遺伝子いでんしから見るニホンイヌワシの多様性たようせい保全ほぜん

佐藤悠

ニホンイヌワシ

学名:Aquila chrysaetos japonica

イヌワシ6亜種あしゅのうちの1亜種あしゅで、日本およ朝鮮ちょうせん半島の一部にのみ生息します。もっとも大きな猛禽類もうきんるいのうちの一つであり、翼開長よくかいちょうは2mにたっします。急峻きゅうしゅんな山地に生息し、主要しゅようえさはノウサギやヘビです。繁殖期はんしょくきは1~3月であり、通常つうじょう2たまごみますが、兄弟間闘争とうそうにより2番目のひなはほぼ確実かくじつ(99%)に死亡しぼうするとされています。

ニホンイヌワシのオス
イヌワシ/秋田市大森山動物園、風(オス)
イヌワシ/秋田市大森山動物園、風(オス)
イヌワシ生息地(岩手県)

ニホンイヌワシは日本で最大級さいだいきゅう猛禽類もうきんるいです。山の奥深おくふかくにすみ、天狗てんぐの由来だとも言われています。プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスのシンボルにもなりました。しかし、日本に500羽ほどしか生息しておらず、絶滅危惧種ぜつめつきぐしゅに指定されています。

わたしはイヌワシの遺伝的いでんてき多様性たようせいや進化の歴史れきしを研究し、保全ほぜんに役立てたいと思っています。遺伝的多様性いでんてきたようせいひくく、みなが同じような性質せいしつだと、病気や気候きこう変化へんかにより、いっせいに弱ってしまう危険きけんがあります。しかし、遺伝的多様性いでんてきたようせいが高く、様々な性質せいしつを持つ個体こたいがいれば、きびしい環境かんきょうになったとしても生きのこ個体こたいの数は多くなります。遺伝的多様性いでんてきたようせいがどの程度ていどなのか、どのようにたもたれてきたのかを解明かいめいすることは保全ほぜんを考える上で非常ひじょう重要じゅうようになります。

日本のイヌワシの分布

遺伝解析いでんかいせきには血液けつえきや羽根、つばさなどの試料しりょう必要ひつようです。しかし、野生のイヌワシを捕獲ほかくし、試料しりょうることは非常ひじょう困難こんなんです。そこでわたしは、や止まり木に落ちている羽根やたまごからつばさなどを試料しりょうとして使っています。このような試料しりょうからDNAを抽出ちゅうしゅつし、塩基配列えんきはいれつなどを分析ぶんせきします。られるDNAは低濃度ていのうどなため、PCRという手法しゅほうで100万倍以上いじょう増幅ぞうふくします。その後、同じ試料しりょうを何度もり返し分析ぶんせきを行うことで配列や遺伝子いでんしかた確定かくていさせます。そのようにられたデータを遺伝解析いでんかいせき用のプログラムで解析かいせきすることで、遺伝的多様性いでんてきたようせい個体こたい識別しきべつ、親子関係かんけい家系かけい分布ぶんぷなど多くのことがわかります。つばさの中の遺伝子いでんし解析かいせきすることで、どの季節きせつに何を食べているかもわかります。こういった情報じょうほうをまとめて考えることで、遺伝的いでんてき多様性たようせいや進化の道筋みちすじが見えるようになってきます。

実験室で、羽などの試料(サンプル)からDNAを抽出し遺伝子の型を調べます。
ここでニホンイヌワシの遺伝子の型を調べます
イヌワシの羽根
イヌワシの羽根
イヌワシの卵の殻
イヌワシの卵の殻

これまでの研究で、ニホンイヌワシは「個体数こたいすうが少ない」が「遺伝的多様性いでんてきたようせいが高い」ことが分かってきました。個体数こたいすうが少ないのになぜ多様性たようせいが高いのか、高い多様性たようせいはイヌワシが生きのこっていくうえでどのように影響えいきょうするのかを明らかにすることが、今後の課題かだいです。このような仕組みを解明かいめいし、イヌワシを保全ほぜんするためには何を行う必要ひつようがあるのかを明らかにしたいと思っています。

イヌワシ生息地 イヌワシ生息地(岩手県)
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パソコンで遺伝子のデータ解析を行います。
パソコン

遺伝子のデータ解析を行います。