共同利用・共同研究

2021年度報告書

2021-A-01
代表者 舟川一穂
安定同位体比を用いた、ニホンザル野生群における個体レベルでの食性解析

舟川一穂(京都大学生態学研究センター)

本研究では年齢や性別など様々な社会的属性が既知であるニホンザル幸島群に対して、個体レベルで食性解析を行い、これら社会的属性が食性に与える影響を定量的に示すことを目的として行った。用いた手法は炭素・窒素・硫黄安定同位体比分析であり、対象とした個体は幸島主群に属する20個体である。分析の結果、3つの安定同位体比すべてで個体差が検出され、同じ群れ内でも食性に個体差が存在することが示された。また幸島群が摂取している食物資源の同位体比も分析し、ベイズ混合モデルを用いて各個体および個体の属性ごとに食物の摂取割合を推定した。その結果、群れ内の優劣関係が摂取割合に与えている影響は検出できなかったが、一方で年齢や性別によって食物の摂取割合に変動が生じていることが示された。具体的にはオスは海産由来の食物資源の摂取割合がメスよりも大きく、また森林由来の食物も大きかった。メスは人間が餌付け用に与えている小麦の摂取割合がオスよりも大きくなっていた。年齢では世代によって海産由来の食物資源への選好性が異なっていた。今後は食性の経年変化および分析の微量化による食性の季節変動に焦点を当て、個体レベルでの食性解析を継続していく。

2021-A-04
代表者 岸田拓士
近代以前の日本の動物相の遺伝的多様性に関する研究

岸田拓士(ふじのくに地球環境史ミュージアム)

本研究では、縄文時代から江戸時代にかけての小型鯨類の骨の収集、およびDNA抽出を試みた。最も古い試料では、縄文時代中期の貝塚から出土した骨からのDNA抽出およびミトコンドリアDNA配列の解読に成功した(添付図)。DNA抽出に成功しなかった試料は、発掘後に乾燥や撮影などの目的で直射日光に晒したものが多く、貴重な動物考古遺物に含まれるDNAを確実に保存するためには、発掘後の取り扱いが重要であることが示唆された。
本研究で得られた予備的なデータをもとに日本学術振興会の科学研究費(基盤B「日本の動物相の原風景―集団ゲノミクスと古代DNAによる在来動物の集団史の解明」)に応募し、無事採択された。

縄文時代のカマイルカの下顎骨。四角に切り取った部分からDNAの抽出を行った。横浜市ふるさと歴史財団埋蔵文化財センター収蔵、岸田拓士撮影。

2021-A-05
代表者 中嶋千夏
天売島で繁殖するウトウの一年を通したペア行動追跡

中嶋千夏(筑波大学生命地球科学研究群)

海鳥は,繁殖期になると陸上で巣を作り,つがいで雛を育て,繁殖を終えると餌資源がより豊富な越冬地を求めて「渡り」を行う.これを生涯にわたって繰り返す.しかし越冬地へ渡る際に,つがいが共に渡りを行う種はほとんどない.海鳥において,どのようなメカニズムでつがいが同時期に繁殖地に帰着し,つがいを再形成するかは明らかにされていない.渡り経路及び帰着日が同調することで繁殖が早まり,その結果繁殖成績が上がることは先行研究から分かっており,つがいの行動は海鳥の適応度に影響を与える重要な問題である.近年では,照度を記録して個体の位置を推定する「ジオロケーター(以後,GLS)」など,データロガーの発達により,海上でのつがいの行動を追跡することが可能となった.しかし,繁殖期から非繁殖期にかけて同個体で追跡を行った研究は少なく,さらに繁殖期から持ち越された渡り行動への影響についての知見は乏しい.
本研究では,2021年5月から6月に,北海道天売島で繁殖するウトウCerorhinca monocerataの巣穴前に自動撮影カメラを設置してつがいの帰巣行動を記録し,そのつがいにGLSを装着して,翌年同個体を再捕獲して回収予定であった.しかし,2021年は天売島におけるウトウの繁殖状況が非常に悪く,調査していた巣穴55巣の雛の内,12個体が死亡,17個体が失踪し,結果として52.7 %の雛が育雛途中にいなくなった.餌不足などにより親鳥の繁殖による負担が大きく,育雛を放棄したと考えられる.このことから,翌年親鳥が繁殖を行う可能性が極めて低くGLSを回収できないため,GLSの装着を断念し,自動撮影カメラの設置のみを行なった.自動撮影カメラの映像には巣穴から出た雛の様子が映っており,日中に測っていた体重と翼長の推移から,巣立ちの体サイズに満たない雛であることがわかり,飢餓により巣穴から抜け出したと考えられる.繁殖期の親鳥の行動を調べるため,現在映像を解析中である.

2021-A-06
代表者 打越万喜子
テナガザルの社会的環境が歌行動へ与える影響

打越万喜子(京都大学霊長類研究所)

小型類人猿のテナガザル全種は歌と呼ばれる複雑な音声コミュニケーションをとる。歌の音響特性には、種および性により違いがある。大人雌のグレートコールと呼ばれるレパートリーは、遺伝的に決定されるステレオタイプなものとみなされてきた。一方で、大人雌がひとりで雌雄両方のレパートリーを発声する等、通常とはことなる歌い方をする事例も少数報告されている。本研究の目的は、様々な社会環境のテナガザルを対象に、その歌の個体内変異を調べ、音声の柔軟性を理解することだ。2021年度、国内の動物園2か所で、テナガザルの大人雌2個体(A,B)について事例研究をおこなった。Aについて2か月間、Bについて3か月間、音声を連続記録し、分析した(Aの620、Bの288グレートコール)。結果、A・Bとも、通常タイプのグレートコールに加えて、非典型的ともいえる“非常に長いグレートコール“を持つことが確認された。しかも、それは稀に起こるものではなく、毎日のように起こる(Aでは3回に1回程度、Bでは2回に1回程度)。Aについては、その社会的環境を単独飼育からペア飼育に変化させ、その前後の期間で比較をしたところ、”非常に長いグレートコール“の生起はペア飼育開始後に有意に減少していた。このことから、従来は固定的とされる大人雌のグレートコールが変化しうることが示唆された。しかし、これら2個体の特性はなんなのか。どのような養育歴や背景や学習経験を持つのか、不明な点が多い。今後、同じ個体を対象に継続して観察し、どのような条件下で非典型的な歌い方が起こっているのか、さらに詳しく調べる予定だ。

2021-A-07
代表者 金澤朋子
飼育下アジアゾウにおける自動給餌機を用いた飼育環境の向上

金澤朋子(日本大学生物資源科学部)

飼育下ゾウは1日の採食行動割合が約30%と野生個体の2分の1ほどであり、行動パターンも単調である(Posta et al., 2013)。とくに夜間を過ごす屋内施設は屋外施設に比べ狭く構造が簡素であり、給餌も収容時に1度行われるのみであることが多い。そこで本研究では採食機会の細分化・多様化を行うため、夜間の屋内施設利用時において頭上部の位置に自動給餌機を導入し、行動学的手法を用いて効果を評価した。
横浜市立金沢動物園のアジアゾウ成雄1個体を対象に2021年8月から9月において、床に餌を設置する給餌「床置き」、頭上の餌箱を追加使用した給餌「餌箱」、餌箱に自動給餌する方法を追加した給餌「給餌機」の3つの試験を実施した。餌箱は地面から3.3mの高さに設置し、ゾウがいる側には鼻が通る大きさの穴があいていた。自動給餌機にはベルトコンベアを使用し、4kg /回の餌が1日に3~4回、餌箱に追加される仕組みとした。観察は1日あたり17時から翌朝8時を対象に行い、間接観察法による連続サンプリングで、「採食(餌箱、給餌機の利用は分けて記録)」「常同行動」「静止」「休息」「その他」、さらに地面および餌箱以外で餌を探す「操作」の回数を記録した。
採食の行動割合は観察時間中の平均25%であり、全期間で行動割合に変化はなかった。常同行動は有意な減少が示され、観察時間中に行動割合は床置きで21%、餌箱で14%、給餌機で2%であった。とくに顕著な変化を示したのは操作であり、餌が設置される場所以外も探索する行動が、ほぼ給餌機でのみ確認された。以上より高い位置での給餌と給餌の細分化は餌を探す行動を誘発し、飼育下特有の常同行動を減少させる効果があった。またとくに、給餌機を使用時に、その効果が顕著に表れたことから給餌の高さよりも細分化が重要であることが示された。

ゾウ舎の屋内施設に設置した自動給餌機(写真撮影:金澤朋子)

2021-A-08
代表者 金子武人
野生動物配偶子バンクの構築および保存配偶子の人工繁殖への応用

金子武人(岩手大学理工学部)

本研究では、野生下や動物園で飼育されている希少な哺乳類および鳥類の精巣、卵巣組織から精子および卵子を採取し、フリーズドライ法および凍結保存法による配偶子保存法を開発することで、配偶子バンクの構築および保存配偶子を用いた人工繁殖技術の開発を行うことを目的とした。
精子は、フリーズドライ保存および凍結保存を実施した。精子のフリーズドライについては、回収した精子を10mM トリス + 1mM EDTA溶液に懸濁した。精子懸濁液をガラスアンプルに充填後、フリーズドライ処理を行った。フリーズドライアンプルは密閉し、冷蔵庫(4℃)で保存した。
本年度は、国内の絶滅危惧種であるツシマヤマネコ、ヤンバルクイナからの精子採取および保存を重点的に行った。
その他動物のこれまでに採取した精子の一部を解析した結果、形態学的に正常であり、品質の良い状態であった。凍結保存した精子においても、品質評価を行った結果、一部の精子で融解後運動性を確認しており、良好な状態で保存されていることが確認された。
共同利用・共同研究の継続的な支援により、保存動物種の数は順調に増えており、保存配偶子の品質も極めて良好であることから配偶子バンクの構築は順調に実施されている。

2021-A-09
代表者 羅 暁霏
雄ツキノワグマにおける冬眠中の体温および心拍数の変化ならびに内分泌の調節機序の解明

羅 暁霏(北海道大学獣医学院)

目的:ツキノワグマは、草食性に偏った雑食性であり、その食性により冬期に冬眠をするという適応機構を獲得した。冬眠中は完全な絶食状態となるが、ユニークな生理・代謝機構により中途覚醒することなく眠り続けることができる。冬眠からの覚醒には環境要因と体内要因が関与するが、とくに雄では性腺の活動が覚醒要因の一つになっている。近年、地球温暖化の影響で冬眠期間の短縮傾向が各地で報告されており、冬眠覚醒時期についても変化しているかもしれない。本研究では、雄ツキノワグマにおける冬眠中の性腺、副腎および甲状腺機能の調節機序に焦点を当て、冬眠前期(過食期)、冬眠後半期(精子形成再開期・絶食期)および活動期(交尾期)の脳下垂体ホルモン(FSH、ACTHおよびTSH)濃度と性腺(テストステロン)、副腎(コルチゾール)および甲状腺ホルモン(チロキシン・トリヨードチロニン)濃度を比較する。それによって、脳下垂体-性腺軸、脳下垂体-副腎軸および脳下垂体-甲状腺軸の機能変化を比較検討する。さらに、性腺の活動と冬眠覚醒時期との関連について考察する。
内容:北秋田市阿仁町にあるマタギの里阿仁クマ牧場で飼育されている成獣雄および去勢雄ツキノワグマ(Ursus thibetanus)より血液を採取し、遠心分離により得られた血清を凍結保存した。血清は、冬眠前期(11月)、冬眠期(3月)および活動期(6月)の3期に得られた。これまでに、血清テストステロンおよびコルチゾール濃度を北海道大学大学院獣医学研究院にて高速液体クロマトグラフィにより測定を行った。今回新たに愛媛大学・野見山准教授との共同研究により、血清甲状腺ホルモン(チロキシン:T4、トリヨードチロニン:T3)濃度測定を行った。
成果:これまでに、成獣雄の血清テストステロン濃度は、冬眠前期(非交尾期)の11月には低レベルであったのが、冬眠期(精子形成再開期)の3月より増加が始まり、交尾期の6月に高値を示した。去勢雄の血清テストステロン濃度は、すべて基底値を示した。成獣雄および去勢雄の血清コルチゾール濃度は、11月と6月に比べて3月に低下する傾向がみられたが、暦月間で有意差はなかった。今回新たに測定した血清T4濃度は、3月および6月に比べて11月に低下する傾向がみられた。一方血清T3濃度は、暦月間で大きな変化がみられなかった(現在詳細を解析中)。以上の結果より、性腺での活動と副腎・甲状腺での活動は連動することなく各々別の調節機序によって営まれていることが示唆される。

図⒈ ツキノワグマにおける非交尾期(11月)、精子形成再開期(3月)と交尾期(6月)のT4濃度変化

図⒉ ツキノワグマにおける非交尾期(11月)、精子形成再開期(3月)と交尾期(6月)のT3濃度変化

2021-A-10
代表者 木村 嘉孝
テナガザルにおける避妊ワクチン接種後の糞中性ホルモン動態の調査

木村嘉孝(公益財団法人宇部市常盤動物園)

動物園において、飼養動物を継続的に飼養していくため、計画的な繁殖を実施していく必要があり、その中で繁殖制限を用いた繁殖管理が重要とされている。現在、日本の動物園における繁殖制限方法はホルモン剤による避妊(インプラント、ピル)、雌雄分離、去勢が主に行われているが、ホルモン剤による避妊は、性ホルモンにより性周期を強制的にコントロールするため、薬品の除去、投与停止後の性周期回復が不確実である。また、雌雄分離については飼養施設の確保が必要であり、去勢については、確実に繁殖制限が実行される一方、繁殖再現性が完全に失われてしまう問題点もある。近年、北米では、ブタ透明帯ワクチン(porcine zona pellucida:pZP)による繁殖制限が霊長類で行われている。このワクチンは雌の卵子の透明帯に作用し、受精ができない状態にすることで妊娠を防ぐワクチンで、一度の接種で効果が数年間持続すると言われており、外的ホルモンによる性周期のコントールではないため、繁殖制限実施期間中においても性周期は機能し、繁殖制限解除後の早期の妊娠も期待できる。しかし、テナガザルにおける使用事例がないため、試験研究目的でpZPを導入し、妊娠制限が必要な2頭のテナガザルにpZPを接種し繁殖制限中における糞中性ホルモンの動態を調査した。
 pZP接種3週間前から接種日までと接種4~6ヶ月後の2020年9月~2021年3月の間に、概ね2日に1回糞サンプルを採取、凍結保存を行い、2021年10月に糞中プロゲステロン濃度を測定した。
 測定の結果、2頭のテナガザルの糞中プロゲステロンホルモンは0.16㎍/g~2.19㎍/gで推移した。テナガザルの糞中プロゲステロン濃度は、1周期約21日で、ピーク時は10㎍/g(5-P-3OH)程度との報告があるが、今回測定された値は最大で2.19㎍/gと低く推移していることから、2頭のシロテテナガザルにおいて性周期が正常に機能していない可能性が考えられた。

2021-A-11
代表者 中川大輔
コロナ禍による「ふれあい」中止がテンジクネズミおよびヤギに与えた影響について

中川大輔1、山梨裕美1、三家詩織1、戸澤あきつ2、林英明3、高橋葵1
1京都市動物園、2帝京科学大学、3酪農学園大学

京都市動物園では,テンジクネズミやヤギと触れ合える「ふれあい」が1955年から行われてきた。しかし2020年度はコロナ禍による休園や感染症対策のため,「ふれあい」が中止された。現在,当園では動物福祉に配慮するため,「ふれあい」の見直しを行っており,ストレス評価のひとつとして,「ふれあい」中止により治療回数や内容がどのように変化したか,コロナ禍前(2019年)およびコロナ禍中(2020年)の診療記録を比較することとした。期間は各年「ふれあい」繁忙期の4月1日~9月30日とした。テンジクネズミは2019年に「ふれあい」を行っていた38頭を対象とした。2020年の対象個体は2019年と同一だが,8頭が死亡していたため,30頭となった。ヤギは2019年に「ふれあい」を行っていた6頭を対象とした。削蹄などの定期診療や寄生虫などの予防診療は除外した。結果として,テンジクネズミの診療件数は2019年が72件,2020年が38件となり,有意に減少した(x^2= 4.088,p = 0.043)。病気別では肺炎など呼吸器の診療件数が,2019年は19件,2020年は0件となり,有意に減少した(x^2= 15.000,p = 0.0001)。群としての診療個体数は2019年が14頭,2020年が9頭となり,差がなかった(x^2= 0.351,p = 0.554)。ヤギの診療回数は2019年が24回,2020年が27回となり,差がなかった(x^2= 0.176,p = 0.674)。群としての診療個体数は2019年,2020年ともに5頭となり,差がなかった。以上の結果から,テンジクネズミとヤギでは「ふれあい」による影響が異なる可能性があると考えられた。

「ふれあい」の様子

2021-A-12
代表者 大槻優喜
北海道東部太平洋沿岸における底刺網への漁業被害発生機構の解明

大槻優喜(北海道大学院環境科学院生物圏科学専攻水圏生物学コース)、三谷曜子(京都大学野生動物研究センター)

釧路周辺海域では,近年11月頃に行われるババガレイ漁の刺し網が破られてしまうという漁業被害が報告されるようになった. 漁場周辺では漁業者によりシャチが目撃されていたが,漁業被害を起こすのがシャチであるという確証は得られていない. そこで本研究では,受動音響モニタリング手法を用いて,シャチが採餌等に用いるクリックスと,シャチ特有の鳴音であるコールを記録することで,漁網周辺でのシャチの来遊行動について調査を行った.
2021年11,12月に, 釧路町昆布森沖にて計3回の録音調査を行った.音響記録計はA-tag(マリーンマイクロテクノロジー社製,日本)とSound Trap ST300 (Ocean Instruments製,ニュージーランド)を2台1組で, 漁網に設置した. 11月に行った1回の調査では38時間分,12月に行った2回の調査では114時間分のデータが得られた.
録音結果は,A-tagにおいては,Igor pro (Wave Metrics社)を用いて高周波音を可視化することでクリックスと思われる音を,Sound Trap ST300ではAdobe Audition 2021(Adobe Inc.)によりコールをスペクトル表示し,目視で鳴音探索を行った.全ての調査回においてシャチのクリックスと思われる音、そしてコールが確認出来た。そこでコールについて,30分ごとに,コールの有無からシャチの有無を判断した.そして録音期間に対し,各時間で何%の確率でコールが入っているか検証を行った.また鳴音の持続時間についても30分を1セットとし,計測した.計3回の調査で152時間の録音を行い,そのうち94時間(61.8%)でコールを確認出来た.またコールの記録確率は,深夜が低いことが判明した.加えて持続時間については、30分や1時間程度が多かったが、6時間以上にわたって記録されることもあった.また全調査においてババガレイへの漁業被害が確認されたことから,本被害にシャチが関与する可能性が高いと考えられる.今後は更なるデータ収集に加え,これまでに確認されたコールとの比較を行うことで,来遊群れの推定を試みたい.

図1.スペクトログラム表記したコール 縦軸に周波数(kHz),横軸に時間を示した。記録されたコールは,Adobe Audition 2021を用いることでこの図のように目視で確認出来る。 図2.30分ごとの各時間における鳴音記録割合 縦軸に鳴音の記録割合,横軸に記録された時間帯を示した.30分を1セットとし,その時間内に1回以上でもコールが確認された場合,記録ありとしている.23:30~翌日4:00頃にかけては記録割合が低いことが分かる. 図3.鳴音の連続時間の頻度  縦軸に頻度,横軸に連続時間を示した.こちらも30分を1セットとし,その時間内に1回以上でもコールが確認された場合に記録ありとしたうえで,何セット記録ありが続くかを示した.30分~1時間が多い中で,6時間以上の長期来遊も確認出来る.

2021-A-13
代表者 西岡佑一郎
四国におけるハタネズミの絶滅時期の特定

西岡佑一郎(ふじのくに地球環境史ミュージアム)、 日下宗一郎(東海大学海洋学部)

 四国におけるハタネズミ(Microtus montebelli)の絶滅要因とその時期を解明することを目的に、高知県の第四紀堆積物を対象に化石の発掘調査を実施した。高知県佐川町に位置する穴岩の穴遺跡からはヒトを含む完新世の哺乳類遺骸群集が発見されている。本研究では、先行研究で縄文時代早期(約9000年前)の遺物を出土した洞内奥部1地点と、同様の遺骸群集を含む洞口の堆積層を掘削し、層序区分された堆積物を計300 kg採取した。当初計画では、先行研究(2010年まで)の発掘層準よりも下位の堆積層を掘削する予定であったが、産地の経年変化により表層に新しい土砂が再堆積していたため、これらを除去する作業も行った。
 採取した堆積物は4 mm目と0.5 mm目のふるいで精密に水洗し、ふるい上の残さを乾燥させた後、その中から動物遺骸及び人工遺物(石器剥片)を回収した。洞内奥部で採取した堆積物は粘質が高く、これまでヒトを含む多くの哺乳類遺骸が出土した状況とは大きく異なり、動物遺骸がほとんど含まれていなかった。この特徴は縄文時代よりも古い層準(更新世)である可能性が高く、今後、放射性炭素年代測定を実施する予定である。洞口の堆積層からは、予備調査によってイノシシの遺骸のみが確認されていたが、本調査により齧歯類(ネズミ科及びミズハタネズミ亜科)が多く含まれることが明らかになった。現在までに分析処理を終えた堆積物中からはハタネズミの遺骸は発見されていない。今後、未処理の堆積物から全ての動物遺骸を回収し、齧歯類遺骸の同定と臼歯の形態分析を進めてハタネズミの有無を確認していくとともに、遺骸の絶対年代を測定してハタネズミの絶滅について考察する。

図1:穴岩の穴遺跡洞口の発掘地点

図2:ふるいを用いた水洗作業

2021-A-14
代表者 小山偲歩
育雛期のオオミズナギドリの採餌行動、酸化ストレスおよび海洋環境の関係解明

小山偲歩(名古屋大学大学院環境学研究科)

本研究では、野生の海鳥にとって生理的負荷となる行動を解明するとともに、年による環境の違いが海鳥に与える影響を明らかにすることを目的に研究を行った。本年度は新潟県粟島で繁殖しているオオミズナギドリ19個体に対して、行動記録のためのGPS・加速度データロガー(Axy-Trek, TechnoSmArst, Italy 26g)の装着および酸化ストレス定量化のための採血を行った。野外調査期間中はほぼ毎晩繁殖地に赴き、雛への給餌のために帰巣している親鳥を素手で捕獲した。体重計測および採血を行い、止血が完了したのを確認した後、防水テープでロガーを装着した。採血は下肢静脈より針とシリンジを用いて行った。採血前に70%エタノールで消毒を行い、採血後は乾綿で速やかに圧迫止血をした。採血量は行動や繁殖への影響が極めて小さい1 ml 以下かつ体重の1 %以下に留めた。また、採血による行動への影響を評価するために、
酸化ストレス(酸化度および抗酸化力)は、Free Carrio Duo (Wismerll)により計測し、酸化度を疲労度の指標、抗酸化力を疲労からの回復力の指標として用いた。ロガー装着時からロガー回収時の疲労度の変化量と、ロガーで記録した行動の関係から、オオミズナギドリにとって負担となる行動が何かを検証した。また、回復力は餌から得られるため、オオミズナギドリ個体群の抗酸化力はその年の餌環境を反映していると期待される。この仮説を検証するために、2018年から蓄積している抗酸化力と海洋環境の関係を検証した。

新潟県粟島のオオミズナギドリ©小山偲歩

2021-A-15
代表者 崎山智樹
エゾナキウサギの糞を用いた遺伝子分析の可能性

崎山智樹、 Jorge GARCIA MOLINOS(北海道大学北極域研究センター)

エゾナキウサギは気候変動下における脆弱性が懸念されている。しかし、岩塊堆積地に生息する本種は直接観察や捕獲が困難であるため、個体群の生態調査が進んでいない。本研究では、本種の糞を用いた遺伝子分析の可能性に着目し、糞探索の効率の検証および糞からのDNA抽出手順の検討を行った。糞の探索調査は、2021年6-10月に北海道の大雪山系とその周縁部において実施した。その結果、12地点から合計193個の糞を発見し採取した。調査地点ごとの採取効率は16.5 個/時間であり、岩塊上の植生の有無を考慮すると、採取効率は植生無し地点で17.4 個/時間、植生有り地点で11.7 個/時間であった。糞の発見時には糞の湿り気、色、粘着質の有無を考慮することで新鮮度を評価したが、植生有り地点では新鮮な糞が少なかった。これらの結果から、糞を用いた調査を行う上では、植生無し地点が位置する高標高帯がより適していることが考えられる。糞を用いたDNA抽出では、不純物が抽出を阻害することが予想されたため、糞を潰す手順の有無が抽出物のDNAの濃度と純度に与える影響を調べた。その結果、糞を潰した時の方がDNAの濃度と純度が高い傾向が見られた。この結果から、抽出における不純物による阻害の影響は小さいと考えられる。一方で、得られた純度は理想値よりも低かったため、今後はタンパク質の除去条件を改善する必要がある。また、DNAの濃度と純度において、糞の新鮮度との相関は確認されなかった。古い糞でも本種のDNAや、本種が食した植物や微細動物のDNAも残存していることが推測されるため、今後は新鮮度とPCR産物の関係性を調べる必要がある。今回は開発段階のプライマーを用いてマイクロサテライトのPCRを試みたが、増幅が確認できなかった。筋肉や体毛などの糞よりも良質なDNAが含まれるサンプルを用いてプライマーの適合性を確認することが課題である。

2021-A-16
代表者 下鶴倫人
ヒグマ糞由来DNAを用いたメチル化解析による新規年齢推定法の確立

下鶴倫人(北海道大学大学院獣医学研究院 野生動物学教室)、中村汐里(北海道大学獣医学部共同獣医学課程 野生動物学教室)、坪田 敏男(北海道大学大学院獣医学研究院 野生動物学教室)

野生動物の研究において、個体の年齢や集団の年齢構成を知ることは極めて重要である。ヒグマの年齢推定には、従来歯に形成される年輪を数える方法が主に用いられてきた。しかし、この手法は侵襲的であり、対象は死亡個体や生体捕獲した個体に限られるという課題が存在する。一方近年、DNAメチル化率が加齢に伴い変化する領域があることが報告され、一部の動物で年齢推定に用いられている。そこで本研究では、非侵襲的に得ることができる糞由来DNAを用いて、DNAメチル化を指標とした新規年齢推定手法を確立することを目的とした。
材料は、年齢が明らかであるエゾヒグマを対象とし、のぼりべつクマ牧場で飼育されている個体と、知床国立公園内のルシャ地区に生息する野生個体から、血液、糞サンプルを得た。
初めに、飼育個体の血液由来DNAを用いて、イヌやイエネコなどにおける先行研究を参考に加齢変化メチル化領域として11の候補領域を定め、パイロシーケンスによるメチル化率解析のための実験手技を確立した。
次に、血液由来DNAにおけるメチル化率と年齢との有意な相関が認められた1領域について、糞DNAを用いて解析を実施した。その結果、PCRにおいて良好な増幅が認められたサンプルについてはメチル化率と年齢との間に緩い相関傾向が認められた。しかしながら、一部の糞由来DNAサンプルでは安定した結果が得られず、至適PCR条件を検討する必要があると考えられた。今後は、サンプル数を増やすとともに、他の候補領域についても解析を行う予定である。

加齢変化メチル化領域の1つにおける、年齢(X軸、歳)と糞DNAメチル化率(Y軸、%)の関係。 左上:排糞するヒグマの様子。©下鶴倫人

2021-A-17
代表者 小澤賢一
アムールヒョウの行動学的保定下用手採精による精液性状の基礎研究

小澤賢一1、東美緒1、北濱健太1、大塚亮真2、金子武人3、木下こづえ2
1東武動物公園、2京都大学 野生動物研究センター、3岩手大学 理工学部

絶滅の危機に瀕するアムールヒョウ(Panthera pardus amurensis)は周年繁殖型動物であるが,雄の精子形成の周期性についての詳細は調べられていない.また,多くのネコ科動物において,雌の繁殖整理に関する研究例は多くみられるが,雄については少なく,特に精子形成に関しては不明な点が多い.東武動物公園では飼育している雄のアムールヒョウから行動学的保定下での用手採精に成功したため,その精液性状について報告する.
 対象動物はアムールヒョウの雄,17歳齢,国際血統登録番号は618で,2017年にベルギーから搬入した.陰茎を刺激することにより射精させ採材した.採取した精液は精液量(µL),pH,精子濃度(×10⁶/mL),総精子数(×10⁶),生存率(%),奇形率(%)を記録した.また,採精直前に外側尾静脈から採血し,翌日には採糞およびカテーテル採尿を行った.採血,採精,採糞,採尿は約2週間ごとに実施し,採取した血液,糞,尿は酵素免疫測定法によりそれぞれ血清中テストステロン(T),糞中テストステロン(fT),尿中テストステロン(uT)濃度測定を行った.uTは尿中クレアチニンで補正を行った.
 採取した精液(n=26)において、精液量は231.54±91.77 µL,pHは8.04±0.20,精子濃度は266.82±147.02 ×10⁶/mL,総精子数は56.95±28.92 ×10⁶,生存率は59.61±11.07 %,奇形率は47.36±6.25 %であった.T濃度は1.713±0.823 ng/mL(n=23),fTは560.533±637.847 ng/g(n=20),uTは1.418±0.374 ng/Cr-mg(n=20)であった.
 大型ネコ科の行動学的保定下での用手採精は安定して実施でき,精液性状は採精者の手技が安定してからは概ね一定の数値を得ることが可能であった.精液の乾燥等を防止するため採精は短時間での実施としていたが,陰茎刺激の継続により射精を繰り返す様子も複数回認めた.そのため精液量は採精方法,手技の改善によって増量する可能性が示唆された.また精子濃度の季節性変化やT,fT,uTとの明確な連動は認められなかった.各テストステロン濃度ではTとuTとの相関は認められたが,fTとの相関は認められなかった.

左:採血の様子、 右:勃起したアムールヒョウの陰茎

左:精子の顕微鏡画像、 右:精子のニグロシン・エオジン染色画像

各種ホルモン濃度と精子平均濃度

2021-A-20
代表者 小高 歩
利尻島におけるウミネコの巣に含まれたプラスチックゴミが繁殖成功率に与える影響

小高 歩(早稲田大学人間科学学術院)

 海洋や沿岸域におけるプラスチックゴミによる汚染は近年注目を集めている。海鳥は巣材としてプラスチックゴミを利用することがある。こうしたゴミは親鳥や雛に絡み死亡させるなどの負の影響をもたらす一方、巣を頑丈にする。
 国内で繁殖するウミネコLarus crassirostrisは近年個体数が急減しており、北海道レッドリストにおいて準絶滅危惧種に指定されている。本種は巣にゴミを持ち込むが、巣に持ち込まれたゴミが本種の親鳥や雛に対して正負両面においてどのような影響を及ぼすのかはわかっていない。
 鳥類は抱卵時の卵の温度や湿度が孵化率に影響することが知られている。巣の保温・保湿機能は巣の形状や材料によって変化することが知られている。プラスチックゴミは本種が利用する枯れ草などの天然の巣材とは異なり、またプラスチックゴミが巣に混入することにより巣の形状が変化してしまうことが考えられる。このことより、プラスチックゴミが巣に混入することは巣を適切な温度や湿度に保つことを妨げている可能性がある。しかし、巣材としてプラスチックゴミを利用することによって巣の保温・保湿機能に変化があるのかはわかっていない。巣が適切な温度・湿度に保たれなければ孵化率に負の影響があると予測する。
 本研究では巣材として持ち込まれたプラスチックゴミは親鳥や雛の生残を低下させるか、またウミネコの巣に含まれているゴミの量によって巣の保温・保湿機能はどれほど変化するのかを明らかにすることを目的とする。
 調査は2021年4月〜8月まで行った。巣に含まれたプラスチックゴミによりウミネコの雛が死亡した事例が確認された。プラスチックゴミの含有量は地域差が見られた。地域差が何によって引き起こされているかを今後考察していく。巣内温度については、巣材以外の影響も考えられたため今後条件を最大限揃えての調査をし、巣材による影響のみを検証を予定している。

2021-A-21
代表者 柏木伸幸
ハンドウイルカの簡便な冷凍、冷蔵精液保存技術の確立

柏木伸幸(かごしま水族館)、大塚美加(かごしま水族館)、濵野剛久(かごしま水族館)、山本桂子(オキナワマリンリサーチセンター)、大野佳(名古屋港水族館)

 鯨類の人工授精(AI)技術の向上と普及に向けて、簡易的な手法による精液の冷凍保存法の開発とその保存精液による受精を確認することを目的としてAIを試みた。2021年5月12日から13日、2021年6月15日、オキナワマリンリサーチセンター(以下OMRC)と当館のメス個体2頭(OMRC1頭、かごしま水族館1頭)において合計4回のAI(2頭における1回の排卵直前あるいは直後にそれぞれ2回精液を注入)を実施した。AIには2019年12月~2020年6月8日にかけて当館のオス個体から採取し、液体窒素容器を使用して-192℃で冷凍保存した精液を使用した。OMRCでのAIには当館で液体窒素容器にて-192℃で保存後、ドライアイスを使用して-80℃で輸送し、輸送後に再度液体窒素容器にて-192℃に保存した精液を使用した。各AIで注入した精液の生残率は69.20~82.50%(平均75.53%)、総生残精子数は49.04~70.41億個(平均62.18億個)であった。AIを実施した2頭のうち、OMRCの個体の受胎が確認され現在も妊娠状態を維持している。本方法で冷凍保存した精液を使用してのAIで受精が確認できたことにより、本冷凍保存液の有用性が初めて確認された。また、-80℃での輸送後の受胎により、数日であればー80℃に温度を上げても受胎に問題ない状態が保てることが示唆され、冷凍精液のより簡便な輸送が可能なことも示唆された。
 昨年2020年3月から2020年10月にOMRCと名古屋港水族館で行った冷蔵保存精液を使用したAIにより受胎した3頭のメス個体(OMRC2頭、名古屋港水族館1頭)が2021年5月~2022年10月にそれぞれ出産した。3頭とも出産後も順調に生育中であり、液状保存精液の有用性をさらに証明する結果となった。

2021-A-22
代表者 杉浦恭子
準絶滅危惧種オオセグロカモメの人為起源の餌の利用が繫殖成績に与える影響

杉浦恭子(早稲田大学人間科学研究科)

現在、生息地の喪失や劣化、乱獲、漁業での混獲、汚染などの人為的撹乱による海鳥への影響が大きな問題となっている。全海鳥種の約半数が個体数減少傾向にあり、そのうち3割近くが国際自然保護連合のレッドリストに記載され、保全が続けられているがその個体数は回復していない。減少する生物資源の保全のためには、減少要因を特定し適切に管理することが不可欠である。国内で最も生息数が多いとされるオオセグロカモメ Larus schistisagus は、ここ20年ほどでその生息数を約70%も急減させている。本種は漁業廃棄物などの人為起源餌をよく利用するが、人為起源餌の栄養価は天然起源餌に比べて低い場合が多いため、人為起源餌への強い依存は本種のエネルギー獲得効率や繁殖成績の低下を招き、その結果個体数減少の一因になり得る。しかし、本種の人為起源餌の利用実態、エネルギー獲得効率、またその繁殖成績や個体の生残への影響を評価した研究はこれまで十分に行われていない。
本研究では、北海道利尻島において1) オオセグロカモメはどれほど人為起源餌を利用するか、2) 人為起源餌の利用は繁殖成績に影響するか、3) 人為起源餌を利用した時の個体のエネルギー獲得効率は天然起源餌を利用した時と異なるのか、の3点を明らかにする。
調査は2021年4月〜8月まで行った。育雛期間中、本種は自然起源餌よりも人為起源餌を高い割合で給餌した。出巣から帰巣までの時間は、天然起源餌よりも人為起源餌を採餌した時に長くなった。人為起源餌は自然起源餌よりも単位重量当たりの栄養価が低かった。以上より、給餌効率は自然起源餌よりも人為起源餌を利用した時に低いため、人為起源餌への強い依存は繁殖成績の低下を招く可能性があった。本年度の調査では人為起源餌の利用が本種の繁殖成績にどの程度影響を与えたのか定量的に評価できなかったため、今後さらにデータ数を増やしたり、飼育実験を行うことを予定している。

2021-A-23
代表者 野本繭子
野生マルミミゾウの糞分析による食物選択の性差・年齢差の解明

野本繭子(京都大学理学研究科)

本研究はアフリカ熱帯林に生息する野生マルミミゾウ(Loxodonta cyclotis)の採食内容に性差や年齢差があるのかを明らかにすることを目的として行った。本年度は、これまで継続的に行わせて頂いてきた共同利用研究で蓄積したDNAデータを用いた分析に加え、2019年11月〜2020年3月にガボン共和国にて採集したDNAサンプルの輸入と性判別を行う計画であった。しかし、サンプルの輸入手続きに難航し、当期間内に分析を終えることができなかった。こちらについては早急に分析を進め、結果をご報告したい。これまでに性判別が完了しているデータを用いた分析の結果、マルミミゾウの糞内容物のうち、葉と木質は大きい糞ほど含まれる体積割合が高く、草本は小さい糞ほど含まれる体積割合が高かった。これらから採食内容は年齢(糞サイズと関連)の影響を受けていることが示唆された。しかし、内容物の体積割合には性別の影響は見られなかった。この結果について3月に行われた共同利用研究会で報告した。今後、果実の種数など体積割合以外の項目も検討を進める。

2021-A-24
代表者 杉田理奈
小型可視カメラを用いたイルカの視線計測に関する研究

杉田理奈(三重大院・生物資源)、山本知里(三重大院・生物資源・鯨研セ)、柏木伸幸、大塚美加、濱野剛久(かごしま水族館)、森阪匡通(三重大院・生物資源・鯨研セ)、吉岡基(三重大院・生物資源)

解剖学・生理学的研究により,多くのイルカの種において,視野は広く,眼球には網膜中心野が2つ存在し,左右の目が独立に動くとされている.また,視神経が完全交叉しており,両眼視差による立体視はできないと考えられている.このように,イルカの目はヒトの目と構造が大きく異なり,ヒトとは異なる環世界を持つと予想されるが,生きているイルカの目の動きに関する研究は少ない.本研究では,最も基本的な眼球運動の1つである追跡眼球運動を調べ,イルカが実際にどのように物体を見ているかを明らかすることを目的とした.
まず,イルカにおいても追跡眼球運動が起こるか,カメラの映像から眼球の動きを分析できるかを調べた.かごしま水族館の飼育ハンドウイルカ1頭(オトナメス,体長279cm)を対象に,視標を体の周囲で水平方向に動かし,その間,被験体の目を被験体に装着したカメラで撮影した.撮影された映像から,追跡眼球運動が起こることが確認され,この方法で目の動きが分析可能であると判断した.
次に,撮影をより安定化させ,高精度な追跡眼球運動を記録するため,カメラ2台を被験体の左右約1m離れた場所に設置し,得られた映像から追跡眼球運動を分析した.その結果,視標が体の後方から前方に動く場合,生理学的安静位と考えられる位置に目が留まる傾向が認められた.これは,海での生活において,イルカからは物体の多くが前方から後方に動いて見えるため,これに目が適応した可能性を示唆している.また,両眼で見える範囲は最大50°と推定されたが,物体を両眼同時に追跡する傾向は認められなかった.したがって,両眼視差による立体視は行っていないと考えられる.そして,実際に左右の目を独立に動かす様子が確認できたことから,イルカは左右独立に眼球を動かすことに特化しており,前方の距離推定を,立体視ではなくエコーロケーションで行っていると考えられた.

 

2021-A-25
代表者 荒蒔 祐輔
樹葉給餌における大枝(branch)および小枝(twig)の飼料価値評価によるリユース促進への取り組み

荒蒔祐輔(京都市動物園 種の保存展示課)、八代田真人(岐阜大学応用生物科学部動物栄養学研究室)、星野智(岐阜大学大学院連合農学研究科)

動物園において飼育される草食動物には主に乾牧草、青刈牧草およびペレットなどが給餌されてきたが、近年キリンに代表されるようなブラウザーを中心に野生下での食性に合わせた枝葉の給餌が増加している。枝葉の給餌は慢性的な栄養欠乏や疾病予防への効果に加え、摂食時間の増加など動物福祉的観点からも有用な飼料だと考えられている。ただし動物により葉、樹皮、枝など摂食する部位が異なることが知られている。そのため対象動物の栄養管理を行う上では葉だけでなく枝も含めた栄養管理が本来必要となるが、木質部分の栄養分析例は乏しく、家畜においては単なる繊維源として評価されてきた。また葉食が中心の動物では不可食部分である枝は廃棄されており、残った枝を他の動物の飼料としてリユースすることができれば、限りある資源を有効活用することにも繋がる。
そこで本研究では「葉」「小枝」「大枝」の一般栄養分析を行うことで枝葉全体の栄養組成を把握し、枝葉の飼料価値を明らかにすることを目的とした。京都市動物園で主に利用されているシラカシおよびケヤキの2樹種を対象とし、採取する大枝は樹木の主軸から分枝した第一次の枝、小枝は分枝を繰り返してできる末端の数次の枝とした。
 シラカシにおける枝葉内の重量比率(原物)は葉(28%),小枝(30%)および大枝(42%)で,ケヤキでは葉(29%),小枝(26%)および大枝(45%)であった。また各部位に含まれる成分含量(表1)から、飼料としての枝葉の栄養素は主に葉に多く含まれるが、小枝や大枝も動物種によっては蛋白源または繊維源として価値が見出せる結果となった。今後は季節による変化および他の樹種での分析を進め、動物園動物における枝葉の飼料価値を評価していく。
なお本研究成果は2021年度野生動物栄養研究会(福岡開催)および野生動物研究センター共同利用研究会2021(京都開催)にて口頭発表を行った。

(BP:結合蛋白、NDF:中性デタージェント繊維、ADF:酸性デタージェント繊維、NFC:非繊維性炭水化物、Ca:カルシウム、P:リン)

キリンと枝葉

ゾウと枝葉

2021-A-26
代表者 山田研祐
飼育ハンドウイルカにおけるメタボリックシンドローム緩和 治療に関する調査

山田 研祐(オリックス水族館株式会社 京都水族館)

過去に血液検査にてインスリン(食後2時間値)、グルコース(食後2時間値)、中性脂肪を測定しメタボリックシンドロームであると診断した3頭のハンドウイルカにおいて同様の検査を実施したところ、現在でもその傾向があることを確認した。また、3頭のハンドウイルカにおけるボディブラバー指数Body Blubber Index(以下、BBI)は、良好とされる値を上回っており、理想とされる体型より大きいことが示唆された。
京都水族館で餌として使用している8魚種及びサンプルとして入手した1魚種におけるヘプタデカン酸(以下、C17:0)の含有量を計測したところ、4魚種で含有が確認された。
血液状態とBBIから選出した対象個体1頭において、C17:0の推奨摂取量を基準とした給餌内容の変更を行い、メタボリックシンドローム緩和策を開始した。
先行研究と比較して短い期間ながらも、開始から約2ヵ月で血中インスリン値の基準値以下への低下が見られ、約2ヵ月半で血中グルコース値(食後2時間)の基準値以下への低下が確認された。BBIに関して、緩和策開始前後で大きな変化は見られなかった。

図1:メタボリックシンドローム診断結果(2019, 緩和策実施前)

図2:BBI計測結果(緩和策実施前)

図3:魚種別C17:0含有量

図4:メタボリックシンドローム診断結果(緩和策実施中)

図5:BBI計測結果(緩和策実施中)

2021-A-27
代表者 川出比香里
クロシロエリマキキツネザルの飼料内容の検討を目的とした 栄養学的研究II

川出比香里(宇部市ときわ動物園)、林田まき(東京農業大学)、佐藤果奈(東京農業大学)

クロシロエリマキキツネザルは、食性の約80%を果実に依存しており、動物園では市販の栽培果実を主とした給餌内容が一般的である。近年、野生果実との栄養価の違いから、糖質を抑え繊維質を多く含む給餌内容が推奨されるようになったものの、消化吸収機能に関する研究が少なく、給餌内容を変更するには栄養学的根拠が不足している。昨年度の研究で、宇部市ときわ動物園で飼育する4頭において、現在の給餌内容(バナナ、リンゴ、キウイ、パイナップル、オレンジ、サツマイモ、ニンジン、鶏卵、ペレットの9種類)における乾物(DM)の消化率(75.2%)と代謝可能エネルギー(ME)の含量(288 kcal/100gDM)が明らかになっている。MEの摂取量(348 kcal/日)は基礎代謝量(174 kcal/日)の2倍あり、キツネザルのME要求量(基礎代謝量の1.35倍)(NRC,2003)より多かった。
コロナ禍で全ての分析が終わらず、バナナを増やしてサツマイモを除いたB区とサツマイモを増やしてバナナを除いたS区で飼育した際の糞の成分分析を今年度も継続した結果、バナナ、サツマイモのDM消化率とME含量がそれぞれ94.4%と262 kcal/100gDM、89.7%と250 kcal/100gDMと推定された。
今年度はパイナップルを増やしてキウイを除いたP区とキウイを増やしてパイナップルを除いたK区を設けた。DM消化率はP区およびK区でそれぞれ77.6および73.4%であり、キウイの皮が消化されないためK区で低かった。また、飼料中のME含量はそれぞれ300および279 kcal/100gDMであった。ME摂取量は基礎代謝量の2倍もあったが、体重の変動はなかった。
本研究では飼料成分摂取量の算出に日本食品標準成分表(文部科学省,2015)のデータを用いたため、算出された値が正確でない可能性がある。今後キウイの皮をはじめとする飼料の成分分析を行い、キウイとパイナップルの正確なDM消化率とME含量を推定する必要がある。

2021-A-28
代表者 大坂桃子
屋久島で農作物被害を起こしているニホンザルの分布・採食に関する生態学的研究

大坂桃子(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科)

 本研究では、①屋久島におけるニホンザルの農作物被害状況とその対策の実態、および、②被害をおこしているニホンザルの基本生態を明らかにすることを目的とし、2020年11月から2022年3月にかけてフィールド調査を行なった。
 ①農作物被害状況とその対策の実態については、屋久島町役場職員、各集落の区長、農家への半構造化インタビュー、および、各集落の電気柵点検を行った。そこで、集落ごとの被害状況、柑橘類栽培状況、個体数管理状況、電気柵の利用・管理状況を明らかにした。また、特に電気柵の利用・管理に焦点を当て、それを行なうのか/どの程度完全な形で行なうのかといった電気柵利用・管理にまつわる農家の選択は、被害量の減少という基準だけでなく、「(1)果樹園の特徴」「(2)柑橘類栽培の経済的意味づけ」「(3)農家の高齢化や後継者不足」「(4)ニホンザルによる農作物被害以外の課題との調整」といった地域の営農状況・経済状況等に関する幅広い文脈を反映した上で、総合的にある程度“最適な”ものになっている可能性を、環境社会学の視点から示した。
 ②被害をおこしているニホンザルの基本生態については、カメラトラップ調査(26台)、および、糞77個の内容物分析を行った。カメラトラップ調査ついては、1年間を通じたデータを回収し終えたところである。今後は、ニホンザルの遊動の季節性等について解析を行なっていく予定である。糞内容物分析からは、里のヤクシマザルの食性の特徴として、農作物である柑橘類、および、リュウキュウエノキの利用が挙げられた。今後さらに詳細な解析を行い、里のヤクシマザルの採食戦略について明らかにしていきたい。

自動撮影カメラに写ったタンカンを果樹園から持ち去るニホンザル

2021-A-29
代表者 勝島日向子
化学感覚に注目した飼育イルカの授乳行動の観察

勝島日向子(北海道大学 大学院環境科学院)、早川卓志(北海道大学 地球環境科学研究院)

味覚や嗅覚(化学感覚)が退化している鯨類において、脂肪味覚の利用可能性を検討するため、鯨類の中でも特に飼育数が多く、研究も盛んなハンドウイルカ(Tursiops truncatus)を対象に2つの実験をおこなった。なお、実験やサンプリングは全てかごしま水族館で実施した。一つ目は母乳中の脂肪酸組成のメタボローム解析で、脂肪味覚の刺激物質となる脂肪酸の組成を調べた。3個体の飼育イルカから、分娩後の複数の段階で採取された母乳を利用し、脂肪酸の経時変化をガスクロマトグラフィー質量分析法で調べた。その結果、母乳中には長鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸が含まれ、それぞれの脂肪酸の含有量は分娩後経過日数に応じて段階的に変化することが示唆された。二つ目は行動実験で、乳児を対象に母乳を味覚で識別できるかを行動レベルで調べた。乳児に二つの容器を提示し、片方には母乳、もう片方には母乳と同程度白濁しているが無味無臭の成分を凍らせたものを入れ、それぞれの容器に対する反応を調べた。呈味物質である母乳は、実験対象個体の乳児の母親を含む、飼育個体から採取したものを使用した。結果は現在解析中である。2つの研究から、イルカの乳児が母乳を識別する際に脂肪味覚を利用する可能性を検証する。今後は、分子実験により脂肪味覚が機能的かどうかを明らかにすることで、本テーマを行動と分子の両面から検討する。

実験の観察の様子 ©勝島 日向子

2021-A-30
代表者 中村あゆみ
国内飼育下レッサーパンダ(Ailurus fulgens)に給餌している野生竹の栄養評価

中村あゆみ(静岡市立日本平動物園)、星野智(岐阜大学大学大学院連合農学研究科)、髙橋勇太(静岡市立日本平動物園)、柿島安博(静岡市立日本平動物園)、八代田真人(岐阜大学応用生物科学部)

【背景・目的】日本平動物園で飼育されるレッサーパンダ(Ailurus fulgens)にはモウソウチク(Phyllostachys edulis)が給与されているが、栄養成分の報告例は少ない。そこで、モウソウチクの葉に含まれる栄養成分を季節ごとに分析し、レッサーパンダによる採食割合との関連性を評価した。
【材料・方法】レッサーパンダ4個体を対象とし、5~6月、8~9月、10~11月、2~3月の4期間それぞれで6~7回,モウソウチクの葉の採取と給与試験を行った。枝は採取箇所を3区分(竹稈上部・竹稈中部・竹稈下部)に分けて採材し、給餌開始3時間後までに各個体が採食した割合を目視で評価(給餌前後に撮影した枝葉の写真より複数人で評価)した。その後、給与試験で残した葉と、採食割合の評価結果をもとに別の枝から採食した葉と同様のものを採取して、栄養分析を行った。なお、5~6月にのみ出現し採食が確認されなかった新芽は、他の残した葉とは分けて採材・分析した。
【結果】4個体の竹稈に対する平均採食割合は、8~9月に低い値を、11~12月と2~3月に高い値を示し、特に竹稈下部においては、竹稈上部および竹稈中部よりも大きな季節変化が確認された(Fig 1)。栄養分析は、現在5~6月に採取した葉のみの分析が完了している。給餌開始3時間後までに採食した葉と残した葉ではいずれの採取箇所においても、粗タンパク質、中性デタージェント不溶性タンパク質、中性および酸性デタージェント繊維、酸性デタージェントリグニン、非繊維性炭水化物、粗脂肪、粗灰分、Ca、P、MgおよびK含量に大きな差はなかった(Table 1)。一方、新芽はいずれの採取箇所においても、他の2種の葉(採食した葉・残した葉)と比べて、中性および酸性デタージェント不溶性タンパク質、粗灰分およびCa含量が低く、PおよびK含量が高い傾向にあった(Table 1)。
【今後の展望】栄養分析をすべて完了させ、採取箇所ごとの成分の季節変化を比較するとともに、採食割合との関連性を評価する。

2021年度におけるレッサーパンダ(Ailurus fulgens)4頭のモウソウチク(Phyllostachys edulis)の葉の平均採食割合.

2021年5~6月に採取したモウソウチク(Phyllostachys edulis)の栄養成分.

2021-A-31
代表者 西川真理
屋久島の果樹園に現れるヒヨドリ個体数の予測モデルの検証

西川真理(東京大学)、持田浩治(京都大学)

ヒヨドリは農作物に食害をもたらすため、有害鳥獣に指定されており駆除の対象となっている。しかしながら、ヒヨドリは森林生態系において主要な種子散布者であることが知られており、安易な駆除は生態系に影響を及ぼす可能性がある。本研究の調査地である鹿児島県屋久島ではヒヨドリによる農作物(特に柑橘類)の食害が問題となっている。申請者らは、これまでに果樹園の多い南部集落と西部林道周辺でヒヨドリの個体数と液果の豊凶データを記録し、柑橘類への食害が始まる前の12月のデータから被害が発生する1月の集落でのヒヨドリ出現個体数を予測するモデルを構築した。本研究では、2021年12月に南部集落と西部林道周辺でヒヨドリのポイントセンサスと果実センサスを実施し、その結果を予測モデルに当てはめて2022年1月のヒヨドリ出現数を算出し、実際の出現数との対応を調べた。今後は、予測結果と2021年度における柑橘類の被害金額との関連を分析する予定である。

2021-A-32
代表者 後藤葉月
ユキヒョウの高山適応のゲノム基盤の解明

後藤葉月、早川卓志(北海道大学)

ゲノムの解析に関しては、84部位の組織が凍結保存されているが、優先順位をつけてRNA抽出を行うことにした。特に、高山適応に大きく関与していると考えられる眼球、肺、皮膚、毛、血液に目を付けた。眼球・皮膚・毛は紫外線防御機構が存在する可能性があるため、肺・血液は低酸素濃度に適応している可能性があると考え、選択した。
申請時現在において、右眼球の組織の解剖が終了した。凍結試料におけるRNAを安定させるRNAlaterICEを浸潤させ、角膜、網膜、虹彩、水晶体、強膜の5部位を分離し、RNA抽出ならびに網羅的RNAシークエンス(RNAseq)に供する準備を進めている。
行動調査に関しては、札幌市円山動物園から許可を得て、雌雄1個体ずつのユキヒョウの行動観察を行っている。高山に適応したユキヒョウが日本という低地に住むことで何らかの影響が出ると考えている。例えば、ユキヒョウは夏の呼吸頻度が他のネコ科動物よりも以上に速く、 1分間に100回以上の呼吸をすることもある。また、ネコ科動物にはほとんど見られないあえぎ呼吸も行っており、これはより多くの熱を放散させる必要があることに関係している。そこで、高山適応に関与していると考えられる温度調節機構に着目して、比較相手として円山動物園で飼育されている低地の熱帯地域由来であるライオン1個体と同時刻に、開園時間中1時間おきに呼吸頻度を計測した。その際、気温・湿度・風速・対象種の状態や行動なども観察した。週1回のペースで8月から観察を続けている。申請時現在の結果としては、ユキヒョウの呼吸頻度は基本的に同時刻のライオンよりも高いということ、夏になるとユキヒョウに呼吸頻度の大幅な上昇が見られること、ユキヒョウの方がライオンよりも呼吸頻度が激しく変化するという3点が分かった。また獣医学検診業務の機会で採取された血液や体毛の提供を受けて、遺伝子発現解析の準備を進めている。

体感温度約12度を超えるとユキヒョウの方が、12度以下だとライオンの方が呼吸頻度が高い。また、体感温度が20度を超えると、ユキヒョウの呼吸頻度がライオンよりも大幅に上昇することや、ユキヒョウの方がライオンよりも呼吸頻度が激しく変化することが分かった。(体感温度の式はNETの式を利用)

2021-B-01
代表者 栗原洋介
ニホンザルの昆虫食が枯死木分解にあたえる影響

栗原洋介(静岡大学農学部)

本研究の目的は、ニホンザルが枯死木分解にあたえるインパクトを定量することである。本年度は、屋久島・西部林道において主に枯死木分解実験の継続、ニホンザルの行動観察および昆虫群集の調査を行った。2019 年以降、屋久島・西部林道沿いに設置した枯死木調査プロット 12 箇所において、サル排除実験を継続している。対象の材を複数個に分割し、一方はそのまま放置、他方はサルが破壊できないようにネットで覆った。定期的に材の写真撮影を行い 3D モデルを作成することで、材の表面積・体積のデータを蓄積している。また、自動撮影カメラを用いて動物の訪問および枯死木とのコンタクトを調べている。サルはすべての材を訪問し、12 のうち 10 プロットでそのまま放置した材がサルによって大きく破壊された。また、サルに細片化された材はシカに踏まれやすくなることがわかった。くわえて、ニホンザルの行動観察および昆虫群集の調査を行った。サルがどんな枯死木を壊し、何を食べているのかを明らかにするために、識別されている 1 群を対象とし、個体追跡を行い、成獣個体の採食行動を記録した。また、枯死木のサイズ、腐朽タイプ、腐朽度、種名などを記録したうえで、材をくずし、内部や周辺に生息する昆虫の種と個体数を記録した。来年度以降も、同様の調査を継続して実施する予定である。

2021-B-02
代表者 半谷吾郎
屋久島のニホンザルの人口動態

半谷吾郎(京都大学霊長類研究所)

ニホンザルのような寿命の長い生物の人口動態を明らかにするには、長期にわたる継続調査が必要である。屋久島では、1970年代から海岸部で複数の群れの個体識別に基づく継続調査が行われている。その結果、群れの分裂・融合・消滅などの大きな社会変動が起きていることが明らかになった。屋久島は標高によってさまざまな生息環境があり、標高の高い地域に住んでいるニホンザルは、食性、活動時間配分、群れ間関係などの点で、海岸部のニホンザルとは大きく異なることが明らかになっている。しかしながら、上部域では研究の歴史が浅いため、長期にわたる人口変動・社会変動がどのように起こっているかは、明らかではない。本研究は、生息環境の異なる屋久島海岸部と上部域での人口変動・社会変動を長期にわたって比較し、個体数変動のメカニズムが、生息環境によってどのように異なるのかを明らかにすることを、最終的な目的とする。海岸部での継続調査は野生動物研究センターの杉浦らによって行われているので、申請者らは、上部域での群れの分布調査と、個体識別されたひとつの群れの個体数調査を、毎年行っている。本年度も、4月および3月に全頭が個体識別されたHR群の調査を行って今年の集団の構成を確定したほか、8月にボランティアを募って一斉調査を行い、その周辺地域の集団密度と群れの構成を調査した。

屋久島の野生ニホンザル。(c)半谷吾郎

2021-B-03
代表者 Lee Boyun
Infant’s active role and its development in formation of social relations in Japanese macaques

Lee Boyun (Graduate school of Science, Kyoto Univ)

I gave poster presentations at the 16th (Sep, 2021) and the 17th (Mar, 2022) International Symposium on Primatology and Wildlife Science. On the presentations, I mainly focused on how infants and their social partners choose each other. In particularly, I reported that females tend to selectively handle infants and that infants have asymmetric interactions with higher-ranking females and juveniles at the beginning of their lives. In Oct, 2021, I gave an interview on my research topic and fieldwork for a newpaper article with a Korean non-fiction writer.

© BOYUN LEE

2021-B-05
代表者 田伏良幸
社会的伝達に群れの凝集性が与える影響-休息場所に着目し て-

田伏良幸(京都大学)

社会的伝達にとって近距離での観察学習は重要と考えられ、社会的伝達には周辺個体数(凝集性)が重要な役割を果たしているはずである。そのため、文化行動の社会伝達を検討する際に周辺個体数の影響について調べる価値がある。集団を形成する種は、捕食者や採食環境に応じて凝集性が変化する。実際、捕食者のいないニホンザルでは、採食環境に応じて休息時の凝集性が変化することが示唆されている。しかし、捕食者や採食環境以外にも凝集性に及ぼす要因はあるはずである。その要因として体温調節がある。個体同士が寄り集まり、お互いの体を温めるサル団子は、凝集性と体温調節との関連を示す好例である。体温調節は、野生下では生存に大きく影響するため、 体温調節が凝集性に与える影響は大きいはずである。そのため、どのような場所で凝集性が高まり、その中でどのような社会交渉が行われているのかを解明することは、社会的伝達の研究に重要な示唆を与えうる。そこでまず、休息集団が形成される場所の特徴を明らかにする(目的1)。そして、体温調節に関わる行動(サル団子など)や休息場所の特徴(温度・面積)に応じて休息時の凝集性に変化が見られるのかを明らかにする(目的2)。 実際に休息集団の凝集性が高まると社会的緊張を緩和する社会交渉の頻度が高まるのかを解明する(目的3)。最後に、凝集することで、観察学習の機会が実際に増えているのかを検討する(目的4)。結果、屋久島のニホンザルは外気温に応じて快適な表面温度である休息場所を選択していた。選択した休息場所の面積が限られている場合、そうでない休息場所と比べて近接2ⅿ以内の周辺個体数が増加した。これらの調査結果を第17回PWSシンポジウムでポスター発表した。目的3,4の結果は現在解析中である。

休息場所で集まるサル ©田伏良幸

2021-B-06
代表者 服部志帆
霊長類学者のフィールドノートの復刻に関する研究

服部志帆(天理大学)

2012年、京大霊長類研究所で、日本の霊長類学のパイオニア川村俊蔵のフィールドノートが発見された。1950年代、屋久島の猟師とサルやシカなどの野生動物、民俗文化、地理情報などを広く網羅したものである。報告者は、共同研究者の小泉都や川村が聞き取りを行った猟師の子孫、屋久島をフィールドとする研究者の協力を得ながら、ノートの全文を復刻した。復刻文に詳細な解説を加え、猟師の子孫を対象に行ったインタビュー録を掲載した「霊長類学者・川村俊蔵のフィールドノート―1950年代屋久島の猟師と後継者たち―」を出版するにあたり、編集作業をWRCにおいて行った。


笠井健志さん

2021-B-07
代表者 谷口晴香
ヤクシマザルにおける子どもの集まりの様相とその機能に関する調査

谷口晴香(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)

寛容性は、ヒトの社会行動の特徴としてしばしば指摘される、食物分配や協力行動などの基盤となる性質である。マカカ属のサルの社会構造は、おおまかに専制的な社会と寛容的な社会に分けられ、ニホンザルは専制的な社会に分類される。近年ニホンザルの種内において、寛容的なマカクに似た行動形質を持つ個体群(例. 屋久島)が報告されており、「寛容性」がヒトの系統以外でも平行進化したことが示唆されている。ヒトの社会では、「子どもの集まり」が託児の場として機能しており、ヒトの社会的な寛容さがこのような共同育児を可能としたことが示唆されている。本研究では、野生ニホンザルを対象に、1)子どもの集まりの機能を調べ、2)子どもの集まりの様相(頻度、時間長など)を専制的な個体群と寛容的な個体群(屋久島)間で比較し、「寛容な個体群では、子どもの集まりのなかでの育児がより行われるか」を検討することを目的とした。昨年度予備調査を行い、今年度は屋久島西部地域において2021年12月末~2022年3月にアカンボウの集まりに関するデータを収集した。ヤクシマザルの群れ(やよい群)を追跡し、5m以内にアカンボウ2個体以上の近接がみられた際にはその集まりを追跡し、アカンボウの個体数、距離、それぞれの活動、近接個体を記録した。昨年度と同様にアカンボウ同士で近接しての移動、採食、アカンボウのみでのサルだんごの形成を観察した。また、ときに彼らの集まりのなかに、コドモやワカモノメスが混じり、アカンボウを抱いたり、運搬したり、毛づくろいしたり、共にサルだんごを形成したりする様子がみられた。周囲のメンバーに手掛けられながらも、食物選好性が類似したアカンボウ同士で集まることで、食物発見効率を高めつつ体温低下のリスクを軽減している可能性が示唆された。今後、収集したデータを分析し、アカンボウの集まりの機能について検討する予定である。

2021-B-08
代表者 澤田晶子
ニホンザルの菌食行動

澤田晶子(京都大学野生動物研究センター)

野生ニホンザルの菌食行動データならびに菌類子実体(キノコ)試料を採取するため、2021年4月~6月な らびに9月に屋久島西部林道域にて調査を実施した。4~6月の調査では、GC-MS分析用の試料を林内に発生したキノコから直接捕集したが、試料濃度が低く、良好な結果が得られなかった。梅雨が長期化したことで採材環境が高温多湿であったことに加え、年間降水量が多く湿度の高い屋久島では、先行研究の手法(林床のキノコをガラス瓶で 覆い、その中に吸着剤を24時間静置する)がそもそも適していない可能性も考えられた。そこで9月の調査では、実験室内での捕集を試みたところ、推奨される室温下ではキノコの腐敗が進みやすいことがわかった。検討の結果、ジップロックに入れたキノコの上に吸着剤を置き、冷蔵庫内で捕集することで、良好な結果が得られることが確認できた。

2021-B-09
代表者 Andres Canela
Study of the role of Topoisomerases type II in the genome organization of Escherichia coli

Canela A (Kyoto University Hakubi Project for Advanced Research Graduate School of Biostudies Laboratory of DNA signaling), Osada N

I am studying in Escherichia coli, how Gyrase and Topoisomerase IV cooperate with MukBEF in genome organization by Hi-C. In this method, DNA-protein complexes in the bacteria culture are cross-linked with formaldehyde. The bacteria will be homogenized using the Precellys24, present at the Wildlife Research Center, and the DNA is extracted, ligated, and digested with restriction enzymes. The resulting DNA fragments are PCR-amplified and sequenced. Deep sequencing provides base-pair resolution of the ligated fragments and will be used to map in the genome long-range interactions of DNA. This technique is necessary to determine the role of TopoisomeaseIV, Gyrase and MukBEF in the genome organization of E.coli. I will not leave any residues in WRC, the bacteria samples will be already fixed with formaldehyde, and after homogenization in the Precellys tubes I will bring back the tubes with the lysates to the laboratory.
I am currently using the Precellys for generating Hi-C sequencing libraries to study the role of TopoisomeaseIV, Gyrase and MukBEF in the genome organization in E.coli.

2021-B-10
代表者 小野田雄介
屋久島における森林の構造や動態に関する研究

小野田雄介(京都大学農学研究科)

屋久島における森林の構造や動態に関する研究を行なった。2021年5月には、半山の樹冠調査に加えて、愛子岳山麓に新規の二次林プロットを複数設置した。また西部を中心に、稚樹の機能形質の計測を行い、幹のヤング率や材密度などのデータを収集した。二次林調査地については、2021年12月にも調査を行い、愛子岳山麓に新規の二次林プロットを増設し、また樹木の個体位置図の作成を行なった。

森林の光の垂直分布を評価する。

小雨降る中での二次林の調査の様子。

2021-B-11
代表者 半沢真帆
屋久島に生息するニホンザルの群れの移動開始時における行動の同調性の群間比較

半沢真帆(京都大学)

本研究は、屋久島に生息する野生ニホンザルにおける「群れ」としての移動時の意思決定に着目し、群れの移動時における行動の同調性の群間比較をすることを目的とした。調査は、2021年5月から7月の51日間において、西部海岸域に生息するMiffy群、Sora群、Hizu-B群の3群を対象に終日追跡を行った。
各群れが休息場所、および採食パッチから移動に切り替わる際、個体が行動を同調させるようにまとまって動き出すのか、それともばらばらに動き出すのかを定義によって区別し、記録した。
結果、休息場所からの動き出しにおいては、群れの同調性が最も多く見られたのは、群れサイズが中程度のMiffy群であり、全ての事例のうち、26.1%は群れが同調して動き出す行動が見られた。次に高い割合で見られたのは、群れサイズが大きいSora群であり、19.0%であった。最も群れの同調性が見られなかったのは群れサイズが小さいHizu-B群であり、7.7%であった。また、採食パッチからの動き出しにおいても同様に、Miffy群が最も高い割合で29.4%、Sora群が20%、Hizu-B群が0%であった。
今回は短期間の調査であったため、定量的分析を行うにはさらなる事例数の収集が必要であるが、大まかな傾向として、3群のうちでは群れサイズが中程度のMiffy群が最も群れの同調性が高いことが分かった。また、採食パッチについては、高質の集中分布した食物では群内コンテストが強く働き、低順位の個体は高順位個体と採食のタイミングや採食樹を変えることで、時間的、空間的な同調を避けている可能性が考えられるため、今後は採食パッチの質の違いによる群れの同調性にも注目し、分析を進める予定である。

2021-B-12
代表者 田島知之
飼育下オランウータンのオスにおける二次性徴発達中のホルモン動態

田島 知之(京都大学宇宙総合学研究ユニット)、義村弘仁(京都大学野生動物研究センター)、黒鳥英俊(NPO法人日本オランウータン・リサーチセンター)、木下こづえ(京都大学野生動物研究センター)

オランウータンのオスには頬ひだが二次性徴として発達し、フランジオスと呼ばれる形態への二次的な成長をとげる。先行研究では、多くの個体を対象として横断的調査を行い、二次性徴の発達中のオスでは、一時的に性ホルモンや成長ホルモンが増加することが知られている。しかし、同一個体の発達を継続的に調査し、縦断的に試料を採取してホルモン解析を行った事例はこれまでない。そこで本研究では、2個体のオランウータンのオスを対象として、二次性徴である頬ひだのサイズ伸長とオスの性ホルモン、成長ホルモンが関連して変化するかどうかを明らかにすることを目的とした。過去に飼育下で非侵襲的に採材された2個体のオランウータンのオスの尿サンプル(計331日分)を用いて、テストステロン、コルチゾール、成長ホルモンおよび尿中クレアチニンの濃度を、酵素免疫法(EIA法)によって測定した。また、画像データから顔の二次性徴のサイズ推定を行い、フランジの変化動態を分析した。その結果、フランジの発達開始より前にテストステロンの上昇がみられたものの、発達期間中にテストステロンが常に高値を保つわけではないことがわかった。コルチゾールはフランジが発達しはじめた直後に一度上昇して、その後下降した。成長ホルモンはフランジがある程度成長した段階で遅れて上昇する傾向が認められた。これらの結果を日本顔学会の研究大会「第27回フォーラム顔学」にて発表し、オーディエンス優秀賞を受賞した。

© TOMOYUKI TAJIMA

2021-B-13
代表者 田島知之
野生ボルネオオランウータンにおけるオスの繁殖成功と繁殖の偏りの解明

田島知之(京都大学・宇宙総合学研究ユニット)、久世濃子(国立科学博物館)、金森朝子(総研大)、蔦谷匠(総研大)、Renata S. Mendonça(京都大・野生動物)、山崎彩夏(井の頭自然文化園)、Titol P. Malim(マレーシア・サバ州野生生物局)、Henry Bernard(マレーシア国立サバ大学)、Vijay S. Kumar(マレーシア国立サバ大学)、井上英治(東邦大学)、村山美穂(京都大学・野生動物)

オランウータンは群れを作らずに単独で生活し、メスは特定の配偶個体を持たず、複数のオスと交尾をする。そのため観察だけでは生まれた子の父親を知ることができない。そこで、遺伝子マーカーを用いて子の父親を明らかにする研究がオランウータンの繫殖戦術を明らかにする上で重要である。これまで野生下のボルネオオランウータンを対象として子の父親を調べた研究は1報のみであるが、伐採下の二次林で行われたものであるため、オランウータン本来の生息地である低地フタバガキ原生林では異なる傾向を示す可能性がある。そこで本研究は初めて、ボルネオ島の伐採が行われていないダナムバレイ森林保護区の一次林環境に生息する野生ボルネオオランウータンを対象に、父子関係を明らかにした。フランジオス6頭、アンフランジオス3頭、子を持つオトナメス6頭、母親が既知の子9頭から非侵襲的に採取したDNAサンプルを用いて、マイクロサテライト11領域について遺伝子型を決定して父子判定を行った。子ども9頭のうち、6頭の父親を決定できた。調査地域に定住する2頭のフランジオスが5頭の子の父親であり、アンフランジオスも1頭だけ子を残していた。特に初産の子をフランジオスが残していたことはオス間の競合の強い環境を反映したものと考えられる。この成果の一部を、日本霊長類学会および日本動物行動学会で発表した。

© Japan Orangutan Research Center

2021-B-14
代表者 井上漱太
ドローンを用いた空中映像からニホンザルの視野を追跡する

Inoue S. (Graduate school of environmental science, Nagoya University)

2021年度は合計70日、幸島観察所に滞在し、調査を行なった。午前中の餌を撒く時間に合わせて、浜からドローンを飛ばした。Mavic 2およびMavic 3を用いた。高度は70mに設定して、約45分間のデータを取得した。これを合計25日程度行うことができた。得られたデータから個体の位置を取得するために、TRexという背景差分を用いるトラッキングプログラムをした。精度の検証をおこなったところ、全個体のデータのうち93%程度の精度でトラッキングを行うことが可能になった。また、体のサイズと比例して精度が高くなることも明らかになった。次に、ボディーパーツのトラッキングをおこなった。頭部、首、右肩、左肩、体の中心、尾部のトラッキングおこなった。これは DeepLabCutという深層学習ベースのプログラムを用いた。精度は90%程度だが、向上の余地があると考えている。これら二つのトラッキングを組み合わせ、視野の再構成を行うことにも成功した。今後は、個体のIDを踏まえて、視線の定量化を行う予定である。

ドローンで撮影した個体レベルの動画

2021-B-15
代表者 XU Zhihong
Helminth transmission pathway in wildlife: Japanese macaques as a model system

XU Zhihong, Andrew MacIntosh (Kyoto University Primate Research Institute)

My research aism to uncover the mechanism linking sociability and intestinal parasite infection in Japanese macaques. In this year I conducted my first field season, collected behavior data, GPS following tracks, fecal samples, insect samples, soil samples and camera trap videos.
I conducted an 113 days field study on Yakushima island this yea. During the field study, I focused on collecting all kinds of data required for my project. After the field study, I processed and analyzed the behavioral data and GPS following tracks data, and had some preliminary results: I tested the hypothesis that space-sharing is the mechanism behind the link between sociability and infection. The result shown that, spaceing-sharing is not sufficient to explain the link between sociability and infection, as there is no correlation between space-sharing network and sociability network. However, including more data might provide more information on this topic. This result was presented on ESJ69.
I achieved most goals I set for this year. I collected a season of data and analyzed part of them. Even though limited by schedule I fail to analyze also the other part of data, they will be processed and anlyzed together with the next season of data I collect in next year.
In general, this year I finished the first field season of my study.

2021-B-16
代表者 長安英治
宮崎県幸島のニホンザルの糞を検体とした感染症調査

Nagayasu E. (Faculty of Medicine, University of Miyazaki)

 サル糞線虫 (Strongyloides fuelleborni)は旧世界ザルに普遍的に見られる寄生虫である。サル糞線虫の分子系統解析に用いることのできるDNA配列データは東南アジア (タイ、ラオス、カンボジア、マレーシア [ボルネオ])由来株はかなり充実してきているが、日本株に関してはデータが少ない。本研究において、幸島のニホンザル由来サル糞線虫の配列データを収集することを研究目的とした。
 2021年7月に宮崎大学医学部および農学部のメンバーが幸島ニホンザル棲息地を訪れ、野生動物研究センター・幸島観察所の鈴村先生のご協力の下、ニホンザル28個体から新鮮便を回収した。寒天平板法により27個体のサンプルからなんらかの線虫を検出した。11個体に由来する88線虫サンプルについて18S rDNAシーケンシング解析を実施し、6個体に由来する31線虫サンプルをサル糞線虫を同定した。サル糞線虫と同定されたサンプルについてはミトコンドリアcox1遺伝子の部分配列(710bp)の取得を試み、21線虫個体からの配列情報を得ることができた。その後、得られた配列は10のハプロタイプとしてまとれられ、NCBI 塩基配列データベースに登録された(OM570560-OM570569)。これらのcox1 ハプロタイプは、既知の大分や、小豆島などのニホンザル由来糞線虫由来配列とともに単一のクラスターを形成した (図参照)。さらに、得られた検体を用いて全長ミトコンドリア配列を決定した (NCBIデータベースにOL672152として登録)。様々な脊椎動物に寄生する糞線虫種のミトコンドリアゲノム配列情報を用いた分子系統解析では、サル糞線虫の近縁糞線虫として、ウシやヒツジなどの偶蹄目動物を宿主とする糞線虫(S. papillosus、S. vituli)が認められ、サル糞線虫の進化的起源に関する仮説として偶蹄目動物寄生虫の宿主転換シナリオが示された。

© Eiji Nagayasu

2021-B-17
代表者 林亮太
生態系復元モデルの構築:屋久島をモデルとした国内外来種の水圏生態系への影響の解明

林亮太(日本工営株式会社)

海抜1500m前後の最上流部から河口域までの距離が短い急流河川を持つ屋久島には陸封で生活史を完結する在来の淡水魚が本来生息しないが、1970~90年代にかけて3河川にヤマメの放流記録がある。本研究では屋久島の主要6河川を対象として、ヤマメの放流記録のある3河川と在来の河川生態系が残る3河川の魚類相と水生昆虫相調査を比較し、国内外来魚種の定着状況と在来の水生昆虫相への影響を明らかにすることを目的としている。国内外来種の侵入河川と非侵入河川の水生昆虫相を比較することで、国内外来種が在来生態系に与える影響を定量化し、在来の河川生態系復元に資する情報を得る。調査には水を汲むだけで環境への影響が少ない非侵襲的な手法として近年注目されている環境DNA解析を採用した。
また、夜間には永田前浜に産卵に上陸するウミガメ類の付着生物調査も実施した。

2021-B-18
代表者 齋藤美保
飼育下アミメキリンのオス・メスの同居/非同居が、双方のストレスホルモン(グルココルチコイド)値に与える影響の解明

齋藤美保、松永雅之、福泉洋樹(京都市動物園)、木下こづえ(京都大学)

京都市動物園で飼育されている、キリンのオス1頭とメス2頭を対象として、異性との同居・非同居の2条件下での糞中ストレスホルモン(グルココルチコイド)値の変化を明らかにすることを目的として研究を行った。調査は2021年5~6月にかけて実施し、各個体から糞サンプルを30個ずつ採取した。その後、野生動物研究センターの実験室でホルモン分析を行った。結果、2条件下における3頭の糞中ストレスホルモン値に有意な差は見られなかった。しかしオスから、1頭のメスに対する攻撃的行動の生起頻度の上昇に伴って、当該メスの糞中ストレスホルモン値の上昇傾向が認められた。つまり飼育下のキリンのメスの糞中ストレスホルモン値を上昇させる要因として、オスの存在ではなく、攻撃的行動の生起頻度であることが示唆された。今後は、同居・非同居の2条件だけでなく、攻撃的行動の生起頻度と糞中ストレスホルモン値の関係について、より詳細な調査を行いたい。また、これまでの結果の解析を進めると共に、学術雑誌への投稿を準備している。

同居中のオスとメスたち

2021-B-19
代表者 南俊行
嵐山ニホンザル集団における「赤ちゃんらしい」身体的特徴の定量的・包括的測定とその発達的変化の検討

南俊行、古市剛史(京都大学霊長類研究所)

本研究は、ニホンザルにおける乳児らしい身体的特徴と、その発達変化を明らかにすることを目的とした。2021年度の1年間、嵐山モンキーパークいわたやま(京都市西京区)で観察できるニホンザルを対象に、非接触的な手法を用いて、対象集団全個体の身体的特徴(正面顔・横顔・全身像・体色)を計測した。また、アカンボウ8個体を含む5歳未満の未成体全個体を対象に、その身体的特徴のデータを、1年間継続的に収集した。これらのデータから、ニホンザルにおける乳児らしい身体的特徴を特定し、正面顔・横顔・全身像・体色それぞれにおける乳児らしさの定量化に着手した。また、誕生から生後12週までの乳児らしさの発達変化を検討し、対象とした身体部位ごとに発達変化の傾向が異なることや、一部の身体部位では誕生後しばらく乳児らしさが増大することを見出した。今後は、既に得られたデータの分析を進め、ニホンザルの生涯を通した乳児らしさの発達変化を、縦断的手法と横断的手法を組み合わせて明らかにする。また、ニホンザルを対象とした乳児らしさの非接触計測・定量化手法を活用し、未成体の乳児らしさと、実際に受ける養育行動や保護の頻度との関連を詳細に検討する必要がある。これらの成果は、所属研究科の修士論文の主テーマに位置付けた。
2021年7月から2022年3月の期間、関田南研究棟を利用させていただき、上記で得られたデータをはじめとする嵐山ニホンザル集団の行動・形態データの分析と、発表資料・論文原稿等の作成を実施した。

嵐山モンキーパークいわたやまのニホンザル母子 ©南俊行

2021-B-20
代表者 渡邉彩音
屋久島と種子島におけるヤマモモの分布様式の比較 ーニホンザル絶滅の影響ー

渡邉彩音(名大農)、富田晋介(名大)、半谷吾郎(京都大)、中川弥智子(名大生命農)

ヤマモモ(Myrica rubra)のような⼤型の果実をもつ樹⽊にとって、霊⻑類や⼤型⿃類は唯⼀の散布者となりうるため、⼤型動物の絶滅してしまった「空洞化した森林」では種⼦散布機能の崩壊が懸念されている。今からおよそ70年前にサルが絶滅した種⼦島と、種⼦島の近隣の島で現在もニホンザルが⽣息する屋久島を対象とした先⾏研究によって、種⼦島でのヤマモモの種⼦散布機能が屋久島と⽐較して⼤きく低下していることが⽰唆されている。本研究では、種⼦島と屋久島でヤマモモの分布パターンを⽐較し、種⼦散布者の喪失がヤマモモに与える影響を評価することを⽬的とした。
種⼦島中種⼦町の照葉樹林およそ10 haと、屋久島町半⼭地区の照葉樹林およそ27haを踏査し、調査地内に⽣育するヤマモモ成⽊(樹⾼1.3 m以上)と実⽣(樹⾼1.3 m未満)について、位置情報とサイズを記録した。測定データから分布パターンの指標である森下のIδ指数とTPIを算出し、両調査地のヤマモモの分布パターンを解析し、実⽣密度と個体サイズについても⽐較を⾏った。種⼦島、屋久島のどちらの調査地においても、ヤマモモの成⽊および実⽣のどちらも尾根に集中した分布を⽰し、両調査地で分布パターンに違いは⾒られなかった。しかし、種⼦散布距離など、⽬に⾒えないところに変化が起きていることも考えられ、今後時間が経過することで森林構造の変化が顕在化する可能性がある。また、シカ柵外の実⽣密度は種⼦島の調査地と⽐較して屋久島の調査地で有意に⼩さく、実⽣密度はシカ柵内でシカ柵外よりも有意に⼤きかった。屋久島の調査地の⾼いシカ密度がヤマモモの実⽣密度に⼤きく影響していると考えられる。成⽊も実⽣も屋久島の調査地の個体のほうが⼤きく、降⽔量や⼟壌の違いによる影響かもしれない。このことから、ヤマモモの分布パターンの決定には、実⽣の⽣残‧成⻑における定着制限が散布制限よりも強い影響を与えている可能性が⽰唆された。

ヤマモモ毎木調査(GBH測定) 

種子島と屋久島の調査地のヤマモモ成木TPIの箱ひげ図(島間で有意差は認められなかった。)

2021-B-21
代表者 杉浦秀樹
屋久島西部地域における中大型動物の生態調査

杉浦秀樹、原澤牧子、前田玉青、義村弘仁(京都大学・野生動物研究センター)、藤田志歩(鹿児島大学)、田中俊明(梅光学院大学)、谷口晴香(東京外国語大学)、鈴木滋(龍谷大学)、浅井隆之(平川動物園)、井上漱太(名古屋大学)

 屋久島・西部地域でのヤクシマザル、ヤクシカの基礎的な調査を継続して行った。ヤクシマザルの個体識別をしながらの群れの識別と頭数の調査、道路を歩いてのサルとシカのセンサス、カメラトラップによる撮影を引き続き実施した。
 昨年度、大きく北に移動していたサルの群れは、概ね元に戻り安定していた。ヤクシカのセンサスでは、北部での減少傾向が続いていることが確認された。

観察中に見かけたサルがシカに乗る様子

2021-B-22
代表者 揚妻直樹
ヤクシカの個体群動態および人為的撹乱が野生動物に及ぼす影響の総合評価

揚妻直樹(北海道大学)、揚妻-柳原芳美(Waku Doki サイエンス工房)、木下こづえ(京都大学)、MacIntosh Andrew (京都大学)、井上英治(東邦大学)、和田崇之(大阪市立大学)

 鹿児島県・屋久島において、野生動物に対する人為的攪乱の大きい地域(攪乱地:矢筈崎・大川)と小さい地域(非攪乱地:西部地域)に生息するシカのホルモン・腸内細菌叢・寄生虫感染率・食物の質を比較するために、糞試料の収集を継続した。さらにこれまで収集したサンプルの分析を進めた。人為的攪乱の影響に対する生理的指標としてシカの糞中のコルチゾール濃度を121サンプルについて測定した。攪乱地の大川のコルチゾール濃度は非撹乱地と差がなかったが、矢筈崎では高かった。コルチゾール濃度は季節や年によっても異なることが分かった。シカが食べているエサの質の指標となる糞中窒素濃度(窒素量が多いと高質)も分析した。糞中窒素濃度も季節や年によって異なっていたが、攪乱地と非攪乱地とで違いがなかった。食物条件が悪いとストレスレベルは高くなると指摘されているが、コルチゾール濃度と糞中窒素濃度にはむしろ正の相関がみられた。従って、調査地では食物条件の低下とストレスには関連性が低い可能性があった。コルチゾール濃度が突出して高かった10サンプルのうち8サンプルは攪乱地のものであり(いずれも糞中窒素濃度は特に低くない)、攪乱地で起きやすい別の要因が効いているのかもしれない。糞中の細菌叢の構成は年による違いがあったが、攪乱地と非攪乱地で明瞭に区別はできなかった。今後も分析を進める予定である。
 個体数管理のための駆除が行われていない世界遺産地域(非攪乱地)に生息するシカの生息密度を調査した。この地域では2014年以降、急激な生息密度の低下が継続していた(年率マイナス10~20%)。2021年においても生息密度は前年と比べ減少していることが示された。この個体群は自然生態系の制御を受けている可能性がある。こうした現象は報告がなく、学術的に重要である。今後、駆除の影響を排除し、この地域のシカ個体群を保護管理することが必要であろう。

2021-B-23
代表者 渡辺拓実
日本列島におけるアカギツネの分布形成史の解明

渡辺拓実、山崎裕治(富山大学大学院)

 生物の系統地理構造は、種の進化的背景や過去の地球環境を反映する。アカギツネは、日本列島において数少ない高次広食性捕食者であり、生態ピラミッドの頂点に立つ種として、他の生物の分布や個体数に大きな影響を及ぼしている。したがって、本種の系統地理学的研究は、日本列島における生物相の形成プロセスを考える上で極めて重要である。そこで本研究では、日本列島における本種の分布形成機構および集団動態史を明らかにすることを目的とする。
 試料として、日本列島における本種の筋組織および糞を約100個体分収集した。各試料において、mtDNAの塩基配列を決定し、分子系統解析、分岐年代推定、集団履歴推定等を実施した。
 解析の結果、本州、四国、および九州の本種は単系統群であることが明らかになった。また、日本列島における本種の系統地理構造の特定や、種内系統の分岐年代の推定に成功した。以上の内容について、現在論文を執筆中である。

2021-B-24
代表者 半谷吾郎
森林のナトリウム利用可能性

半谷吾郎(生態学研究センター)

 ナトリウム(Na)は、神経細胞の応報伝達に使われるため、動物には必須だが植物組織には少ししか含まれておらず、その確保は植物食動物にとり大問題である。海水のような、ナトリウムのホットスポットがない環境で、植物食性の動物がどのようにナトリウムを摂取しているのかは、動物生態学での大きな問題である。しかし、植物生態学の分野では、ほかの植物の生存に必要な元素とは異なり、ナトリウムがどの程度存在しているのかが明らかになっていない。申請者は、2019年度に野生動物研究センターの共同利用研究「ニホンザルのナトリウム摂取」を実施し、幸島のニホンザルの糞中のナトリウム再吸収ホルモンであるアルドステロンの濃度が、他の地域のニホンザルよりも低いことを明らかにした。この要因を探るため、幸島の森林内で葉を採取し、森林内の樹木にどの程度ナトリウムが含まれているのかを明らかにすることを目的として、2021年9月に試料の採取を行った。幸島の海岸の、樹木が生えているぎりぎりのところから採取を開始し、東西南北いずれかの方角に、まっすぐに歩いて、10メートルごとに立ち止まり、その一番近くの樹木の生葉を2枚採取した。採取は150本の樹木について行った。採取した生葉は、乾燥したのち、0.05グラムを灰化し、得られた灰を10%硝酸溶液に溶かし、80度で1時間加熱した。処理した検体を総合地球環境学研究所のICP発光分光分析装置(ICP-AES)で分析し、ナトリウム濃度を測定した。幸島の森林のナトリウム利用可能性は、他地域よりも高いことが明らかになった。

幸島での採取の様子。(c)半谷吾郎

2021-B-25
代表者 中塚雅賀
屋久島のニホンザル(Macaca fuscata yakui)におけるコドモの遊びの量の群間比較

中塚雅賀(京都大・院・理)

 ニホンザルを含めた多くの霊長類において、遊び行動はアカンボウ期やコドモ期に多くみられ、年齢とともに減少することが知られている。そのため、発達期のニホンザルを理解するうえで遊びはひとつの重要な行動であると考えられる。遊びが個体の発達にとって必要不可欠な行動なのかということを探るためには、餌付けされておらず、採食に時間とエネルギーの大きなコストを割かなければならない本来の生息条件で遊びを定量的に調べることが重要である。本研究は、屋久島に生息する野生ニホンザルを対象に、わんぱく遊び頻度の群間比較をおこない、その違いの要因を探ることを目的とした。
 屋久島西部林道沿いに生息するUmi-B群とSora群を対象に調査を実施した。昨年度に引き続き、本年度は継続調査として、2021年8月~10月にSora群を対象に調査をおこなった。調査の結果、採食と移動に比較的大きな時間を割いているSora群よりも、採食と移動に時間を割いていないUmi-B群のほうがわんぱく遊び頻度が高かった。さらにSora群のわんぱく遊び頻度を経時的に比較しても、食べ物が豊富にあり、採食と移動に時間をかけなくてすむ時期のほうが、頻度が高いことが分かった。このことから、わんぱく遊びは食物環境が良く、採食と移動に時間をかけなくてすむ場合に多く生起すると考えられる。さらに、同じ親和的社会交渉のなかでも、採食と移動の合計時間割合が一定以上増えてはじめて生起頻度が減少した毛づくろいと異なり、わんぱく遊びは、食物環境が良く採食と移動の合計時間割合が低い時期には、採食と移動の合計時間割合が増えると生起頻度が減少したが、食物環境が悪く採食と移動の合計時間割合が高い時期にはそもそもほとんど生起しなかった。このことから、わんぱく遊びは食物環境が充分に良く、個体にとって採食に関して時間的かつエネルギー的にも余裕がある時期にはじめて生起し、増加することが示唆された。

わんぱく遊びをするニホンザルのコドモ

2021-B-26
代表者 吉村恒熙
アカギツネの行動と遺伝子による自己家畜化仮説の検討のための予備解析

吉村恒熙(京都大学大学院・理学研究科生物科学専攻・人類進化論研究室・博士後期課程1回)

アカギツネ(Vulpes vulpes、以下キツネ)の糞や体毛から解析に十分な量や質を備えたDNAを抽出できるかを調べるため、2021年8月から9月にかけて試験的な遺伝子解析を行った。試料には、著者が2021年8月に京都市動物園のキツネ1個体から採取した糞と、貴センターで保存されていた蔵王キツネ村(宮城県白石市)のキツネ1個体の糞およびに平川動物公園(鹿児島県鹿児島市)のキツネ1個体の体毛を用いた。比較用には、京都市動物園のキツネ2個体の血液から抽出され貴センターで保存されているDNAを用いた。以上の全試料について、DNA抽出およびに、イヌの性格関連遺伝子ARとMC1Rのプライマーを用いたPCR増幅とシーケンス解析を行った。
その結果、京都市動物園の糞からは解析に十分なDNAが抽出できなかったが、蔵王キツネ村の糞からはシーケンス解析に耐えうるDNAが抽出できた。京都市動物園では糞が土に埋まっていたため、これは糞の採取条件による違いが原因だと考えられる。したがって、キツネの糞を遺伝子解析に利用するためには、糞の採取条件を整える必要があることが明らかとなった。また、平川動物園の体毛からもシーケンス解析に耐えうるDNAが抽出できたため、キツネの体毛は問題なく遺伝子解析に利用できることが確認できた。さらに、出力されたDNA配列を試料間で比較すると、キツネでもイヌの性格関連遺伝子MC1Rに個体差が見られることが明らかとなった。
こうして得られた知見に基づき、2021年10月から2022年1月にかけて、北きつね牧場(北海道北見市)でキツネの糞25個体分と体毛6個体分を採取することができた

2021-B-27
代表者 李怜柱
野生ウマの社会で母ウマの社会関係が仔ウマの社会性に及ぼす影響

李怜柱、平田聡(Wildlife Research Center, Kyoto Univ.)

都井岬に生息する岬馬は主に小松ヶ丘と扇山、二つのエリアに分けて分布し、自由に群れを構成して繁殖している。申請者が本格的に調査を始めた2021年8月時点で約100頭のウマが生息しており、その中でも一夫多妻のグループ(「ハーレム」)で母ウマと仔ウマが一緒にいる群れ(小松ヶ丘エリアにて5群・扇山エリアにて2群)を調査対象とした。ウマがグループの中で行う親和的な行動(例:相互グルーミング、友好的な体の接触)と敵対的な行動(例:蹴る、噛む、ぶつかる、追い出す)、そして個体間の近接をビデオカメラやドローンを用いて観察・記録した。
 その予備的な検討として、扇山エリアの群れで親子が他個体と一緒にいるAssociation Index(AI)を算出した。扇山エリアでは群れの安定度が比較的に低く、母ウマと仔ウマたちが二つのハーレム群の間を移動する傾向がある。母ウマと仔ウマが他個体と持つAIは、すべての親子ペアにおいて正の相関関係があった。この関係は仔ウマの離乳に従って変更が起こる可能性が考えられる。また、母ウマと仔ウマたちは二つのハーレム群間で放浪する傾向はあるものの、特定のオスや親子ペアがいる群れにより集まることを確認できた。
 一方、母ウマと仔ウマの社交性の指標として、最近接距離にいた個体の多様性及び近接にいた持続時間を算出した結果、全親子ペアの中で半分のペアにおいて統計的に有意な正の相関関係があった。親子ペアによって近接個体の多様性と近接持続時間での相関関係が異なるパターンを見せたことから、各親子ペアの母ウマと仔ウマが持つ違う関係性が関わっている可能性がある。
 以上の結果は第17回PWSシンポジウムにて発表しており、今後仔ウマの発達にしたがう社会関係の変化について追跡調査を予定している。


2021-B-29
代表者 牛田一成
体内環境の変化によるオオシロアリの行動変異

勝見友亮(中部大学応用生物学部)、土田さやか(中段医学応用生物学部)、牛田一成(中部大学応用生物学部)

屋久島カンカケ岳北西面宿子川および北斜面岳之川流域におけるシロアリの種別高度分布を調査した。頂上の標高722 mから高度が下がるにつれてシロアリ種の出現に変化が認められ、ヤマトシロアリの優占状態から次第にサツマシロアリやオオシロアリとの共存がはじまり、一部の枯死木ではヤマトシロアリとサツマシロアリがおなじ倒木を共有する現象も観察した。最も標高の低い集落周辺ではイエシロアリのコロニーが観察された。

2021-B-30
代表者 河合真美
日本に来遊するシャチ(Orcinus orca)の遺伝的系統解析

河合真美(北海道大学)、三谷曜子(京都大学理学研究科・野生動物研究センター)、北夕紀(東海大学生物学部海洋生物科学科)、早川卓志(北海道大学大学院地球環境科学研究院)

北海道で採集されたシャチ(Killer Whale)のバイオプシーサンプルを使用し、ミトコンドリアゲノム解析のためのDNA抽出とPCR実験を行った。ミトコンドリアゲノムの一部分はPCR実験が成功したが、PCR実験の結果が出ていない領域があるため、今後も実験を重ねる。ミトコンドリア全ゲノムの配列が出せたのち、系統解析等を行う予定である。

2021-B-32
代表者
日本での人と野生動物の関係と森林の空洞化

半谷吾郎(京都大学霊長類研究所)

豊かな樹木多様性を持つ森林で、伐採が行われておらず、外見上健全でも、目に見えない形で生物多様性の消失が起きていることがある。大型動物の絶滅、森林の「空洞化」である。申請者らは、戦後間もない時期にニホンザルが絶滅した種子島と、40年以上にわたってニホンザルの詳細な研究が行われている屋久島を比較し、ニホンザルによる種子散布サービスと、その絶滅の影響を評価する研究、および、人と野生動物のかかわりについての歴史的および現代的課題についての研究を推進することを目的に、京都大学の学内経費SPIRITSによるチーム研究を推進している。その一環として、研究メンバー7名による視察を2021年1月に行い、その一環として、野生動物研究センターの屋久島観察ステーションを訪問した。

2021-B-33
代表者 山本真也
野生ウマ行動研究のための予備観察

Shinya Yamamoto (Institute for Advanced Study, Kyoto Univ), Gema Palacino (Wildlife Research Center, Kyoto Univ), Christen Lin (Wildlife Research Center, Kyoto Univ)

幸島観察所に宿泊させていただき、都井岬の野生ウマの観察をおこなった。野生動物研究センター博士後期課程1年のGema Palacinoが今後ウマ研究をおこなう上での予備調査が第一の目的である。野生動物研究センター大学院生のイ・ヨンジュさんの案内・解説で3群を観察することができた。さまざまな研究の可能性を見出すことができるとともに、いくつかの制約についても明確になり、今後のウマ研究をおこなう上で大変参考になった。

2021-B-34
代表者 杉浦秀樹
屋久島の低地照葉樹林でのドローンによる植生判別の試み

杉浦秀樹、前田玉青、鈴村崇文、(京都大学・野生動物研究センター)、井上漱太(名古屋大学・環境学研究科)、栗原洋介(静岡大学・農学部)、杉本拓斗、新井花奈、板原彰宏、栗山侑子、鈴木瑛之、田中千聖、Lim Qi Luan、鈴木彩月(京都大学・野生動物研究センター・大学院生)

 屋久島西部地域は照葉樹林が広範囲に残っているが、1960年代までは、伐採や植林なども行われていた。このような過去の人為的な植生への影響は、現在の動物の分布にも影響を与えている可能性がある。
 この地域で、ドローンを用いて植生を撮影し、人為的に植えられた樹木の判別を試みた。数多く植えられているクスノキは写真から判別することができた。また、現在、この地域では松枯れが問題になっているが、枯れたマツもかなり判別することができた。地上でも毎木調査を行い、ドローンで撮影した画像との対応を試みたが、座標のずれや写真の解像度などのマッチングに課題があり、あまりうまく対応をさせることができなかった。
UAVで撮影した植生の判別や、継続的なモニタリングの手法として、有用であることが示唆された。西部林道を中心として世界遺産地域内を全て撮影するのに、4日かかった。天候もある程度穏やかでないと調査が難しいため、このような広域での調査においては、より航続距離の長いUAVを使うなど方法の改善の余地がある。

ドローンで撮影した写真を重ね合わせた合成画像

2021-B-35
代表者 Andrew MacIntosh
Impact on small carnivore community and infectious disease dynamics on Yakushima Island resulting from the introduction of non-native raccoon dogs (Nyctereutes procyonoides)

MACIntosh Andrew (Pricipal Investigator), MAJEWSKI Katherine Maria (Research Student), KEUK Kenneth (PhD Student)

The purpose of this study is to assess the impact of the invasive raccoon dog (Nyctereutes procyonoides) population on Yakushima Island through its direct and indirect competition with native species. The project remains ongoing, however, a pilot study that was constructed as a foundation for future research took place between January-February 2022. The purpose of this pilot study was to trial methodology for latrine surveys to collect raccoon dog fecal samples within the Seiburindo area of Yakushima Island. We also assessed the methodology of the infra-red sensing drone technology in our possession, specifically in regards to its capability to identify wildlife in the forests of Yakushima.
Our results yielded 26 latrine sites within the Kawahara and Hanyama regions of the Seiburindo forest, with 59 fecal samples collected for DNA analysis. We identified several suitable take-off and landing spots, performed several test flights, and familiarized ourselves with flying the drone over the forest. We were able to detect and identify multiple species on the ground (deers) and the canopy (several species of bird).
DNA analysis on the fecal samples remains ongoing. Preliminary analysis is directed towards identifying the presence of endemic or endangered species which were predated by tanuki in the sampling area, as well as identification of prey species common to the other small carnivore on the island, the endemic subspecies of Japanese weasel (Mustela itatsi sho.) Specifically, prey items belonging to the Geothalphusa fresh water crab genus, as well as the endemic species of shrew (Crocidura dsinezumi umbrina) are presently the target species for prey species DNA analysis. Analysis on the presence of specific parasites in the feces is also ongoing.
The field study portion of the research will continue as research permits for the installation of camera traps and live trapping of raccoon dogs are approved by early autumn of 2022.

A short video of our work on Yakushima created for the PWS Student Symposium by K.Keuk and K. Majewski can be found here: https://www.youtube.com/watch?v=cL_6NAMxORY

Photo 1: Image of a Tanuki latrine taken on Yakushima by K. Majewski

Image 2: Map of research area created by K. Keuk

2021-B-36
代表者 小倉匡俊
コアラの同居飼育によるストレスの評価

小倉匡俊、雨平愛、荒木千晴、渡邉里衣(北里大学・獣医学部)、木下こづえ(京都大学・野生動物研究センター)

コアラは野生環境において単独性であるが、飼育下においては展示スペースの都合などで複数個体を同居させることがある。この同居がコアラに与えるストレスについて、尿中コルチゾール濃度から評価した。2021年11月17日から12月1日にかけて平川動物公園で2個体から採材した計3つのサンプルについて、サンプル調整および酵素免疫測定法によるホルモン濃度の測定をおこなった。測定結果はそれぞれ226.26 ng/Crmg、157.63 ng/Crmgで、残り1サンプルについては生理的に実現不可な低値だったため分析から除外した。今回は十分な採材ができなかったこともあり結果について考察していくことは難しいが、今後の研究につながる採材方法および測定方法の確認をすることができた。


同居飼育されているコアラ ホルモン分析の様子

2021-B-37
代表者 大西絵奈
幸島のニホンザル集団における排尿行動に関する予備観察

大西絵奈(野生動物研究センター)

報告者は飼育チンパンジーを対象に排尿行動の同期について研究しており、本研究ではニホンザルを対象に同様の観察研究の実現可能性を探ることを目的としていた。数日間にわたり幸島研究所に滞在し、観察を試みた結果として、報告者の望む研究内容の実施は難しいことが判明した。理由として、給餌のタイミングは頭数も多く動きも多いため排尿を認識することが困難であることなどが挙げられる。数日間実際に観察を行ったが、数十頭がひしめく海岸で観察者が排尿に気づくことがそもそも難しく、網羅的に全個体の排尿に注意することは不可能であった。

2021-B-38
代表者 原澤牧子
幸島ニホンザル群の汎用的識別表更新のための個体調査及び行動観察

原澤牧子(京都大学野生動物研究センター)

幸島ニホンザル群における汎用的識別表を維持し続けるために必要な情報収集を行った。今回は、前年ほとんど観察することができなかった群外のオスや、マキ群の個体について重点的に識別した。前年同様の調査期間ではあったが、発情期が尾を引いていたためヒトリザルが群れに接近しており、想定より多くの個体を観察することが可能となった。一方で、発情した一部のメスがなかなか姿を現さなかったり、コドモの傍を離れていたりと、識別に不利に働いたところもあった。また、識別表を維持管理していくために、何をどの程度更新していけばいいかの検討を行った。外見の変化が著しいコドモ(成長)、ワカメス(初発情を経て雰囲気が少し変わる・傷も増える)、初産メス(個体によっては老け込む)についてはこまめな情報更新が望まれる。群れを離れるワカオスについても優先的に記録を残した方がよい。記載する情報として指や耳、口唇などの大きな傷跡は他地域同様に有用であったが、屋久島などで識別に用いている顔の白斑については、今後検証していく必要があるかもしれない。明らかに顔の白斑が増加している個体がおり、このような顔の白化は幸島では時折観察されているとのことである。

オモト:1年を経て顔の模様が大きく変化

2021-B-39
代表者 Andrew MacIntosh
Behavioral Analytics for Animal Welfare in Zoo-housed Animals Behavioral Analytics for Animal Welfare in Zoo-housed Animals

MacIntosh A (Primate Research Institute, Kyoto University), Kinoshita K (Wildlife Research Center, Kyoto University), Yamanashi Y (Kyoto City Zoo), Chen P (Faculty of Science, Kyoto University)

Our project aims to explore new ways of monitoring behavior using data science and complexity theory with two key objectives: (1) to be able to detect anomalous patterns of behavior even in the absence of clear signs of stress like abnormal behavior of behavioral stereotypies, and (2) to provide a means of measuring the effectiveness of interventions, such as the application of environmental enrichment, enclosure redesign or animal relocation, veterinary procedures, etc. The project began in fiscal year 2021, and we were able to collect behavioral observations from five species at Kyoto City Zoo (brown capuchins, meerkats, goats, giraffe and zebras), either directly or indirectly through video recording. In total, we collected over 60 hours of observation from these species directly, and over 40 hours of video. Analysis of these data is ongoing. Preliminary results with brown capuchins suggest that behavior patterns of an individual exhibiting clear signs of stress - stereotypical neck/head rolling and cage cycling - become more disordered in time. Though further data are required for confirmation, such results provide proof-of-concept that the temporal structure and complexity of behavior may be a useful indicator feature that can provide critical information about animal welfare. Correlations between anomalous behavior types and anomalous behavior time series would also suggest that measuring behavioral time series can be an effective way to monitor animal health and well-being even before other signs of stress, health conditions, etc., arise. Theoretically, this also suggests that certain properties in the temporal structure of behavior may be optimal for animals, in the wild as well as in zoos and other places, highlighting the need to facilitate natural behavior patterns in zoo animals. This project was presented at the 66th Primates Conference at the Japan Monkey Centre (JMC) on March 27, 2022; researchers at JMC are collaborators on the broader project also being conducted at Kyoto City Zoo. In addition to the research, we have also produced an animated promotional video about animal welfare at zoos and the use of emerging technologies and analytical frameworks, and will continue to update our partners and the public about the project - called Zooentropy - through our website @ www.zooentropy.net.

Figure 1. A graphical abstract of the study showing that high-stereotypy and low-stereotypy behavior sequences are different among Brown capuchins housed at Kyoto City Zoo. Zooentropy is a project and network aiming to utilize such behavioral differences to predict negative outcomes for zoo animal welfare and assess the outcomes of zoo interventions such as the application of environmental enrichment.

2021-B-40
代表者 杉浦秀樹
屋久島における異なる標高における哺乳類および鳥類の基礎調査

杉浦秀樹、内藤アンネグレート素、鈴村崇文、李怜柱、善本智佳(京都大学・野生動物研究センター)、南俊行(京都大学・霊長類研究所)

 屋久島は最高標高1936mの山岳島である。標高によって環境が大きく変わり、これがこの島の生物多様性を生み出している大きな要因である。この島の東部にある道路(安房林道)は海岸部から標高1300mまで舗装道路が通じており、容易にアクセスすることができる。この道路沿いに徒歩で歩き、周辺で観察される哺乳類と鳥類を記録し、動物の分布を推定した。
 シカの目視はほとんどなく、あまり林道は利用していないことが示唆された。ニホンザルは、道路上での糞を観察した他、道路からの目視もあった。目視ができたのは、比較的低い標高であった。この時期には、中高標高地域ではあまり道路に出ていない可能性がある。
鳥は、鳴き声を良く聞くことができた。標高によって鳴き声の頻度が異なっており、種によっては、生息する標高に差があることが分かった。

2021-B-41
代表者 金森朝子
野生オランウータンの生息密度調査

金森朝子(NPO法人日本オランウータン・リサーチセンター)

マレーシア、サバ州に位置するダナムバレイ保護区にて、2005年より野生オランウータンの生態調査を行っている。その一環として、生息密度調査を16年継続して行ってきた。新型コロナ感染症の影響により、2020年度に引き続き、2021年度においても、研究者らは現地に渡航できなかった。しかし、生息密度と果実量の調査については、現地アシスタントによって継続できている。2021年度の生息密度の状況は、果実量ともに低調な状態を維持しており、特記すべき大きな変化は起きていないようだ。詳細な分析は、現地でデータと調査環境を確認した後に行う予定である。
オランウータンの発見や追跡には、対象を見失いやすいために、2-3人以上のアシスタントを必要とする。この2年間は感染症対策のために、オランウータンの追跡による直接観察は実施できなかった。しかし、アシスタントが森で遭遇した個体の情報によると、長期間モニタリングしてきたメスが、新しい赤ん坊を出産していることなどがわかっている。

オランウータンの親子

2021-B-04
代表者 杉浦秀樹
幸島実習(野生動物・行動生態野外実習)

杉浦秀樹、鈴村崇文(京都大学野生動物研究センター)

 2021年10月31日~11月6日の日程で、京都大学の大学院の実習「野生動物・行動生態野外実習」(通称、幸島実習)を実施した。本実習は例年5月に行っているが、この時期に新型コロナウイルの感染が増加し、大学の対応レベルも引き上げられたため5月の実施は見送り、感染の落ち着いた11月に実施したものである。京都大学・野生動物研究センターの修士課程1年の大学院生7名が実習生として参加し、野生動物研究センターの2名の教職員が指導した。
 集合日の翌日(2日目)は波が高く、島に渡れなかったため、都井岬のウマを観察した。3-5日目は島に渡ってニホンザルの観察を行った。各自がニホンザルに関する自分でテーマを考え、データを収集した。6日目は分析した結果を発表し質疑応答をおこなった。また、野外での生活、安全対策、山歩きなどの基本的な野外調査の経験を積んだ。天候にも恵まれ、サルをよく観察することができた。
 実習終了の翌日に行われた、観察会にも5名の院生が参加し、普及活動を経験した。

都井岬でのウマの観察

2021-B-31
代表者 杉浦秀樹
京大ウィークス 幸島のニホンザルの観察会

鈴村崇文、杉浦秀樹(京都大学野生動物研究センター)

 今年度の「幸島ニホンザルの観察会」は、荒天が予想されたため、幸島に渡ってのニホンザル観察は中止した。事前に代替プランとして用意していた都井岬のウマの観察会を行った。今年度よりオンサイトオンライン併用で実施した。オンサイトの解説は都井岬観光交流館の解説員の方にガイドをお願いした。オンラインでは野生動物研究センターのウマの研究者が現地で解説を行い、参加者が自宅などからこれを視聴した。参加者の方も熱心に解説を聞いたり、研究者との交流を楽しまれている様で盛況のうちに散会となった。
 今年度は初めて都井岬に変更しての開催となった。全国から16名の参加が集まった。当初20名参加の予定であったが、変更となる旨を参加者に伝えた時点で4名のキャンセルがあった。また今年は、前日まで実習で幸島に滞在していた、野生動物研究センターの大学院生5名がスタッフとして参加した。

2021-B-42
代表者 鈴村崇文
令和3年度宮崎県公立小中学校初期研修

串間市(報告者:鈴村)

串間市に今年度赴任した小中学校の教諭を対象に串間市内の自然や観光地を知ってもらうための研修を行った。参加者7名、引率1名、計8名が参加した。幸島観察所内で常駐職員が幸島とニホンザルの講義を行った。質疑応答も活発に行われた。

2021-B-44
代表者 鈴村崇文
幸島のニホンザルの観察

五ヶ瀬町(報告者:鈴村)

五ヶ瀬町立の小学校4校合同の修学旅行で見学を受け入れた。生徒33名、教諭8名、計41名であった。人数が多かったが引率も多く安全に配慮しながら行う事が出来た。間近でニホンザルの行動を観察し、生徒たちからたくさん質問を受けた。

2021-B-45
代表者 鈴村崇文
幸島のニホンザルの観察

美郷町(報告者:鈴村)

美郷町立西郷義務教育学校の修学旅行での見学を受け入れた。参加者は生徒13名教諭3名、計16名であった。技術職員が野生のニホンザルを近くで観察しながら解説し、疑問に思ったことなどを質問してもらいそれに答えた。

2021-B-46
代表者 鈴村崇文
幸島のニホンザルの観察

延岡市(報告者:鈴村)

延岡市立上南方小学校の修学旅行での見学を行った。生徒18名教諭4名、計22名の参加であった。野生のニホンザルを間近で観察しながら技術職員からの説明を受けた。生徒からの質問にもたくさん答えてもらった。

2021-B-47
代表者 鈴村崇文
幸島のニホンザルの観察

諸塚村(報告者:鈴村)

諸塚村立諸塚中学校の修学旅行での見学を行った。生徒10名教諭3名計13名の参加であった。野生ニホンザルを観察しながら解説を受けた。生徒たちからのたくさんの質問にも答えてもらった。