京都大学野生動物研究センター屋久島フィールドワーク講座 > 第6回・2004年の活動−博物館班−感想 最終更新日:2004年12月28日

第6回・2004年の活動

博物館班 - 感想文

受講生の感想文


柿沼 愛子
 充実した一週間だった。思い返すたびにその言葉しか出てこない。いろいろな物事にふれて、いろいろな経験をした。勿論、わたしはこれまで屋久島に行ったことない。今回のフィールドワークで初めて屋久島に行ったわけだが、それまでわたしが抱いていた屋久島のイメージといったら「世界遺産」、「自然」、「屋久杉」?である。この講座が始まるまで屋久島に関する知識は皆無であった。卑下しているわけでなく心底「何故、わたしが参加しているのだ?」と思っていたものだ。このコースは他のコースと違い、目的が漠然としている。鹿コースはシカを調べる、植物コースは矮小植物を調べて、猿コースはサルを調べるわけだが、一体このコースは具体的に何をするのか、講座が始まるまではコース名の如く「インターネット上でうごくオープンフィールド博物館」を作り上げるものだと思っていたが、それだって実際に行くまではどのようなフィールドワークをするのか不明であった。講座が始まって私たちのコースの根底に「屋久島オープンフィールド博物館構想」というものがあることを知ったとき、なんとなく方向性がわかったといった感じであった。何をしたら良いのかわからず苦労した。苦労したかいあって、すばらしい出来のプレゼンだったと思う。山野で遊ぶことも久しぶりに童心に返った気分であった。川で遊んだのは、海で生物探しをしたのはいったい何年振りであったか、本当に楽しかった。
 また、同じ世代の大学生が学科を越えて集まっていたことで価値観もさまざまに多種多様の意見を聞くことができたことは素晴らしい経験になったと思う。それは屋久島についてだけではなく、大学での活動や卒論、将来の進む方向性などについて、色々な個人の考えを幅広く、交換できたことは就職活動を控えたこの時期、私にとって大変に有益であった。同様に、学生同士ではなく先生方をはじめこのコースでは年代も職業もさまざまな人にお話を伺ったことも大変参考になった。何より、この講座の時程集中して物事に取り組んだことはなかった。限られて期間でプロジェクトを完成させるという、良い勉強にもなった。この屋久島の講座では本当によく学び、よく遊び、多くの友人ができた。この一週間は生涯の中でかけがえのない時間の一つとなった。この経験はわたしの一生の財産である。
 そして、最後になりますが、先生方、役場の皆様、お話を伺うために時間を割いてくださった屋久島の皆様、上勢頭さん、そしてこの講座に携わった全ての方に篤く御礼申し上げます。ありがとうございました。

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太田 郁実
 今回この講座に参加したことで大変貴重な一週間を過ごすことができました。私は、"インターネット上で動くウェブ博物館"というものに興味を持ち今回の講座に参加しました。講座が始まるまで、私は島外向け(屋久島を世界にアピールする)のページを実際に作ると思っていたのですが、実際はそれとは違って、島の人たちが屋久島のことを再確認し、文化、自然を守っていくために知識を得るという目的で設けようとしているページでした。もうすでに住んできた人たちのためのページを作るのだからもっと簡単だろうと思いましたが、考え出してみると意外と大変な作業であることを実感しました。
 最初に博物館に見学に行ったわけですが、今まであそこまでじっくり博物館をみたことはあまりなかったなあと見学しながら思いました。じっくり見てみると、感心するところや面白い部分、反対にいい加減な部分、間違っている部分があることを感じました。博物館や資料館などに展示されているものは全て正しいことであると思いがちですが、そうとは限らないということを実感しました。また、博物館ごと個性はあるのですが、目的がよくわからないところもあり、ある意味でおもしろいと思いました。
 次に屋久島で生活している方々にお話を伺ったわけですが、自分の思い描いていたものと実際に屋久島で生活している方々の考えにはギャップがありました。縄文杉の存在などがその一つです。私は屋久島に住む人々はみんな縄文杉を見たことがあると思っていましたが、そうでもないようです。ただ、自分に置き換えて考えてみると、富士山は近くにあって登りたいとは思っているけれど、きっかけがなくて登らないというのと同じではないかと思いました。近くにあるといつでもそこにあるのが当たり前になってしまってきっかけがないとそこに向かえないと私は思っているので、それに近いものがあったのかとも思いました。そういった意味で共感できるところがあった気がします。
 毎日の夜の発表で質問されるたびに答えはするが自分たちもよく理解できず、毎日確認していくのがやっとだった気がします。またそれは同時にオープンフィールド博物館が本当に必要なのかどうかや、ウェブ上であることのメリットを考え直すことにもつながっていたように感じます。私たちの結論としては、ウェブ上だけでなく配布物なども利用していったほうが年齢の差を埋められるのではないか、また人と人の関わりをもっと強くできるのではないのかということでした。こういった考え方を持てたこと、また根本を考えるきっかけになったのはやはり、屋久島に住む人々の声だった気がします。
 本当に多くの人と接し、多くのことを考える一週間でした。毎日議論をしたり、悩んだり、頭をフルに動かして考えることが多く、議論しあっているうちに何を話していたかわからなくなったりしたこともありますが、これだけ頭を動かして考える機会もそう沢山はなかったので、とてもいい経験になりました。私たちが今回考え、提案したことはまだ本当に初めの一歩にすぎませんが、この講座を毎年続ける中で少しずつでも屋久島を理解し、本当に必要とされるオープンフィールド博物館が形成されていけばうれしいです。そのためにできることは協力したいと思っています。
 この講座を受講したことで多くの素敵な仲間にめぐり合えたし、多くのことを学ばせていただいた気がします。この機会を作っていただいた先生方や屋久島の皆さんに感謝します。ありがとうございました。

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島田 慎吾
 フィールドワーク講座では自分の屋久島に対する無知をつくづく思い知らされることとなった。
 TVや新聞などのメディアから得た屋久島に対する情報はあまりにも表面的で希薄なものなのだと思う。
屋久島に来て、参加した講座で先生方の案内で地元のさまざまな博物館を見学し、地元の方々のさまざまな意見を伺って行くにつれて、自分の無知を痛いほどに感じ、それでも同時におぼろげながらも島のもつ本当の姿を少しでも知ることができたことは、非常に有意義な体験となったと思う。
 特に、世界遺産に登録されるに値する貴重な自然を、歴史的・文化的に守ってこられた島のみなさんの生活や考え方には非常に大きな価値があると思う。それと同時に、現在、島の自然賞賛一辺倒な考え方が広まりつつあり、島の生活・文化の価値というものがあまりに軽視されているのではないかとも思った。
 下手な観光客よりも観光スポットを見て回ることはできたし、いろいろな人がいろいろな思いをもって島に住んでいるということも知ることができた。さらには、世界自然遺産に登録されるということがどのような意味を持っているのか、という大きな問題に正面きって挑むこともできた。
 何よりも、共通の目的を持ち、やる気と実行力に満ちた仲間と、個性的でユニークな先生方にかこまれて一緒に研究をおこなうことができたことがこのフィールドワーク講座の一番のメリットだったと思う。普段の大学生活ではきっと味わえないに違いない。

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高橋 晶
 今回参加するきっかけとなったのは、大学構内に貼られた一枚のポスターだった。夏休みを目前に控えており、屋久島に対する世間の注目度、観光情報は急激に高まっていた。テレビや雑誌等で取り上げられているのを見ながら、世界遺産の島とは一体どんなものであろうかと、私自身の屋久島への関心も高まっていた。そんな中でのポスターとの出会いは、応募への決意が即座に決まるものであった。また、大学生活も3年目を迎え、就職への不安も高まっていたため、何か特別な体験を自身で作り上げてみたい。自然や生き物と触れ合うことが本当に自分にとって一番の道なのかどうか確かめてみたい、そんな思いもあった。
 そんなきっかけから参加することが出来た今回の屋久島での活動。"インターネット上につくるオープンフィールド博物館"という言葉に惹かれ、このグループへの参加となった。始まるまでは、本当にインターネット上にバーチャル博物館を構想し、設立していくのだと思っていたが、それを実行するまでには多くの課題が残されていることを初日に知る。その課題は私たちの活動が終わった今でも、次のグループや、今後の屋久島へと受け継がれている。では、私たちが活動したことへの意義はあるのだろうかという疑問がわく。もちろん、何かを形にして残したわけではないが、インターネット上に博物館を構想する、その実行への道は着実に一歩進んだと考えている。つまり、私たちは今屋久島が抱えている現状や、注目すべき課題を整理できたのではないかと思う。
 今回の活動で、何よりも重要であったのは、屋久島に実際に住む人々の声を聞き、本当に屋久島の人々がそのような博物館を望んでいるのかどうかということを聞くことが出来たということだ。それは、このグループの活動だけではなく、屋久島での一週間がどれほど密度の濃い毎日であったかと思い返せるほど、自身にとってもかけがえのない活動であった。所詮私たちはここに住まわないよそ者かもしれないが、観光で味わうものとはまた違う、本当にその島を少しでも体感できたと思う。観光ガイドをされている方、役場の方、研究者の方と幅広い層の方々にご協力を頂き、多くの本音を聞くことが出来た。また、島に現在ある施設、博物館等を比較しながら見て回ることも出来た。他のグループに比べ、はるかに目標も目的も、その行動が示す意味もあいまいなものではあったが、それは何かを形にしていく為に必要な、欠かせないことだと思う。この活動が、"島民のための博物館構想"という、見落としてはならないポイントに気づかせてくれた。これらの経験はこれから生きていくうえで、全てのことに共通する部分ではないだろうか。私はこの島で、すべてに共通する基礎を知ることが出来たように思う。それは、人々とのふれあい。自然と人との共存。しかしそれと同時に進行する町の発展。人との接し方、物事のとらえかたなど数え切れないほどである。つまり、屋久島のことは屋久島だけのことではないのである。日本にも、世界にも共通して考えなくてはならないこと、同じ人として考えることが溢れている島であった。
 この島にも二通りの人々がいた。島おこしをしようとする方、これまでのように自然にあるがままに生きようと思う方々。今回の活動は、提案をすること、それを実際に生活の一部にすることとの間でいつも揺れ動いていた。観光客の視点ではなく生活者の視点にたどり着くまでには、もっと時間が必要なのだと思う。しかし、内側の視点だけではなく、外側からの視点を通して改めてみつめる内側は違うということを知ってほしいと考える。そのゴールがインターネット上の博物館ではないだろうか。ただの外からだけの意見ではなく、内側を体感することで考えられた外側の意見を知ってほしいとも考える。今回、屋久島での活動で残してきた課題は、私自身の課題にもなった。文化という、見えない大きな壁ではあるけれど、屋久島で改めて、自身の生活を、住む町をもう一度振り返ることが出来るきっかけがあったと思う。今後屋久島の雄大な自然を見に訪れる人がいるならば、自然だけではなく、その島に住む人々、その島での時間、屋久島をまるごと見て、聞いて、体感してほしいと思う。一度だけではまだ足りないと思い、また訪れることが出来たなら、何度でも行きたいと思う。ご協力をしてくださった皆様、ご指導いただいた先生方、本当にありがとうございました。

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このページの問い合わせ先:京都大学野生動物研究センター 杉浦秀樹