京都大学野生動物研究センター 共同利用・共同研究
共同利用・共同研究拠点
絶滅の危機に瀕する野生動物(大型哺乳類等)の保全に関する研究拠点

拠点の目的・概要

近年の人間活動によって、生物多様性は急速かつ大幅に劣化している。これを克服するためには、生命の調和ある共存を見据えた学問の推進と、環境教育や普及活動の実践が求められている。本拠点は日本で唯一の野生動物研究の拠点となり、野生動物を保全し、人間との調和ある共存に貢献することを目的とする。このための科学的な取り組みとして、新興の学問である「ワイルドライフサイエンス」の確立と発展をめざす。

野生動物の保全に資する研究を推進するため、1)当センターが管轄する、国内外の野外観察施設、チンパンジー飼育施設、遺伝子および細胞・生理分析施設、野生動物遺伝資源データベースなどの施設および情報の共同利用を行う。2)これらの施設だけでは対応できない重要な課題については、参加する研究者に消耗品や旅費などを支援し、共同研究を進める。3)国内の連携動物園・水族館を中心として研究と教育普及を行い、域外保全と動物福祉に資する研究を推進する。4)海外連携機関との国際共同教育研究をすすめ、海外の絶滅危惧種の保全に資する研究を進める。

野生動物の保全には幅広い活動が必要であるが、本拠点では、特に次の役割を担う。科学的なアプローチによる、野生動物の保全や人間と動物の共存に資する研究を推進し、その知見を蓄積すると共に問題解決を目指す。動物園・水族館に研究者が出向いて研究することに加えて、動物園・水族館に所属する職員による研究も支援し、野生動物の基礎研究と共に実践的な域外保全や動物福祉の課題を解決する。国内外の大学院生を含む若手研究者、動物園・水族館に所属する職員を積極的に支援し、教育と人材育成を進める。シンポジウムや研究会などを通じて、大学等の研究機関、動物園・水族館といった組織や対象動物の枠を越えた、新たな交流の場を設け、情報交換や学際研究の推進を図る。

野生動物の保全研究は後発の学問分野である。その重要性は理解されつつあるものの、大学等の研究機関において、中心となるような組織は見あたらない。また、動物園と水族館にはそれぞれに全国的な組織はあるが、野生下の動物まで視野に入れた、研究に基盤を置く組織も見あたらない。研究室や動物園、水族館など、それぞれに極めて研究熱心で、能力の高い人材がいる。こうした方の熱意と能力を生かして、野生動物の保全研究を進めていくには、それをサポートし、相互の交流を推進する拠点は有効である。また、野生動物の保全研究は、分子生物学から人間の社会に至る、非常に幅広い領域にまたがるものである。それぞれの学問領域での研究の深化と共に、分野を越えた交流や共同研究が問題の解決には有効であり、様々な研究領域や人材をつなぐ拠点が必要である。また、野生動物の保全は、一般市民にも関係の深い問題であり、教育普及活動が重要である。多くの関係者が集まることにより、教育普及活動にも効果的な貢献を行う。

(共同利用・共同研究拠点 認定申請書より一部を抜粋・改変)