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アマゾンの森林における動植物の相互作用、絶滅危惧種保全およびフィールドミュージアムに向けた野生生物情報収集に関する研究

1.チームメンバー

日本

湯本 貴和 教授 (京都大学 霊長類研究所)
矢部 恒晶 研究員 (森林総合研究所)

ブラジル

Niro Higuchi (INPA)
Wilson Spironello (INPA)
Marcelo Gordo (INPA)
Rita Mesquita (MUSA)
Alberto Vicentini (INPA)
Mario Cohn-Haft (INPA)

2.研究の背景

持続可能な森林管理や生物多様性の保全のためには、森林に生息する生物の科学的情報の集積が重要な要素です。とくに観察が難しい林冠における動物相や動物・植物の相互作用について、アマゾンでは詳しく研究された例はまだ少ないのが現状です。またアマゾンを特徴づける浸水林の生物もこれまであまり研究されていません。さまざまな森林タイプおよび地上から林冠までの階層をカバーした動植物の情報を収集し、森林生態系や絶滅危惧種の保全および環境教育のために、最新のテクノロジーを駆使してフィールドミュージアムのコンテンツとして整備する必要があります。

3.研究の目的・方法と期待される成果

マナウス近郊の国立アマゾン研究所保護区において、1)テラ・フィルメ林(一年中、浸水しない森林)および河川沿いの森林に林冠観察施設をつくり、植物の季節変化(フェノロジー)を記録するとともに、地上から樹上までの階層別の自動撮影によって、哺乳類や鳥類などの動物相と空間分布、植物との相互作用などを明らかにします。2)フタイロタマリンなどの絶滅危惧種についての生態や行動の情報を収集し、保全対策を考えます。3)環境教育やエコツーリズムのための観察法の開発や科学的情報の収集を行い、都市住民にアマゾンの動植物相や生態系の機能を理解してもらうための展示内容を提供します。

4.フィールドミュージアム構想に対するインパクト・貢献

ブラジル・アマゾン地域は現在でも世界的に見て森林の減少率が高い地域の一つであり、伐採のみに頼らない森林の保全的利用の推進が必要とされています。マナウス周辺でも森林に住む多くの動物が絶滅の危機にさらされており、その保全のための研究が緊急に必要とされています。このチームでは、減少が懸念される野生動物や生息環境の研究、ならびに研究・保全施設の整備を行なうとともに、研究により得られたアマゾンの森林生態系に関する正確で豊かな情報を、地域住民や都市住民、旅行者向けの環境教育プログラムやエコツーリズムへ提供することでフィールドミュージアムに貢献します。

5.人材育成面でのインパクト・貢献

森林や森林に住む動物の生態学的研究に加え、絶滅危惧種の保全や環境教育・エコツーリズムのプログラムを開発・実施する人材を育成するために、日本およびブラジルから参加する若手研究者の研究およびフィールドにおける経験をサポートします。また日本を始めとして世界各地の事例を紹介するとともに、地域の人々へアマゾンの森林生態系の情報を提供し、エコツーリズムプログラムなどをさまざまな地域のステークホールダと一緒に開発することで、マナウス周辺の森林を保全しつつ、収入を得るためのアイデアを提案し、実現への道筋をともに考えていきます。

写真1.INPA内に生息するげっ歯類の仲間のアグーチ。


写真2.INPA内に生息するフタイロタマリン。生息地の分断から絶滅が心配されている。