研究紹介

研究内容

野生や飼育下の動物のDNA研究
野生や飼育下の動物のDNA研究

絶滅危惧種の保全遺伝学的解析、性格などに関与する機能遺伝子の多様性解析、DNAメチル化を指標とした年齢推定法の確立を行っています。また、霊長類、イヌ、イルカなどの哺乳類、ニワトリ、オウムなどの鳥類の、二万点以上のDNA試料を保存し、研究しています。一見したところ、プラスチックチューブの中の透明な液体ですが、これらは貴重な情報を含む遺伝資源であり、いわば DNAの動物園です。

野生や飼育下の動物の認知行動研究
野生や飼育下の動物の認知行動研究

熊本サンクチュアリに飼育されているチンパンジーやボノボを対象にした認知研究、動物園のトラやユキヒョウを対象にした行動研究、野生や飼育下のウマやイヌなどを対象にした社会的知性の研究などを行っています。熊本サンクチュアリのチンパンジーやボノボを対象にした心の理論に関する研究成果は、サイエンス誌が選ぶ2016年の10大論文に選ばれました。

野生動物の社会生態研究
野生動物の社会生態研究

例えば、①ボノボ分布域南西限に生息するボノボの社会生態学的研究をしています。ここのボノボたちは森林だけでなく、サヴァンナも頻繁に利用することがわかってきました。②ゾウの鼻を使った接触行動やメスの社会関係を研究しています。鼻を使った接触にはS字型とU字型があり、それぞれ機能が異なることを明らかにしました。③アカシア林とミオンボ疎開林に生息するキリンの母子関係を研究しています。キリンは仔育て集団を形成しますが、その社会関係が複雑に変化することを突き止めました。④九州有明海に生息する野生のスナメリを、ドローンを使って上空から観察しています。これまでは単独性が強いとされていたスナメリですが、有明海では複数の個体が集まることも多く、高い社会性をもつことが明らかになりつつあります。

野生や飼育下の動物の行動研究
野生や飼育下の動物の行動研究

様々な野生動物の行動を国内外の野生生息地でのフィールドワークや動物園・水族館での調査によって行っています。特に、音声によるコミュニケーション(アジアゾウ、ミナミハンドウイルカ、クラカケアザラシ、アゴヒゲアザラシなど)や匂いによるコミュニケーション(ドール、マレーバク、チーターなど)、音響解析による水中行動の解明(アマゾンカワイルカ、ガンジスカワイルカ、アマゾンマナティーなど)を行っています。

野生や飼育下の動物の繁殖研究
野生や飼育下の動物の繁殖研究

微量生理活性物質(ホルモン)を分析することで、絶滅の危惧に瀕する動物たちの繁殖に関わる生理学的特徴を研究しています。生態情報や飼育環境、行動変化などのデータと合わせることで、生理的変化をもたらす要因を調べています。また、配偶子など、未来の繁殖のための重要な資源の保存に関する研究も行なっています。

熊本サンクチュアリでの動物福祉研究
熊本サンクチュアリでの動物福祉研究

熊本サンクチュアリには、日本で最多数のチンパンジー、そして日本で唯一のボノボ集団が暮らしています。ヒトのヒトらしさや進化的基盤を探ることを目的に、彼らの心や行動を調べています。また、チンパンジーやボノボができるだけ楽しく快適に暮らせるよう、動物福祉の視点からの研究も行なっています。

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幸島の野生ニホンザルの長期研究
幸島の野生ニホンザルの長期研究

幸島に生息するニホンザルを1頭1頭識別し、生まれてから死ぬまでの一生を記録し続けています。これは50年以上続いており、世界で最も長い研究の一つです。サルの定期的な体重測定も行い、個体ごとの体重の変化も研究しています。このような基礎的なデータを生かして、行動観察、行動実験、サルの糞・尿・唾などの試料を活用した研究等を、他の研究機関と共同して研究しています。

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屋久島の哺乳類の長期研究
屋久島の哺乳類の長期研究

屋久島の西部海岸地域を中心に、ヤクシマザル、ヤクシカなどを長年、観察しています。ヤクシマザルは約10群を対象に、個体識別をしながら、頭数の増減や出産などを調査しています。また、決まったルートを歩いたり、自動撮影カメラで撮影したりして、ヤクシマザル、ヤクシカ、イタチ、タヌキなどの頭数の変化を、毎年調査しています。かつて人が伐採した二次林で、意外と動物が多そうなことがわかってきました。

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研究紹介動画

すぐにわかる野生動物研究
~フィールドワークとラボワークから見る生命~

知の拠点【すぐわかアカデミア。】
国立大学共同利用・共同研究拠点協議会
2021年(令和3)9月配信

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ニホンザル研究セミナー
ニホンザル研究セミナー

ニホンザル研究セミナーは、ニホンザルという種を核にして、さまざまな基礎研究の成果を発表し、研究分野や世代を超えて交流し討論することを目的としています。このセミナーは2001年に有志によって始まり、2002年から2019年まで、主に霊長類研究所の共同利用研究会として行われてきました。主催やタイトルは少しずつ変わっていますが、初期の精神は保ちながら、現在も継続しています。  

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