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川本芳准教授(霊長類研究所)が10月25日~31日にブータンを訪問いたしました

川本芳准教授(霊長類研究所)が10月25日~31日にブータンを訪問しました。
ブータン農林省との共同研究の連絡のため、以下を訪問し関係者と打合せを行いました。

(1)Yusipang再生可能天然資源研究開発センター
 Chuzom(ParoとThimphu間の渓谷)でアッサムモンキーを対象に行った Human-Wildlife Conflict 問題の第1次試験研究を終了し、成果の公表準備に入りました。この試験研究では野生群に発信機を着けて、行動域、群構成変動、採食および繁殖の生態、農業被害実態、を2年間調べ、被害獣の生態的特徴をはじめて研究しました。大井徹さん(独立行政法人森林総合研究所)と千々岩哲さん((株)ラーゴ )の指導で、Yusipang研究開発センターのスタッフに、GPSおよびVHF発信機を使うテレメトリー法と方向探査によるサル野生群の生態観察の技術移転を行いました。また、発信機装着時にはブータン初の捕獲調査を行いました(写真1)。こうした調査から得られる基礎情報について、濱田穣さん(霊長類研究所)が形態学の、川本が遺伝学の研究方法をブータン関係者に紹介しました。この第1次試験研究の経過は同センタースタッフが昨年8月にタイで開催された霊長類関係の国際シンポジウムで発表しました*。
*Tshewang Norbu, Kinley Rabgay, Pema Wangda, Rinchen Dorji, Sherabla, Yoshi Kawamoto, Yuzuru Hamada, Toru Oi, Akira Chijiiwa. Ecological assessment of Assamese macaques for the control of agricultural damage in the western Bhutan Himalayas. The 3rd International Symposium on Southeast Asian Primate Research: Diversity and Evolution of Asian Primates, August 29th 2012, Bangkok, Tailand.
 本年4月からは、Thinleygang(Dochu LaとLobeysa間の集落)で第2次試験研究をはじめています。この試験研究では、ブータン農林省が独自に開発中の電気柵をサルの被害防除に応用するため、システムの改良を試みています。この現場を訪問しブータン式電気柵による被害防除状況を観察しました(写真2と3)。
 今後はNawa(Wangdue PhodrangとNobding間の集落)で第3次試験研究を予定しています。この試験研究では、これまでの研究成果を活用し、実際に甚大な被害が発生している集落全域に電気柵を敷設し、防除がサルの行動や生態に与える変化をテレメトリー法でモニターする予定です。今年からはじまる第11次五カ年計画でも、野生動物の被害防除に向けた基礎研究が求められており、この第3次試験研究は重要な共同研究になります。Nawaを訪れ、この実現に向けて関係者と情報交換を行いました。


写真1 Yusipangとの第1次試験研究:発信機によるChuzomでのサル生態調査(2011年3月撮影)


写真2 Yusipangとの第2次試験研究:Thinleygangの調査地(2013年10月撮影)


写真3 Thinleygangに設置したブータン式サル防除用電気柵(2013年10月撮影)


(2)畜産局 本部、National Centre for Animal Health(NCAH)、およびNational Biodiversity Centre (NBC)
 国営牧場で飼われる有用家畜ミタン(写真4)の遺伝学調査に関し、本年3月からNCAHと日本で行った実験(写真5)結果を解析し、次の研究計画を検討しました。また、NCAHとNBCの設備と運営状況を視察し、ブータンでさらに実験分析を展開するための相談を行いました。
この結果、12月に専門家2名を日本に招き、生物資源評価に有効でブータンで実現可能な遺伝子分析の技術を伝達するため、講習を行うことになりました。


写真4 ブータン東部 Aerong (Samdrup Jongkhar) の国営牧場で飼われるミタン(2011年9月撮影)


写真5 畜産局との共同研究:National Centre for Animal Healthでのミタンの遺伝子分析(2013年3月撮影)