Published: November 11, 2021

Do chimpanzees enjoy a virtual forest? A pilot investigation of the use of interactive art as a form of environmental enrichment for zoo-housed chimpanzees

Yumi Yamanashi, Kazuki Hitoosa, Nobuaki Yoshida, Fumihiro Kano, Yuko Ikkatai, Hidefusa Sakamoto

DOI: 10.1002/ajp.23343

チンパンジーを対象として,映像を用いた新規のエンリッチメントを開発し,それを評価しました。アーティストの人長果月さんらとの共同研究です。映像の変化が若いチンパンジーたちにとっては,ポジティブな感情も引き出すものであることがわかりました。

動物園の動物福祉向上のために環境エンリッチメントが欠かせない。エンリッチメントに近年の技術の進歩を組み合わせることは,これまでのエンリッチメントにあった時間的・空間的制約などの課題を改善するのに貢献すると考えられる。本研究では、映像を用いた環境エンリッチメントを制作し,それが環境エンリッチメントのひとつとして機能するかどうかを調査した。インタラクティブな映像をプロのアーティストが製作し,京都市動物園の屋内運動場に設置した。ブイに加速度センサーを埋め込み,また天井に赤外線近接センサーを設置することで,チンパンジーが映像に触ったり,ブイを動かしたりすることで映像が変化する仕組みを作った。それを評価するため,2020年3月16日から20日にかけて、チンパンジーの群れ全体(6頭)を観察し、行動を記録した。2020年3月16日から20日の間、チンパンジー(6個体)を観察して行動を記録し(コントロール条件),その後2020年3月21日~29日に映像を提示した条件での行動を記録した(実験条件)。行動の記録は、直接観察とビデオ撮影で行った。結果として,チンパンジーは実験条件では,コントロール条件に比べて屋内運動場の滞在時間が長くなった。実験期間中の行動量に大きな変化は見られなかった。また期間中に、飽きたという証拠はなく,若いチンパンジー2個体を中心に頻繁に利用が確認された。これらの若いチンパンジーは時折,プレイフェイスも表出した。これらの結果から、個体差はあるもののチンパンジーが食物報酬なく映像の変化を「楽しむ」ことがあきらかになった。
Article Information
Yamanashi, Y., Hitoosa, K., Yoshida, N., Kano, F., Ikkatai, Y., & Sakamoto, H.(2021)Do chimpanzees enjoy a virtual forest? A pilot investigation of the use of interactive art as a form of environmental enrichment for zoo-housed chimpanzees American Journal of Primatology , 2021;e23343. 10.1002/ajp.23343