京都大学野生動物研究センター屋久島フィールドワーク講座 >第8回・2006年の活動−サル班−感想文

第8回・2006年の活動

サル班 − 感想文

受講者の感想

小沢友理子
 屋久島、楽しかった。この一言に尽きる。世界遺産屋久島でフィールドワーク講座に参加できたことはとても貴重な体験となったと思う。
 正直最初の頃は、いきなり初対面の人たちとの共同生活、またサルの行動に合わせ早朝からフィールドに出発しなければならないため、普段8時間9時間と寝ている私がいきなりいつもの半分の睡眠時間となることを余儀なくされたことなどで、軽い気持ちでフィールドワーク講座に応募してしまったことを後悔していた。それが次第にしんどいから楽しいに私の気持ちは変化していき、最終日屋久島を離れるのがとても惜しくなっていたのだった。
 私たちサル班の調査内容は早朝から昼過ぎまでサルの群れまたはシカを追跡し、採食行動その他からサルとシカの相互関係を探るというものだった。野生のサル、シカのこと、時には険しい山道を追って登って行かなければならなかったりと体力的に厳しいこともあったが、何より愛嬌あるサルの姿に終日心を奪われっぱなしだった。ずっと観察していると多少ながらサルの個体ごとの特徴がつかめるようになっていき、今までの私にはすべて一様な「サル」としてしか捉えられていなかったものが実はこんなに個体ごとの性格を持ち合わせているんだ、例えば母親ザルでも常に子供のことを気にかけているようなものもいれば、食事に夢中で放置された子ザルが泣き始めても長い間戻ってこないようなやつもいたりするのだな、などと見ていてとても面白かった。それにしてもサルの群れの個体関係って人間社会にも通じることが多いもんだな、などとついつい考えてみたりもしてそれも楽しかった。またサルがシカの上にまたがりシラミとりをするという貴重なシーンを見る事ができたというのもなんとも嬉しい一コマであった。普段は主に植物の勉強ばかりで動物のことはまるでわからないという状況での参加であったが、動物は面白い!と刺激されたフィールドワークであった。調査で数日山を歩き続け、その後オフで紀元杉を見に行ったときなど舗装された山道に物足りなさを感じるほどだった事には驚いた。それほどこのフィールドワーク講座は屋久島の自然を直に感じられるものだったという事で、私は単に観光で屋久島を訪れるだけでは決してできない体験をたくさんさせて頂けたのだ。
   サル班講師の中川先生、松原先生、他講師の皆様、上屋久町の方々、ボランティアスタッフの村上さんの多大な労力のおかげでこのような経験ができたのであり、感謝の気持ちを伝えたいと思います。受講生の皆様にもお世話になりました。どうもありがとうございました。
 屋久島で得た事を屋久島の思い出のみで終わらせず、ここ京都にあるたくさんの自然にももっと目を向けて生活して行きたいと思います。

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増山遥
 この講座に応募するに当たって一番心配だった事は体力面です。元来あまり体力がないにもかかわらず思いついたら即行動に移してしまう私は屋久島に行く事が決まってから急に焦り始めました。こんなことなら高校時代にやっていた剣道を続けておけばよかった・・・などと後悔していたのですが、実際にフィールドで待っていたのは、これがまた想像以上にキツいヤクシマザルとヤクシカの追跡でした。
朝五時の起床や、GPSが使えなかったり、サルが三時間も見つからなかったり、データが足りなかったり、ハチに怯えたりと大変な事だらけでしたが、ロデオが見れたり、1号橋でお昼寝したり、シロクマで乾杯したり、とそれ以上に楽しい事がたくさんありました。 そして、これらの思い出や、先生が教えてくれたサルが食べていた植物の名前、シカの見分け方(結局サルは4頭くらいしか見分けられませんでした)などが屋久島から帰ってきた今も鮮明に思いだせるのは、肌で、目で、耳で、鼻で、舌で(とにかくいろいろ食べてみました!)五感全てで感じていたからだと思います。また、自分が疑問に思ったことをすぐに先生方に教えてもらえるという恵まれた環境で、知識を詰め込む事ができたのは本当に貴重な体験でした。そして、もう一つ勉強になったのはデータの整理、分析とプレゼンの方法です。朝三時まで、すでにうつろな頭でシカ・サル追従、待ち伏せ説について討論したことも終わってみれば良い思い出です。そのおかげか短期間の少ないデータでしたが一つの形を作る事ができました。
今私の部屋には、サル追跡中に拾った鳥の巣が飾ってあります。そしてフィールドノートをポケットに探す習慣が抜けません。あっという間の夢のような一週間でしたが本当に内容が濃く、充実していました。人生19年間でこんなに充実していて、自分が好きな事だけを考えられる時間は私にはなかったと思います。そして、この一週間は自分のしたいことを見直すとてもいい機会でした。今はまだ模索中なのですが、やっぱり自分が好きな事を職業にしたい!妥協はしたくない!そう考えられるようになりました。とりあえず、この冬は剥製をつくる修行にでたいと思います。この講座に参加したことは確実にこの夏で(人生でも)最良の選択でした。自分の信念と夢に自信を持たせてくれた上屋久町役場の方々、個性的な受講生のみんな、それ以上に個性的な尊敬する講師の先生方、屋久島、E群、ダニー、この講座に関わる全ての方々と雄大な自然に感謝しています。本当にありがとうございました。

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住栄貴恵
 私たちサル班は、朝5時に起きて6時過ぎに調査に出発していました。調査地の西部林道に着いたらサル(E群)とシカ(ダニーちゃん)を探して、見つかり次第追跡調査を開始しました。すぐに見つかる日もあれば、なかなか見つからなくて斜面を上がったり下がったりして何時間も探し回る日もありました。野生動物の調査の大変さを感じました。
 調査では、サル追跡班とシカ追跡班に分かれ、それぞれを追跡し、採食樹種や頭数を記録したり、GPSを用いて位置データを記録したりしていました。サルのグルーミングや、シカの反芻を待つ間を除いて、およそ半日ほど動物を追いかけるうちに座り込みたくなる時もあったけれど、良いデータをとりたいという気持ちで頑張っていました。
 調査中、特に驚いた場面は、サルがシカに乗るロデオと、シカによるサル糞の採食、シカによるサルが来るのを予測したかのような待ち伏せ行動でした。講座に来る前に、サルとシカにどんな種間関係があるのだろう、と考えていた時には思いもつかないような関係がみえてきたのが、とても面白かったです。
 以上のような調査から得られたデータを現地で整理し、班で発表するまでにもっていきました。データをまとめる作業で感じたのは、データはできるだけ詳しくとっておくと良いということです。事あるごとに時刻や場所、採食樹種などを細かく書き留めておくことで、後で他の人と合わせる時に役立つし、違った発見にもつながります。
 また、データからいえることを自分でよく考えて理解し、その考えを班のメンバーとよく話し合うことが大切です。データ整理の中で、私は自分が感じたことや学んだことをうまく人に伝えるのが苦手だと感じたので、これからその力を身に付けていきたいと思いました。新潟に帰ってからは、家族や友達など周りの人に、屋久島での経験や学んだことをうまく伝えられるようにと心がけています。
 調査で山の中に入り、自分で見たこと聞いたことは、本やテレビ等から得る知識よりも、強く自分の中に残っています。短い間でしたが、サルとシカを追跡して、野生動物について現地で学んだことで、興味の引き出しが大きくなったと思います。今は動物や植物の研究をもっとやってみたいと思っています。
 この講座では本当に色々な経験ができたのですが、中でも一番良かったのは、たくさんの人と出会えたことだと思います。
 サル班のメンバーは、一緒に行動していて楽しく、自分では気づかなかった新しい発見を私に教えてくれました。屋久島での調査や発表準備で、ともに苦しみや楽しみを分かち合った、大切な仲間です。みんな、ありがとう。
 様々な調査・解析の方法や、山歩きの楽しみ、サルやシカの生態について教えて下さった、中川先生・松原先生の両先生方、本当にありがとうございました。調査以外でも、中川先生と鳥を見たことや、松原先生と星を見たこと(初めて天の川を見られて嬉しかった)、松原先生を真似してクーコールをして遊んだことが面白かったです。
 また、フィールドワーク講座の受講生の皆さん、先生方、役場の皆さん、この講座にかかわられた全ての方々に感謝しています。  この経験を糧に、もっと成長した自分になって、またいつか屋久島に来たいと思います。

下中麻奈美
 「楽しかった!!」こんな簡単な言葉に集約して良いのか迷いましたが、この島で過ごした日々を思えば一番的確に私の心情を表しています。そして、これは私にとってとても重みのある、いろんな事が詰まった言葉です。
 朝5時に起きて山の中をサルやシカを追って駆け回ったり、沢の近くやサルの近くでお昼寝したり、サルの食べる木の実をかじってみたり、(私は)サルに威嚇されたり(笑)・・・。宿舎に帰ったら仲間とともに生活して、その日あった事について真剣に議論したり。夜には空いっぱいの星空を眺める。
 とても新鮮で充実していました。この感想文には書ききれない程の多くの素敵な体験をしました(こうして文書を考えながらその日々を思い出すだけで胸がどきどきしてきます)。でもしばらくそんな日々を過ごすうちに、気づいたんです。私にとって普段の生活よりも屋久島でのこういった生活の方がよりリアルでナチュラルな生活だと感じていることに。
 私はここ屋久島に将来の進路についてのヒントを得ることを最大の目的としてやってきました。私の通う学部は農学部で専攻は畜産なので野生動物は対象外です。けれど昔から野生動物に興味があった私はいまだに野生動物の研究者という夢を捨てきれずにいました。しかし、偶然にもこのFWの張り紙を発見して、幸運にもこの一週間を過ごせたことで私はもう一度夢に向かう決心ができました。本当に感謝でいっぱいです。
 そしてFWを体験したからこそ、いろんな事に触れて、それを自分で考え、発言し、人と議論する事の楽しさを屋久島では教わりました。同年代の人とこんなに議論したことも、まして先生方のような専門家の方々といろんな事を意見しあったりできたことはとても有意義な時間でした。
 最後に講師の先生方、ボランティアの村山さん、上屋久町役場の方々、受講生の皆さん、屋久島でお世話になった人々、そして屋久島の大自然、本当にありがとうございました。  また、屋久島にいって半山のおサルさんたちや、ヤクシカたちに会いに行こうと思います。

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このページの問い合わせ先:京都大学野生動物研究センター 杉浦秀樹