京都大学野生動物研究センター  > 屋久島フィールドワーク講座  > 第6回・2004年の活動−植物班−感想 最終更新日:2004年12月17日

第6回・2004年の活動

植物班の活動 - 感想

受講生の感想文

飯田佳子

 世界遺産の屋久島に行きたいという思いをもちはじめたのはいつだったか。何かきっかけを探していたのだと思う。ただの観光ではなく、もっと屋久島の自然を感じる事のできる何かを。そんな私にとって、今回の屋久島フィールドワーク講座は、屋久島に行く最高の機会でした。五つの班の中から「植物班」を選んだ理由は、単純に面白そうだったから。シカやサルにも興味があったけれど、「植物班」の「屋久島で小型化した植物」というテーマに惹かれて、結局、植物班に応募。結果を受け取った時はうれしくてうれしくて、友達に電話しちゃいました。今まで授業でフィールドにでるということはありましたが、一つのテーマをもって、植物を調べるという事は今回が初めてでした。植物個体の採取、各器官の大きさの比較、細胞の比較、乾重量比、そして採取した標高、これらを組み合わせる事で小型化のメカニズムをわずかですが知れたような気がする。目当ての植物を採取するのが難しかったり、台風の中、山に登ったり、グラフが思うようにできなかったり、夜遅くまでの作業で眠かったり、発表に間に合わせるためにあせったりといろいろ大変でしたが、一つ一つのことが新鮮で楽しかったです。大変なことでも先生方と同じ班の仲間とやると楽しく感じられました。それは、班のみんなが、植物が好きで、やる気が人一倍あったからだと思う。あと、みんな人が良かったから。
一週間という短い期間でしたが学んだものは大きかったと思います。それは、植物の調査においてはもちろん、多くの人と触れ合うことで学べたのだと思う。こういう機会を与えてくださった講師の方、上屋久町の職員の方、そしてフィールドワーク講座に参加したすべての人に感謝したいです。

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小島正行

 僕は感想文というものを書くのが苦手である。書いてしまうとそれだけになってしまいそうな気がして嫌だし、屋久島での体験は容易に文章に書き起こせるような性質のものではないと思っている。とは言え、何か書かなくてはならないのでがんばって書いてみることにする。感想を述べる前に、少しだけ自己紹介をしておきたい。僕は現在工学部精密機械工学科の4年生である。自分の専攻と植物は無関係であり、植物はあくまで趣味であると自負している。そんな僕が植物に興味を持ったのは高校生のときである。植物の多様な姿に気づき、植物の種に強く関心を抱いて独学で勉強するようになった。大学の生物学科専用の掲示板にひっそりと貼られていたこの講座の案内を見て興味を持ち、応募したらなぜか合格してしまった。こんな僕でも合格するのだから、少しでも興味を持った人は是非応募してみるといい。
 屋久島での一週間は夢のようだった。面白くて、楽しくて、不思議な冒険だった。文字通りに日常の生活を離れて、屋久島での生活にどっぷりと浸る経験はとても新鮮だった。空港に降りたってみて、不思議な感じがした。東京とは空気が違う。空気が澄んでいるのである。どれくらい澄んでいるかは夜になってみると一層わかる。天の川が見えるのである。海も澄んでいた。僕は初日の午後、一湊の海水浴場で泳いでいたのだが、海で泳いでこんなに気持ちよかったのは初めてである。フィールドワークで行った先々でも壮大な自然には圧倒されっぱなしだった。緑は深く、雨は激しく降り、美しい虹も見えた。神々しいほどだった。
 僕は自分の見たことのない植物との出会いを追い求めているわけで、普段見慣れている植物が屋久島の高地で矮小化しているというので、それを見てみたかった。それが屋久島に行きたいと思った最初にきっかけである。今まで見たことのなかった植物との出会いにはそれぞれ物語があると僕は思っている。台風の豪雨の中、会いに行ったヤクシマシャクナゲやヒメシシガシラ、ヒメコナスビとの出会いは格別だった。また新しい植物との出会いの物語が僕の中に刻まれた。課題作文「世界遺産の屋久島に期待すること」の中で僕は期待することとして二つの出会いを挙げた。屋久島に期待する第一の出会いは植物との出会い。正直言うと屋久島の植物たちは奥が深すぎて、僕ごときが理解の及ぶものではなかった。だからもっと力をつけて、知識を蓄えて、また行ってみたいと思った。処理能力を遙かに超えるほどのたくさんの植物たちと出会い、期待する第一の出会いは達成された。
 屋久島での一週間はとにかく議論をする機会が多かった。「今日の○○班」や「今日の講師」では毎日熱い議論が交わされ、講座全体の雰囲気が高められていった。仲間たちとの何気ない雑談にさえ深い意味が込められていて、頭はフル回転だった。特に2日目の深夜に話したことが忘れられない。植物のこと、世界のこと、哲学のこと、その他たくさんのことを話した。ある言葉がとても印象的だった。不勉強で、そういう言葉が学術的にあるのかどうかはわからないが、僕も植物のある様子を表現するときにその言葉をしばしば使う。僕が使うときには自分独自の定義で使っているので互いに定義は異なるが、まさかその言葉を使う人がいるとは思ってもみなかった。本当に不思議だ。屋久島では魅力的な人にたくさん出会えた。屋久島に期待する第二の出会いは人との出会い。これも僕の期待以上だった。
 「屋久島=縄文杉」と考えている人は意外と多い。僕は縄文杉を見てはいないが、はっきり言って僕にとってそれは重要な問題ではない。見たければまた行けばよい。大切なのは屋久島フィールドワーク講座に応募して合格し、あのメンバーで一週間時間を共有し、共に学び合ったことである。全国から学生と講師が集まり、屋久島の自然や文化を通じて学ぶという特殊なシチュエーションが貴重であり、重要である。そういう機会は今後もうないかもしれない(特に僕の場合は)。目に見えた成果ばかりが要求され、また、要求すること自体も重要であるかのごとく思われている昨今、屋久島での体験の中からすぐに目に見えた「成果」を導き出すことはあまりできないが、今後の人生を生きていく中で、屋久島で学び取ったことが何らかの形で糧となることは確かであると信じている。
 高校時代に植物に目覚めて独学で勉強を始め、大学では関連の講義や実習を履修し、とうとう屋久島まで来てしまった。この先、自分の目の前には一体どんな世界が広がっているのだろう。それは誰にもわからない。これは僕自身が切り開いていく僕自身の物語。だから楽しいし、やめられない。僕は屋久島で過ごした一週間を一生忘れない。

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常木静河

 とても、密度の濃い一週間でした。台風の中、下山していく人々に見送られながらヒメコナスビを採取しに行ったこと、班の友達とデータ整理を夜までしていたこと、島を一周しても2個体しか採取できず、疲れを癒しに温泉につかりに行ったこと、みんなで星をみたこと、発表の朝、猿ステーションで標本の測定をしたこと、その後でヤクデンで買い物をしたこと(屋久島に進出している大手?スーパー 営業時間 10:00から10:00 生活用品(軍手とかも)やお菓子、三岳などを販売している)、発表直前に仮説がひっくり返ったこと。
 本当にいろいろなことがあって、その一つ一つに学ぶべきことが多かった。
最も強く感じたのはチームで研究をする難しさと面白さ。今回、植物班は、4人で出身も園芸学部、工学部、農学部、生物学部といろいろでキャラクターもいろいろだった。みんな、それぞれのフィールドからのアイディアを持っていて、私は圧倒された。
 疲れの中での作業ではコミュニケーションの大切さを実感した。無言になると、みんながドコを向いているのかわからなくなる。一つのチームで一つの課題に取り組む時は、お互いが何を考えているのか確認しあうことが大切なのだと思った。コミュニケーションをしていくには、やっぱり、相手のことを考えることが基盤になってくるのだとおもう。そしてこれは日常生活の中から生まれてくることなのだと思う。疲れるととても難しいことだが、私は皆さんに助けられました。
 お風呂で、シャンプーやボディソープを快く貸してくれたこと、夜に話したこと、散歩したこと、作業中に意気投合したこと、ご飯を一緒に食べたこと、財布を落としたときに心配してくれた?こと、場の雰囲気、発表を支えてくださった先生たち、一つ一つのことがつながりを持って今回の実習を形作っていたと思います。
 なんだか、文構造が奇天烈ですが、本当にたのしかったです。今回の実習に参加できたことは私にとって幸せなことでした。ありがとうございました。

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中島淑子

 私は矮小植物に関して全く何の知識もないまま屋久島にきました。なので、実際にコナスビとヒメコナスビ、シシガシラとヒメシシガシラ、ヤクシマシャクナゲを採取して比較したとき、両者の大きさの差が考えていた以上に違うことに本当に驚き、植物の生息環境への「適応」のすごさを改めて感じました。「適応」という言葉は授業で習っていて、今まで何気なく使っていたのですが、今回実際に植物の適応の一片を目の当たりにしてかなりの衝撃を受け、今までその言葉の意味を十分知らずに使っていた自分が恥ずかしくなりました。そして、フィールドワークの重要性を再認識しました。後半の、測定やデータ整理の際には、全部のコナスビの全長を測り終えた後にみんなの測定基準がバラバラだったことが分かってすべてやり直したりすることもあったりして、グループで研究する際のコミュニケーションをとることの重要性とその難しさを強く感じました。
 屋久島を訪れる前に、私は屋久島のことを、世界遺産を理由にそこを人々の侵入から保護するのではなく、逆に開放していることから、自然保護よりも観光が主目的の島なんだな…と考えていました。でも実際に訪れて屋久島の自然に触れたり、屋久島の現状や様々な問題の解決に向けて努力されている方々の姿勢を見たりして、自分の考えが間違っていることに気づかされました。観光と町おこしの問題は今まで対岸の火事だったのですが、今回色々な人の意見や現状を聞いて、本当に考えさせられました。今回、屋久島フィールドワーク講座を通して様々な体験をすることができたし、いろいろなことを学びました。私にとっては、普通に観光で訪れるのとは比べ物にならないほど有意義な一週間になりました。ここでの学んだことを忘れずに、これからも生かしていきたいと思います。
 最後に、分からない所を根気良く教えてくださった村上先生、篠原さん、本当にありがとうございました。

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