女子ワイルドライフ・サイエンティスト養成講座 第7回
フィールド女子 vs. ICT男子
どうぶつにかかわる色んな仕事の話を聞いてみよう
 動物のことをもっと知りたい! 動物好きならみんなそう思うでしょう。
でも、どうやって調べるんだろう? どんな勉強をすればいいんだろう。どれくら大変な仕事なんだろう。。。

 じつは動物の研究といっても、いろんな調べ方があるのです。
今回は、野生動物が住んでいる国のその森まで出かけていって調べている女性フィールドワーカーの方をお招きします。 そしてもう一人、ICT(情報通信技術)を駆使して動物のことを調べてやろうとしている男性研究者にもお話ししていただきます。
ほとんど正反対のアプローチの仕方をするお二人の話を聞いてみませんか?
これまでとは違った動物の姿が見られると期待してください

さらに、今回は、動物園の裏側探検も企画しました。動物園には、亡くなった貴重な動物を、はく製や骨格標本として 保管している保管庫があります。これらの資料が、会場となる(元)白川小学校の校舎に引っ越しています。それらの 標本を巡るツアーを企画しました。現在の京都市動物園では見られない動物たちの標本とも会えるチャンスです。
この機会をお見逃しなく!

これまでのプログラムに参加してくれた人も、また参加してみませんか? お楽しみに。
保護者の皆様、学校の先生の方のご参加もお待ちしています。よかったら、子どもたちと一緒に聞いてみてください。

プログラム

13:00 企画説明

13:10 先輩フィールド女子によるミニトーク

 久世濃子 さん(日本学術振興会・特別研究員/国立科学博物館)
「動物園とボルネオ島でのオランウータン研究」

13:55 ICT男子によるミニトーク

  吉田信明 さん(京都高度技術研究所)
「コンピュータの目で動物たちをもっと生き生きと! ~動物園でのセンサーデータの活用に向けて~」

14:40  休憩時間

15:00 動物園資料室探検

動物園の資料室に眠っているたくさんの剥製や標本を見てみよう。

16:00 まとめのセッション

16:30 閉会

先輩フィールド女子によるミニトーク

動物園とボルネオ島でのオランウータン研究

久世濃子さん(日本学術振興会 特別研究員/国立科学博物館)

大学院修士課程から現在まで、足かけ15年間、大型類人猿の一種、オランウータンを研究しています。
修士課程で日本の動物園で研究、博士課程からボルネオ島の保護施設(リハビリテーションセンター)で調査を続け、 学位取得後はボルネオ島の熱帯雨林(ダナムバレー森林保護区)で、後輩や現地の協力者と新しい調査地を立ち上げて、調査を続けています。

研究テーマは、「『顔』が成長に伴ってどのように変化するか」、視覚コミュニケーションや「遊び」における性差、などに取り組んだ後、 現在は、「雌の繁殖生態、繁殖生理」を主なテーマにしています。

2013年末に、オランウータンの生態や調査の様子をまとめた入門書「オランウータンってどんな『ヒト』?」という入門書を朝日学生新聞社から出版しました。

久世濃子さん

研究の様子

オランウータンの母子

オランウータンの母子

11ヶ月の娘とボルネオへ

11ヶ月の娘とボルネオへ

「オランウータンってどんなヒト」朝日学生新聞社

当日の様子
久世濃子さん 講演のようす
久世さんは,野生オランウータンの生態を研究するフィールドワーカーです。 マレーシア領のボルネオ島サバ州において,オランウータンを追いかけていますが, その際の研究の苦労や,現在進めているオランウータンの繁殖戦略の解明や, その応用としてオランウータンの「産婦人科学」を確立させようとしている話を していただきました。調べれば調べるほど,近縁だと思われているチンパンジーや ヒトとの違いが見えてきて,興味深い研究です。
ICT男子によるミニトーク

コンピュータの目で動物たちをもっと生き生きと!
~動物園でのセンサーデータの活用に向けて~

吉田信明さん(京都高度技術研究所 研究員)

京都市動物園では、動物舎に様々なセンサーを取り付けて、動物の飼育環境や行動を記録し、
飼育活動に生かすための取り組みを行っています。センサーは、動物の行動や飼育環境を
様々な観点から長期間にわたって客観的な数値データとして記録することができます。
動物園の皆さんの緻密な観察に加え、このようなデータを活用することで、より生き生きとした
飼育展示の実現を目指しています。

吉田信明さん(京都高度技術研究所 研究員)

動物園でセンサーを使った研究を試みる

黄色の丸の中が仕掛けたセンサー

黄色の丸の中が仕掛けたセンサー

飼育担当者と協力して設置場所を検討

飼育担当者と協力して設置場所を検討

センサーの動作をPCでモニターする。

センサーの動作をPCでモニターする。

雪にも負けず、センサーを設置する。

ICT研究者も実はフィールドワーカーだった!?
雪にも負けず、センサーを設置する。

当日の様子
吉田信明さんのトーク
吉田さんは,京都にある高度技術研究所(ASTEM)という研究所で働く研究者です。 コンピュータ、とくにネットワーク技術の研究をしています。お話では、私たちの日常生活 には思っているよりもずっと多くのコンピュータが介在して、支えてくれていることを 教えてくれました。コンピュータの特性は繰り返しと継続性、そして正確さです。 これらの特性を利用して、現在進めている、動物園でのセンサーを利用した動物の研究について 話してくれました。
動物園資料室探検
当日の様子
剥製や骨格標本: 動物園資料室探検
2人のトークの後は、かつて動物園の図書館や標本庫にあった剥製や骨格標本を
移してきた(元)白川小学校の教室を巡りました。剥製室に骨格標本室、合わせて3室。
参加者たちは、かつて京都市動物園にいたが、現在は見られなくなった動物たちの
姿を、興味深く観察していました。
最終回を終えて

最終回はたくさんの参加者を迎えて終わりたかったところですが、 実際にはごくわずかの参加者にとどまりました。講演内容は中高生・一般を 問わず興味深いものでした。標本室でも、入った人たちは皆、驚きと興味の目 でそれぞれの動物たちを見入っていました。問題は、その内容が見に来て ほしい中高生たちに届かないこと。届いたとしても、動物園まで足を伸ばす ほどの動因にならないことです。これはこの一年間に繰り返し痛感し、 広報の方法を試行錯誤してみましたが、改善にはいたらなかったことです。 確かにクラブ活動や塾に加えて家族との時間など、子どもたちが思った以上に 忙しいことを知りました。しかしその一方で、実習のプログラムでは比較的 早くに定員が埋まることも経験しました。「面白いことをしている大人の話 を聞く、その人と話をする」ということの面白さを子どもたちに伝えた かったのですが、まだ道半ばです。JST女子中高生の理系選択支援プログラム としての活動は、今年度限りです。しかし、来年度以降も、同様の目的を もって、中高生に動物園の仕事、動物園に関係する研究の面白さを伝えていく プログラムを続けていきたいと思います。

(文責: 田中正之 京都市動物園 生き物・学び・研究センター長 /京都大学野生動物研究センター 特任教授)


イベント概要

女子ワイルドライフ・サイエンティスト養成講座 第7回講演会
フィールド女子 vs. ICT男子 『どうぶつにかかわる色んな仕事の話を聞いてみよう』!
日時: 2014年 3月 29日(土) 13:00-16:30
会場: 京都市動物園(元白川小学校)


お問い合わせ先

女子ワイルドライフ・サイエンティスト養成講座事務局
girls-wildlife@wrc.kyoto-u.ac.jp
講演者への質問も受け付けます。気軽にメールしてください。
*メールには、送信者のお名前と学年(または年齢)を必ず書いてください。


主催
京都大学野生動物研究センター
協力
京都市動物園 生き物・学び・研究センター
京都水族館
後援
京都府教育委員会・京都市教育委員会

女子中高生の理系進路選択支援プログラム

女子ワイルドライフ・サイエンティスト養成講座