京都大学野生動物研究センター屋久島フィールドワーク講座 >第7回・2005年の活動−シダ班−感想文

第7回・2005年の活動

シダ班 − 感想文

参加者感想文

高木菜穂子(京都府立大学農学部)

めくるめくシダの世界にどっぷりと浸ってきました。この講座に参加するまで、以前からシダに興味はあったものの、知識は全くといっていいほどありませんでした。そんなシダ初心者の私に先生方はいちから丁寧に教えてくれました。その道の専門家に教えてもらうことができるなんて、またとない機会です。屋久島の珍しい(らしい…)シダをおおいに堪能することができ、そしてこれもシダなのか!?と無知をふりまいた一週間でした。屋久島はシダの多様性に富み、いきなりシダ天国にはいった私は幸運だったと思います。
私たちが今回の実験地として選んだのは、屋久島でも上級者向きの山、モッチョム岳でした。山頂までは行かなかったものの、合計で3回も登りました。屋久島に来て、3回も同じ山に登る人はそういないと思います。しかもそのうちの一日はひどい雨に打たれながらの調査でしたが、これもいい思い出です。
意外にたいへんだったのが胞子を数える作業です。胞子嚢群から1つだけ胞子嚢を取り出し、それをスライドガラスにとり双眼実体顕微鏡で数を数えるという単純な作業ですが、これが慣れるまでかなり苦戦しました。というのは私の飽きっぽい性格のせいか…でも数をこなしていくうちに、だんだん胞子の数え方にもなれて、有性、無配の区別が容易にできるまでになりました。こんなに自分が急速に成長するのを実感できて、実に快感でした。私たちは山に登った後、採集したシダの形態を詳しく観察する作業も行いました。これはホコザキ、これはムラサキ、いやいやこれはヌカ(イタチシダモドキ)だろう、というように最後の方ではみんながかなりの割合で判別できるまでになっていました。最終的に、講座の成果発表として、調査・考察・結果発表とを一週間でこなさなければならないというなかなか厳しいものでしたが、色々考えて結果を導き出すことにやりがいを感じました。
今回の講座で、フィールドワークの意義を体感することができたと思います。やはり図鑑を一生懸命眺めても、実際フィールドで本物を触って、目で見て感じて覚える方が何倍も印象に残ります。自分で感じたこと、自然からたくさんのことを学んだことなど、体験してみなくては分からないことがあります。今回は屋久島という世界自然遺産のなかでの講座だったので、その体験も一段と特別なものになったように感じます。
そして、もう一つこの講座を通して得たものは、同じように屋久島でフィールドワークをした仲間ができたことです。日本全国からの大学生との交流がとても新鮮に感じられ、新たな刺激をたくさんうけることができました。この講座を通じてできた貴重な仲間は、私にとってかけがえの無い存在になると思います。
屋久島という特別な場所で、特別な仲間たちと一週間ともに過ごせたことは、私の一生の財産です。この講座をすばらしいものにしてくれた上屋久町の皆さん、そして先生方、本当にありがとうございました。

浜 一朗(東京大学農学部)

屋久島の生物相の豊かさ、そこに住む人々との関わりの意味について考えさせられる一週間だった。 これから繁栄していく生き物たち、そして滅びていく生き物たち。
樹冠に受けとめられた雨水が、音をたてて樹肌を流れ下りている。
この澄んだ流れは紛れもなく、屋久島の血液、命の流れなんだと思われた。
見たことのない樹木、シダ植物との出会い。
シダの葉を採集していて思ったこと。
調査のためとはいえこんな沢山とっちゃっていいのかな、と心配しながら考えたこと。
たった一株のフササジランと、鈴川の森で出会ったとき、感じたこと。
講師の方々から聞かせてもらった、シダ植物の不思議。
シダという、ちょっと変わった共通項で集まった仲間たち。
すべてが俺の財産となっている。
屋久島よありがとう。お元気で。

秀島瑠満子(佐賀大学農学部)

 屋久島を訪れてから、もう一月がたった。しかしこの間に、劇的に変化したことがある。それは私自身がシダのとりこになってしまったことだ。屋久島フィールドワーク講座でシダ班のメンバー、先生方と過ごした時間は貴重であった。シダの専門家からあんなに近くで話を聞いたり、シダの採集をしたりするのはもうないだろうと思う。
 今振り返ってみると、屋久島での体験は間違いなく私の世界を広げた。もちろんシダ植物は、湿度が高く日陰に多いから、山登りもはじめてであり、山の中で多くの植物と触れ合うことが出来た。自分の体を信頼したら、体はそれに応えてがんばってくれるということも発見した。自分の興味のアンテナに引っかかってくるシダも出現し、多くのシダを見て感動を分かち合えることはすばらしいと思った。私にとっては、新たな興味が湧いただけで屋久島に来た価値があったと思う。ややマニアックなシダを見て、シダ班のメンバー、先生方が瞳をキラキラさせて感激感動しながら夜遅くまで話をしたあの楽しい時間を、私は忘れないと思う。ただただこんなにすばらしいシダに触れることが出来た環境に感謝して、シダや他の多くの植物の生息する屋久島の自然をただすごいと思った。わくわくする時間が過ごせて、私はとても楽しかったです。どうもありがとうございました。

△このページのトップへ戻る

京都大学野生動物研究センター屋久島フィールドワーク講座 >第7回・2005年の活動−シダ班−感想文

このページの問い合わせ先:京都大学野生動物研究センター 杉浦秀樹