問や興味が溢れてきて、あの時自分にもっと考える余裕があったら・・・と少し残念ですが。でもこれをきっかけにさらに自分を磨きたいと思いました。
 講師の方々、参加していたみんなに出会えてよかったです。ありがとう☆
 ありきたりな言葉だけど、屋久島フィールドワーク講座に参加してほんとによかった!

感想文

矢野 瞳
 屋久島フィールドワークに応募するまで、屋久島には世界遺産の大きい杉があるくらいの認識しかありませんでした。屋久島に到着してトッピーから降り立つと最初に目に映ったのは山でした。島の中央を陣取る山々は豊かな自然の象徴のように思えました。
 今回はフィールドワークに参加する前に数日連泊して島を回りました。山、川、海をいっぺんに味わえる独特の自然形態とその自然と共に生きている人たちの温かさ、時間に縛られない一日の緩やかさを心いっぱいに感じながら、本来の目的地である一湊へと向かいました。
 自分自身フィールドワークの経験もなく、学校で学んでいるものとはちょっと畑が違うのでわくわくしながらも、よくわかんないのに大丈夫か?きっと他は賢い人たちばっかりなのだろうなぁとかなり心配しました。シカと植物の班なのにシカについて何も知らない!!とも思って連泊中にシカの本も買いましたが結局読みきれずに帰ってきてから読みました。
 実際集まってみるといろんな分野の人がいて、わけのわからない専門用語じゃなく普通の日本語を話す、まじめだけどノリのいい人ばかりで、しかも女の子がいっぱいの楽しい共同生活になりました。
 シカ班では夜のスポットライトカウント、朝に前日のデータ入力、昼間は下見と植生調査が主で、他の班と違って朝がゆっくりだったので、朝に弱い私も寝起きの悪さで同じ班員の子を煩わせることがあまりなくよかったです。
 夜のスポットライトカウントは面白かったけど、シカを見つけるのにちょっと苦労しました。シカの発見に一喜一憂したり、幻なのではないかと思ったり、双眼鏡のピントが合わせられなかったり、ジタバタしました。
 昼間は夜の調査ルートの下見や植生調査をまじめにしながらも、ピクニック気分で涼しい川原や林間で昼食を食べたり、帰りに先生方イチオシのソフトクリームをいただいたり、シカの胃の解剖を見せてもらった後みんなで着衣遊泳?を楽しんだり、学びも遊びも屋久島を満喫させていただきました。
 今回のフィールドワークに参加して、物事の見方がひとつではないこと、さまざまな立場の人たちで話し合って方向性を探っていくことが必要だということを教えてもらいました。この見方はきっと生態学だけでなく、自分の専門の生命工学や、これからの科学技術を使いこなすうえで、本当に地球のための使い道を探るために必要だと思います。そして豊かな自然と共に生きてきた屋久島の方々がシカなどの問題をどのように考えていくのか、自然と切り離されつつある都市部の住民としては、その考え方を手本にしながら、未来へ続く自然との生き方を探っていきたいと思います。

講師講評

立澤史郎・高橋裕史・川村貴志
 いやぁ、本当にお疲れ様でした。シカ班(講師・チューター3人、大学生4人、高校生1人)は、「ヤクシカと植物の関係を測る」をテーマとして、初日はヤクシカの生息状況や屋久島の植生について解説を行い、ヤクシカのスポットライトカウント調査を基本課題として提示しました。また調査地は、結果を比較できるように、ヤクシカの密度が異なる3地点(高密度を維持し続ける西部林道、近年密度が高まっている愛子岳山麓=小瀬田林道、採食場所として夜間に多数が集まる牧場)を提案し、下見をしました。そうやって1日目が終わった段階では、参加者があまりに静かで講師・チューターには「果たして最後まで続くだろうか?」という大きな不安がありました。
 2-3日目は、昼間は植生観察、夜はカウント調査を行いましたが、そのうちにシカだけでなく、”植物がシカから受ける影響も直接測りたい”という積極的な意見が生まれ、4-5日目は苦労しながらも、自分たちで考案した調査(林床草本の種類・サイズ・株密度などを比較する)を昼間に実施し、夜はシカのカウント調査を行うという、とてもハードなスケジュールをこなしてゆきました。
 5日目の夜から6日目にかけては、まとめをする中で、シカ調査と植生調査のデザイン(設計)を完成させるために補足調査を行い、見事に当初の計画通りにデータ(データセット)を揃えることができました。この時のみなさんの頑張り、特に”比較するためにはもう一回調査しないと意味がない”という意地は、大げさに言えばみなさんが科学者としての第一歩を踏み出したような気がして、とても嬉しく感じました。
 最後のまとめと発表の準備はとても苦戦しましたが、発表では、変に格好をつけず、自分たちのスタイルで楽しくやろうと開き直った姿が頼もしくさえありました(ほめ過ぎか?)。また、”嗜好植物が消失して不嗜好植物が採食されている西部”と”まだ嗜好植物が採食されている小瀬田”の違いを示すことができ、しかも今後「シカと植生の関係」をモニタリング(継続調査)する上で、応用できるかもしれない簡便な方法を提示することにもなりました。もちろん、種別の調査を割愛してしまったこと、シカ調査の回数やコドラート数が不十分なことなど、反省点もあります。しかし、自分たちで現状を見て、それから調査法を考え、自分たちなりにまとめることができたことには、自信を持ってもらいたいと思います。
 シカと植生保全の問題は、シカを保護すべきか駆除すべきかという単純な二者択一の議論になりがちです。しかし、実際には屋久島という一つの島の中でも場所により様子が異なり、またそこには生活する人々がいて、シカや植物とさまざまな関わりを持っています。今回は、シカ班8人中の3人が屋久島在住(または出身)だったこともあり、島の各所を回りながら、多様な意見交換ができたことも収穫の一つでした。また、最初は迷っていた”サプライズ(ヤクシカの胃の観察)”には、シカ班だけでなく多くのみなさんの参加を得て、観察しすぎて(いじりすぎて)食べられない状態になってしまうという予想外のことまでありました。また、講座終了後に行ったシカ調査にも、飛び入りで参加してくれた人たちもいました。このようなチャンスや講座の中で、みなさんが見せてくれた積極性やチャレンジ精神は、今回の思い出とともにきっとみなさんの宝物になることでしょう。最後に、これらの活動を支援していただいた、役場や猟友会など地元屋久島の方々に御礼申し上げます。

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このページの問い合わせ先:京都大学野生動物研究センター 杉浦秀樹