京都大学野生動物研究センター屋久島フィールドワーク講座>第7回・2005年の活動−ヤモリ班−報告書

第7回・2005年の活動

ヤモリ班 − 感想文

参加者の感想文

荒田琢己 鹿児島県立屋久島高校環境科

 そもそも自分は環境に対する興味や意識と、それらの知識をデスクワークだけでは補えないとの見解から、この屋久島フィールドワーク講座に参加した所存です。その中でも敢えてヤモリの調査という、一風変わったコースを希望したのは、参加した動機と同じく知識欲であった。自分は今まで屋久島で──というよりこれまでの人生において、1、2回程度しかヤモリを見かけることが無く、さらに爬虫類や両生類に対する知識も、精々一般人程度しかありませんでした。例えばヤモリとイモリの違いは何か、といわれても両生類と爬虫類とで違う、としか挙げることが出来なかっただろうと思われます。しかし新たな、そしてあまり役に立たない情報を記憶することに日々奔走する高校生活から長期休暇で開放され、新たな分野に食指を伸ばそうと思ってこの、ヤモリコースに参加したのです。
自分の選択は、終わった後結果を省みるとなるほど、自分は全面的に肯定とはいえなくとも、最低に見積もっても『とても良かった』という印を押せます。昼間は車で走り回り、夜には壁に張り付き歩き回る、まさにヤモリ然とした活動は、いつもは次の日を迎える前には布団を被っている身からすれば中々に疲労も取れず苦労したけれども、普段行えない活動──夜間採集、解剖等を出来たことは良かった。これ以外の表現はよく思いつかないが、楽しかったとも嬉しかったとも違い、ただ良かったと思います。これまでの義務教育9年間と高等学校1年間プラス半分の中では──元から無かったのか削られたのかは判断できませんが──無かったので、初めての体験をしました。
これだけの事から言っても今回参加したことに意義を見出すことが出来るし、今までほとんど見つけることが出来なかったヤモリが屋久島内の1週間の探索で90匹弱も見つけることが出来たのも感動しました。他の班の発表も大変実りがある素晴らしいもので、この屋久島フィールドワーク講座に参加したということに対しては、最良の選択をした、と自分は思っています。そしてこれだけ成功した企画の関係者の方々に対して、最大限の敬意を示してこの講座で感じたこととしたいと思います。

高木俊 東京大学農学部フィールド科学専修3年

今回、屋久島フィールドワーク講座を受講して様々な経験をすることができた。長期、夜間、爬虫類を対象にしているなど、普段経験できない調査ができたこともあるが、何よりも実際に研究につながる調査を体験することができた。いままで調査を行うことはあっても、たいていの場合調査から得られる知見はそれほど目新しいものではなかった。しかし今回の調査は、今まで知られていなかった事実が明らかになるという、研究を行ううえで最も『おいしい』部分を体験させてもらったのではないだろうか。私は調査そのものに対し興味があり今回の受講を希望したが、やはり調査そのものよりもそこから得られる結果こそが研究の面白さであると強く感じた。今回研究の一部を体験しその醍醐味を味わうことができたのは、今後自分で研究を進めていく上で貴重な経験となった。
屋久島ではヤクヤモリとミナミヤモリの交雑が起きていると考えられ、2種の分布が接触しているその現場で調査をすることができた。この2種の分布が今後どのように変化していくのか、1種に置き換わるのか、交雑し雑種集団が形成されていくのかなど、調べてみたい、知りたいことがまだまだたくさん残っている。もう一度あの時のメンバーで再調査できたらすばらしいのだが、そのような機会がないのは非常に残念である。フィールドワーク講座に対して不満な点を挙げるとすればそれだけである。残りは十分に満足のできる体験をすることができた。
最後に、本講座を開講し貴重な体験をさせて下さいました先生方、上屋久町環境政策課の皆さん、夜遅くに帰ってきてご迷惑をおかけしました他の受講者の皆さんに感謝します。

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夏池真史 京都大学農学部1年

 自分が屋久島フィールドワーク講座に参加申し込みをしたのは、安く屋久島に行け、あわよくば観光できるのではないか、という真に不純な動機からだった。それが、屋久島での生活を通して、今、一番に思うのは、屋久島でフィールドワークをすることができて本当に良かったということである。大学に入ったばかりの自分には難しいことは良くわからないので書けないけれど、フィールドワークの面白さ、大切さだけでも自分なりに伝えられたらと思い、この感想文を書こうと思う。
 さて、今回自分が参加した講座のテーマは「ヤクヤモリとミナミヤモリの分布接触域の調査」である。ようするに調査することは、島の津々浦々を回り、どこにヤクヤモリがいて、どこにミナミヤモリがいて、それらが互いに交雑をしてはいまいか、といったことである。ヤモリは夜行性で昼間は岩の割れ目や木のうろ、壁の隙間などに隠れていて夜にそこから出てきて活動するので、昼にヤモリのいそうな場所を見つけておき夜にヤモリを捕まえに行くのである。昼間はヤモリが見つからなくても夜に行くと、そこはヤモリ天国だったりする。ヤモリはトカゲなどよりも思いのほか顔が精悍で、恐竜みたいでかっこいい。足はフニフニしてとても気持ちいい。最初はこわごわ触っていたが、そのかっこよさ、気持ちよさに気付くと触りたくてたまらなくなる。気付けばすっかりヤモリ好きになっていた。
 そうこうして、島の各地でヤモリを捕まえるうちに徐々にヤクヤモリとミナミヤモリの分布域がおぼろげながら見えてきた。それは、ミナミヤモリはいくつかの集落とその周辺にいる場合が多く、ヤクヤモリは島全体に広く見られるということだ。また一部で二種の交雑固体と見られるヤモリも見つかった。そして、そのような調査結果から、ミナミヤモリが後からなんらかの要因、もしかすると人為的な要因、でほかの場所から島にたどりつき、ヤクヤモリの少ない集落部に定着したのではないかという結論に達したのである。自然の豊かな屋久島でさえ、人間の生活が生物の生活に影響を与えている可能性があることに驚いた。これはもしかしたらヤモリだけの話ではないかもしれない。そして、実は既に人の手によって、屋久島の生物本来の生態が大きく変わっているかもしれない。そのように考えるにつけ、フィールドワークによる実地の調査の大切さを痛感した。
 このように今回の調査によって、ほとんど知られていなかった屋久島でのヤモリの分布がある程度わかり、また、その分布は二種の間である程度偏っていることもわかった。一方で、島の内陸部での分布調査や、詳しい分布接触域の調査は行うことができなかった点はこれからのこの講座で是非明らかにしてもらいたい。そして、是非「ヤモリ大好き」な人が増えることを願って止まない。最後に、フィールドワークを通してヤモリの素晴らしさを教えてくれた疋田、戸田両先生、ヤモリ班のみんな、他の参加者のみなさん、その他大勢のフィールドワーク講座を支えてくださった方々に、このような素晴らしい機会を与えてくださったことを感謝してこの感想文を終わりにしたいと思います。本当にありがとうございました。

橋詰舞衣 高知女子大学環境理学科2年

 今考えると、屋久島での日々は夢のようであった。
 なぜなら自分が高校生の頃から一番やってみたかった大好きな動物のフィールドでの調査ができたからである。
“動物が好き。だからフィールドでの動物の勉強がしたい。”
そう考えて締め切りギリギリまでねばって必死で書き上げた選考書類。それをカバンにつめこみ、屋久島に出発した日のことをなつかしく思う。
 屋久島で出会ったヤモリ班の仲間は、やけにアロハシャツが似合う戸田先生と茶色の帽子がステキな疋田先生、そして、数名の男の子と一人の女の子だった。
 私たちヤモリ班は、調査がほとんど夜だった。食事が届くとすぐにご飯をかきこみ、薄暗くなった頃に出発した。島にあるトイレ、東屋、ガジュマルの木を懐中電灯片手に歩き回った。ヤモリが現れると皆のテンションが高くなる。夜中二時に帰宅し、早朝まで熟睡する。朝は皆の足音で起きる。ご飯を食べ、すぐに昼寝(朝寝かな?)。昼頃目を覚まし、他の班がいない間にヤモリをさばいている。こんな生活だった。 こんな生活したことない。でも、こういう生活がしたかった。
ただ自分の好きなことを後先考えず思いっきりやりたかった。 初めて調査を経験し、ヤモリの様々な姿に出会った。
 口からペロリと舌を出し、自分の眼球を拭くヤモリ。
 手に吸盤のようなウロコをもつヤモリ。
 なぜか捕獲すると必ずウンチをしてしまうヤモリ。
 ピトピトと壁にはい登るヤモリ。
 ガジュマルの木が大好きなヤモリ。
 このような様々なヤモリの姿に夢中になってしまった。可愛くて可愛くて忘れることのできない生物。それが屋久島で出会ったヤモリである。
 最後になりましたがこんな可愛いヤモリと貴重な体験ができたのは、屋久島に行くことを許してくれた私の家族、上屋久町役場の皆さん、先生方のご協力があったからだと思います。本当にありがとうございました。

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村山恵理 東京農業大学農学部3年

 フィールドワーク、それは私が今まで足を踏み入れたことのない世界だった。大学の友達がフィールドワークとかワークキャンプとかによく出かけていて、話をよく聞いていたけど今一歩、踏み出せずにいる自分がいた。屋久島フィールドワークの存在を知ったのは、去年の6月。締め切り直後の大学の掲示。それまで私の中で漠然としていたフィールドワークという言葉に、屋久島って単語が付いた瞬間に行きたい気持ちがもりもり湧き上がってきて、今回応募してみた。保守的な自分としては驚きの行動力だったなぁ。ドキドキしながら返事を待っていたら、1日遅れて返事が到着。そして、希望のヤモリコースに合格!!後から聞いたら、ヤモリ班は結構人気だったらしい。でも大学での専攻とは違っていても、妥協しないでやりたいことに応募するのは大事だなぁと、つくづく実感した。応募できなかった去年はヤモリ班なかったし、今から考えるとヤモリ班に導かれる運命だったのかも。
 いざ屋久島に!!なんだか、すごい雰囲気をかもし出す研修センター・・・。最初はちょっとオロオロしたけど、全国各地から集まっていたみんなとは目的が同じだからか、すぐに仲良くなれた。開講式後、お風呂、ご飯、ミーティングと続き、その後就寝。今思えば、規則正しい生活を送ったのは初日だけだったかも。その後の5日間はヤモリの夜行性に合わせて、調査、採集は夜夜夜。昼に起きて、解剖後、標本に。だから、他の班と行動が全く合わないという事態だったけど、すっごく楽しかった。もちろん眠気とは戦ったし、夜中にライトをピカピカしてかなり怪しまれたりとか、ヤモリがなかなか見つからない時の車中のテンションの低さはありえなかったけど、そんなのはどうでもよくなるくらい、ヤモリを見つけて捕まえた時の喜びは大きかった。1週間ですっかりヤモリに魅了されました・・・。
 そして、今回のフィールドワークでは動物の分布調査の大変さを思い知らされた。ここにはこの種がいるはず、と仮説に沿って探しても、違う種がいたりとか、ヤモリ自体見つからなかったり。徐々に採集した数が増えて分布がはっきりしてくると、ここがまだ調べ足りないとか終わりがない。こういう分布調査をずっと続けている研究者の方々をすごく尊敬します。私の専攻である園芸作物は決して逃げないから。
 今年初めての試みだったという爬虫類の調査。講師の先生も探り探りだったそうだけど、これという決まった形がない楽しさがあったと思う。本当にヤモリ班でよかった!!そして、来年以降もヤモリ班が存続しますように・・・。
 帰って来てから思えば、本当にあっという間の1週間だった。友達や家族にヤモリヤモリ言い過ぎて軽く引かれたりとか、そういう副作用はあったけど、学生であるからこそ味わえる濃い時間だったと思う。普段の大学の授業や実習では、先生2人に学生5人なんて贅沢なことは絶対にありえない。そして、きっと一生の友達になる子、少年の心を持った大好きな先生方に出会えたし、決して忘れることのできない体験ができた。
 最後に、この講座のために準備してくださった環境政策課のみなさん、講師の方々、OGの竹内さん、班のみんな、参加したみんなに感謝します。・・・んー、来年も行きたい!!

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このページの問い合わせ先:京都大学野生動物研究センター 杉浦秀樹