音声からさぐるアマゾンカワイルカの水中行動

山本友紀子

アマゾンカワイルカ

学名:Inia geoffrensis

南米大陸なんべいたいりく を流れるアマゾン川に生息する淡水性たんすいせいのイルカです。体長はやく2m、長い口先とピンクの体色が特徴とくちょうで、にごった川の中でエコーロケーションを使ってえさの魚をつかまえます。密漁みつりょうなどの人間活動の影響えいきょうから個体数こたいすう減少げんしょうし、絶滅ぜつめつが心配されています。

アマゾンカワイルカ分布域
赤線:アマゾンカワイルカの分布域ぶんぷいき
音声を聞いてみよう

アマゾンカワイルカの音声を聞いてみよう!

アマゾンカワイルカの成熟せいじゅくオス。長いくちばしと小さい目が特徴とくちょう

ブラジルの赤道直下、熱帯ねったい雨林の間をうように流れるアマゾン川には、ピンク色の体に、小さい目、長い口先を持ったアマゾンカワイルカがすんでいます。アマゾンカワイルカはアマゾン川の流れの速い本流から細い支流しりゅうまで広く生息しています。体の関節かんせつがとてもやわらかく、浸水林しんすいりん 注1 のようなあさくて障害物しょうがいぶつがたくさんあるようなところも体を曲げて自由自在じざいに泳ぐことができます。主な食べ物はアマゾン川の魚で、数センチの小魚から50センチ以上いじょうにもなるタンバキという大きな魚まで食べていることが知られています。

アマゾンカワイルカはアマゾン川の生態系せいたいけいの中でも高次捕食者こうじほしょくしゃとして重要じゅうよう役割やくわりたしていますが、密漁みつりょう混獲こんかく船舶騒音せんぱく そうおん、ダム建設けんせつなどの人間活動の影響えいきょうによって、個体数こたいすう急激きゅうげき減少げんしょうしており、絶滅ぜつめつ危機ききひんしています。かれらの生態せいたいを正しく理解りかいして保全ほぜんを進めていくことが緊急きんきゅう必要ひつようです。たとえば、かれらがいつどこでえさを食べたり休んだりしているかを知ることは、人間活動の影響えいきょうらしアマゾンカワイルカと人間が共生きょうせいする社会をつくっていくためにはかせません。しかし、にごったアマゾン川では水中行動を観察かんさつすることがむずかしく、かれらの行動についてはほとんど何もわかっていませんでした。

注1

浸水林しんすいりん

雨期になると水没すいぼつする森林。魚やイルカなど多くの水生生物にとって重要じゅうような生息場所。

浸水林 (イガンポ林)
エコーロケーションの仕組み

エコーロケーションの仕組み

イルカのおでこから発せられた超音波ちょうおんぱのクリックスが前方の物体(この場合は魚)に当たり、反射はんしゃした音がイルカの方向へ ね返ってくる。イルカはあごのほね反射はんしゃ音を聞き、魚までの距離きょりや大きさなどを知ることができる。

そこで、わたしはアマゾンカワイルカの水中行動を明らかにし、かれらの保全ほぜんに役立てようとこれまで研究を行ってきました。見えない水中行動を調べるために、わたしはアマゾンカワイルカの音声を使うことにしました。イルカの仲間なかまはエコーロケーションで周囲しゅうい探索たんさくするために、クリックスとばれる超音波ちょうおんぱつねに発しています。この音声を複数ふくすうの水中マイクに同時に録音ろくおん解析かいせきすることで、水中でのイルカの位置いちや行動を知ることができます。これまでの研究で、アマゾンカワイルカは昼間には浸水林しんすいりん近くの浅い場所に、夜間には深くて流れのゆるやかな場所に集まってくることなどがわかってきました。

それでもアマゾンカワイルカの生態せいたいについてはまだまだわからないことが多く、たとえばいつどのようにえさを食べているのか、親子やオスメスがどうやっておたがいにコミュニケーションをとっているかなどは今後の課題かだいとしてのこされています。これからもアマゾンカワイルカの音声を手がかりにかれらの水中行動の解明かいめいに取り組んでいきたいと思っています。

個体識別用にイルカの背中の写真を撮影する 調査ちょうさ中の様子。個体識別こたいしきべつ用にイルカの背中せなかの写真を撮影さつえいする。

アマゾンカワイルカの調査小屋 調査ちょうさ小屋。川の上にいている。 調査ちょうさ中はここで他の研究者と共同きょうどう生活を送る。
研究者に聞いてみました!あなたの研究の相棒はなんですか?
録音機材

イルカの種類しゅるい録音ろくおんしたい音によって何種類しゅるいも使い分けます。


ビニールテープ

水の中でも接着力せっちゃくりょくが弱まらないので便利べんり調査ちょうさには必須ひっす


結束バンド

ビニールテープよりも強くとめたいときに。ビニールテープと結束けっそくバンドがあればだいたい機材きざいのセッティングはできる。