京都大学野生動物研究センター屋久島フィールドワーク講座 > 第6回 2004年の活動−シカ班−感想

第6回・2004年の活動

シカ班の活動 − 感想

受講生の感想文

代口麻衣美

 シカの観察を1日行って、その時はあまりシカが出て来なくて少し暇だったけれど、時間が経つにつれシカの行動が段々分かってきて、シカを追うのが楽しくなりました。
 2日目はルートセンサスを行い、私も何匹かシカを見つけることが出来たので良かったです。その後、植生調査で揚妻先生が昔調べたプロットで調査を行いました。胸高直径とシカの被害の割合を調べ、新しいナンバーテープを付けました。私はそれを記入していきました。始めは分からないことが多くて揚妻先生や日野さんに質問することも多く、皆から遅れているような気がしたけれど慣れてきて一人でもスムーズに出来るようになって、少し安心しました。
 シカの移動範囲を調べる時は二人一組になって調査しました。なかなか思い通りにシカの移動範囲を特定出来なくて一緒にやっていた木村さんには迷惑をかけたと思いますが、シカの場所が特定できた時は二人してとても感動しました。
 一日目は緊張して同じ班のメンバーとも全然話が出来なかったけれど、日が経つごとに調査もスムーズにいくようになり班のメンバーとも話が出来るようになったので良かったです。最後の発表の時も大学生の方々にすごく助けてもらってなんとか発表原稿を書くことが出来ました。
 今回、このフィールドワーク講座に参加出来てとてもよかったです。ありがとう御座いました。

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石場圭太

 屋久島は世界遺産の島なんだから、たくさん自然があるのだろう。と、思って屋久島に行った自分にとって屋久島に着いて船から降りた時に見た光景には正直がっかりしました。お盆と重なったこともありますが、フェリー乗り場には人があふれかえり、車がたくさんありました。また島には煙を出している工場が見えました。一湊に行く途中にはゴミ工場があり、道路脇にはゴミも多く捨ててありました。しか〜し!!屋久島は期待を裏切りませんでした。宿泊した一湊には、ほんとになにもなかったです。おまけに、風呂や部屋には虫がいるし、テレビはないし、トイレは水洗じゃなかったし…そのため、おもいっきり屋久島の自然を感じることができました。
 今思い出すと、自分は屋久島に行ったことで大きく変わることができました。大学へ行ってから自分はただ毎日なんとなく学校へ行き、なんとなく友達と会い、なんとなくバイトをして、なんとなく一日が終わっていくといったつまらない毎日をおくっていました。しかし、屋久島での1週間はそんな時とは無縁なほど充実した時間を過ごすことができました。自分がやりたいことをするとこんなにも充実するのだな〜と感じました。屋久島から帰ってきたらまず始めにやりたいことを見つけようと思いました。その他にも、屋久島の自然の中で過ごしたり、人と自然班の夜の発表を聞いたりすることで自然のあり方について考えさせられました。
 屋久島では、バスに乗り遅れたために10km歩くはめになったりサルに襲われたりなどいろいろありましたが、8日間本当に楽しかったです。大学の講義では学べないことばかりでした。言いたいことがありすぎて一言では言い切ることができないくらい屋久島には多くの魅力がありました。屋久島に住んでいる人は自分達の住んでいる島に誇りを持ってほしいし、島民以外の多くの人にも屋久島の魅力を知ってほしいです。そして、屋久島の自然が壊されている今、屋久島が世界遺産に登録された本当の意味を今一度多くの人々に考えてもらいたいです。そのためにこれからも屋久島フィールドワークを続けていってほしいです。すばらしい夏の思い出を作ってくださった役場や講師のみなさん、本当にありがとうございました。

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船田恵子

 18時間の移動の末にたどり着いた屋久島。ボロい宿舎。知らない人々。トイレに必ずいるでっかいクモ。噛まれたことのないヒルへの恐怖(?)…。どうなることかと思いながら始まったが、無事に終わって楽しかったといえるものになった。
 最初の観察で、シカの多さにびっくりした。歩けばシカに会える。ふと気づくと、周りはシカとサルだらけ。サルが木の実を口にほおばりながら私の横を歩いていく。近くにちょこんと座ってぽりぽりおケツのあたりをかいている。シカも歩いていく。私には無関心で…。「君、シカとサルに囲まれててびっくりしたよ」班の子に言われた。「見られてたか…」私の嬉しいひと時が私だけのものじゃなかったことにちょっとしたショックを受ける。
 植生調査では大学の実習で覚えた木の名前なんてすっ飛ぶし、知らない木もたくさんある。一生懸命覚えようと努力したが、だんだん訳が分からなくなる。さっきまでスラスラ言えていた木の名前が、容量オーバーになってきて突然言えなくなる。調査地まで登る途中イチゴのトゲに刺さって「もう!痛いって!!」悪態をつく。シダだらけの斜面をずり落ちるように下りて泥だらけになってみる。ヒルに襲われなかったことを幸せに思う。
 調査最終日。発信機をつけた3ちゃんを追う(?)。肩はこる。アンテナを振った右腕はほんのり筋肉痛になる。こんなんやったら、シカの観察でもよかったかも…なんてちょっと後悔もした。せっかく入れたデータが半分くらい消えたりもした。
なんだかんだ書いたが、毎日が充実していた。毎日、よく頭も使った。他の班がやっていること、講師の方の話も理解しようとした。自分でもびっくりするくらい質問をした気がする。的がずれていなかったか、今さら心配になる。 夜真っ暗な道を歩いて、星を見に行った。浜に行ったら夜光虫が見れた。みんなではしゃいだ。
 1週間は長いと思っていたが、短く感じた。これから役に立つだろう色々なヒントをもらえた。いろんな人と知り合いになれ、お世話になった。今回出会えた人や生き物達に…ありがとうございました。

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木村桃子

 私が「屋久島」という言葉を左脳にしまいこんだのは小学生の頃。理論社から出版されている椋鳩十の本でだった。彼の著書の中には屋久島の自然や人々の生活が多々出てくる。その中の一節に「古木の杉の葉は、緑というより藍色をしているのです。」とあった。「葉の色が藍色?」 それを読んで以来、私は屋久島自体とその色を見たくてたまらなかった。そんな私にとって、屋久島フィールドワーク講座の参加者募集は願ってもないものだった。しかし、各コースとも少数しか取らないとの事。課題文を書きながらも期待はできないと思っていた。それが何と、参加可との通知。思わず、小躍りしてしまった。長い間、知りたかった屋久島の色。・・本当に椋鳩十の本の通りだった。無論、全てが藍色なのではない。緑青色、柳色、常磐色、木賊色。様々な顔の緑色がそこにいた。しかし、一つの塊としては深い深い色があった。どうしてこんな色になるのだろう。最初は、薄い緑色だったものに空の青色が何十年も何百年も島に染め付けられていったからかもしれない。屋久島に長い事住めばヒトの心もあんな色になるのだろうか。
一週間のシカの調査。専攻が文系の私には分からない事だらけだった。だから、調査法の呼び名の響きだけでもわくわくした。ラジオテレメトリーやルートセンサス、毎木調査。毎木調査は音だけ聞いて、講座の終盤の辺りまで「埋木??」。名前だけでも疑問符。一番困ったのは、植物の名前。何度先生に教えて頂いてもすぐに分からなくなる始末。あの時ほど、自分の脳の働きを疑った事はない。
 屋久島では、講座全体、そして講座中の生活から『島』を考える事が多かった。『島』は範囲が限定されている。だから、何か資源を使い果たして別の場所に移動する事はできない。島の生活は程々に使って、また再生の繰り返し。よく聞く「持続可能な資源」が身に迫る場所である。しかしながら、島で生きる者と外の者と資源の関係は脆い。私も沖縄という島に住んでいるからそれはひしひしと感じるし、これからずっと考えていく事だろうと思う。屋久島は「世界遺産」の銘がつけられた。この事はプラスに働くが、その逆にも転がりやすいと思う。だが、今回の講座のようなものが続いていけばマイナスに働くかもしれない事をプラスに変えていけるかもしれない。
 講座での大きな収穫の一つは、人との出会いだった。様々な大学の先生方、そして学生が枠を越えてあれだけ密度の濃い生活をおくる事があるだろうか。研修施設は見た瞬間には不安を抱かされ、暑くて洗濯物も乾きにくい所だったが、それは瑣末事と思えるくらい楽しい生活だった。終ってみれば、特定の人としか話していなかった様でもっと他の人とも話せば良かったと後悔。
 講座の先生方、ご一緒した皆さん。一週間本当に有難うございました。個性的で凄い、そして素敵な面々でした。参加できて本当に良かった。記憶喪失になったとしても、忘れられない時間でした。日本各地から集まってはいましたが、是非またお会いしましょう。場所は勿論、「屋久島」で。

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西村耕野

 屋久島での生活はほんとうに新鮮なことばかりであった。フィールドワークでは1日中森の中に入りシカや森林の植生を調査した。野生の動物をこんなにも長い時間観察したことも、こんなにも長い時間森のなかに入っていたことも初めてだった。個々の動物はたいして違いはないのだろうと思っていた私にとって、個々のシカがそれぞれ思い思いに様々な行動をしていたことに驚いた。また、いままで樹や茎や葉などがそれぞれの植物で異なることに注目もしていなかった私にとって、森林の植生調査を通じて、それぞれの植物で葉の形や手触り、色などが異なっていることや、植物が生えている場所によってそれらの特徴が異なっていることをあらためて感じたことは、私の植物を見る姿勢に変化を与えてくれた。
 いま私が住んでいるところは、屋久島とは全く違う自然環境である。いままではその自然環境しか知らなかったが、屋久島に行き、上で書いたような多くの経験をしてからもう一度この身近な自然環境を見直してみると、いままで注目していなかったことにも注目できることに気づいた。屋久島は豊富な自然が残る大切な自然であることは確かである。だが私たちの身の回りの自然も同様に大切なものである。遠くにある有名な自然だけではなく、身近にある自然をもっと詳しく観察してみるのも面白いことなのではないかと思えてきた。
 最後になりましたが、多くの経験をさせていただいたこのフィールドワーク講座を企画して下さった先生方、そしてフィールドワークで指導していただいた先生方、本当にありがとうございました。

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このページの問い合わせ先:京都大学野生動物研究センター 杉浦秀樹