京都大学野生動物研究センター 共同利用・共同研究

野生動物研究センター 共同利用研究会 2019

本研究会は残念ながら中止させていただきます。
新型コロナウィルスの感染の危険性や、これに付随する社会的な制約などを勘案し、中止という判断に至りました。
ご参加を予定されていた方、発表を予定されていた方には、大変申し訳ありません。
また、中止の判断が直前になってしまいましたことを重ねてお詫び申し上げます。 2020年2月28日

主催 野生動物研究センター
共催 京都大学霊長類学・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院

日時 2020年3月3日(火) 10:00-17:00ぐらい
場所 京都大学 野生動物研究センター セミナー室(地下1階) アクセス
会場への行き方は こちら

はじめに

 京都大学野生動物研究センターは、野生動物や動物園や水族館館の飼育下の動物を主な対象として、基礎研究や保全研究を推進しています。このような活動をより広範に進めるため、共同利用・共同研究として、当センター以外の方の研究をサポートし、共同研究を行っています。
 この研究会では、これまでの共同利用研究の成果を中心に様々な研究成果や、調査・研究の取り組みを発表していただきます。また、これまでの活動を踏まえて、よりよい共同利用研究のあり方を考えて行きたいと思います。共同利用研究に外部から参加する方、共同利用研究の計画や審査をする方、共同利用を受け入れる内部のスタッフなど、様々な立場の相互理解が進むことで、よりよいものにしていけると期待しています。
 これまでの共同利用用研への参加の有無にかかわらず、どなたでもご参加いただけます。野生動物や、動物園や水族館の動物を対象とした、調査・研究に関心のある方のご参加も歓迎します。



プログラム

10:00~10:05 村山美穂(京都大学・野生動物研究センター・センター長)
        開会の挨拶

       座長 杉浦秀樹(京都大学・野生動物研究センター)
10:05~10:35 菊池隼人(帯広畜産大学大・野生動物学研究室)
       ニホンモモンガの暮らしを自動撮影カメラで探る
10:35~11:05 宮本慧祐(東京農業大学・農学研究科)
       人工哺育タヌキを用いた新奇環境への順応過程に関する研究
11:05~11:10 休憩

11:10~11:40 宮西葵(近畿大学・農学研究科)
       御蔵島周辺に棲息する野生ミナミハンドウイルカの社会的性行動
11:40~12:10 風間健太郎(早稲田大学・人間科学学術院)
       カモメ類の急速な個体数減少とその要因
12:10~13:30 休憩

       座長 木下こづえ(京都大学・野生動物研究センター)
13:30~14:00 木村 嘉孝(宇部市ときわ動物園)
       ボンネットモンキー(Macaca radiata)の血液成分と体毛中アミノ酸組成の関連性調査
14:00~14:30 川瀬啓祐(日立市かみね動物園)
       飼育下キリンにおける血中遊離脂肪酸および血中ケトン体濃度の定量
14:30~15:00 宮川悦子(横浜市金沢動物園)
       飼育下コアラ (Phascolarctos cinereus) における尿中ステロイドホルモン濃度測定による生理的変化の評価
15:00~15:20 休憩

       座長 森村成樹(京都大学・野生動物研究センター)
15:20~15:50 発表者未定
       
15:50~16:20 大島由貴(名古屋港水族館)、松波若奈(京大院農)
       名古屋港に来遊するスナメリの生態研究:水族館の取り組みと野外調査報告
16:20~16:35 休憩

16:35~17:20 意見交換・共同利用研究への要望など

参加申込

申込なしでご参加いただけます。が、事前にご連絡いただけると、準備がしやすくなって助かります。
なお、懇親会に参加される方は、事前にお知らせください。人数が多くなりそうなので、入れる会場を予約しないといけません。ご協力をお願いします。

発表要旨

菊池隼人、押田龍夫
(帯広畜産大学・野生動物学研究室)

ニホンモモンガの暮らしを自動撮影カメラで探る

哺乳類には群れまたは単独という二つの社会構造が存在し、状況に応じて夫々に利点がある事が知られている。両社会の中間的な位置付けとして、‘一時性群れ’があるかもしれない。一時性群れを作る哺乳類は、群れの形成・崩壊の反復によって、両社会の利点をある程度のレベルで享受している事が予測される。この様な群れは、‘huddling効果’を睨んだ小型哺乳類の集団越冬行動において見られる可能性がある。何故集団が形成され、そして崩壊するのか?という視点から小型哺乳類の集団越冬過程を追跡する事で、哺乳類の社会進化の解明に重要な情報が得られると期待されるが、夜行性かつ小型の種を観察する事は困難である。本研究では夜間の観察が可能な自動撮影カメラを主に用いて、夜行性の小型哺乳類であるニホンモモンガにおけるhuddling行動の季節変化の解明を試みた。加えて、調査から得られた課題をふまえた現在の試みについて紹介する。





宮本慧祐 1、高井亮甫 1、岡野貴大 1、東野晃典 2、石川真理子 3、松林尚志 1
1 東京農業大学・野生動物学研究室、2 よこはま動物園、3 夢見ヶ崎動物園)

人工哺育タヌキを用いた新奇環境への順応過程に関する研究

タヌキ (Nyctereutes procyonoides) は、日本を含む極東アジアに広域分布し、山地から市街地まで様々な環境に順応している。また、国内における傷病獣保護の最も多い種である。幼獣保護も毎年発生しており、人工哺育された後に放野されている。しかし、放野後にモニタリングした事例はなく、その生存の可否は不明であった。タヌキが広域に分布する適応性の高い種であることを考えると、本種の新奇環境への順応過程を調査することは生態を理解するうえで重要である。本発表では、人工哺育個体5個体、比較対象の傷病獣である成獣4個体を調査対象とした追跡調査の結果について紹介する。





宮西葵 1、小木万布 2、酒井麻衣 3
1 近畿大学大学院農学研究科、2 御蔵島観光協会、3 近畿大学農学部)

御蔵島周辺に棲息する野生ミナミハンドウイルカの社会的性行動

近年、日本動物園水族館協会(JAZA)によって追い込み漁による野生鯨類の捕獲個体の搬入が禁止され、野生個体を飼育することが難しくなった。そのため、飼育個体が健全な社会性をたもち、自然に繁殖できるように環境を整えることは急務である。しかし水中に生息しているイルカにおける性行動の情報は少なく、社会行動や社会的性行動が繁殖行動と関係があるかどうかも不明である。そこで本研究では、ミナミハンドウイルカの社会的性行動の機能解明の一助とすることを目的に、オスの行動に焦点をあて、水中行動観察を行なった。本発表ではその研究結果を紹介する。



風間健太郎
(早稲田大学人間科学学術院)

カモメ類の急速な個体数減少とその要因

かつて日本で最も普通に見られたウミネコとオオセグロカモメは、近年その個体数を急速に減少させている。個体数減少要因は特定されていないが、餌であるイカナゴやホッケの減少、捕食者である外来ネコやオジロワシの増加、人間による攪乱や生息地破壊などが考えられる。カモメ類を適切に保全管理するためには減少要因の評価とその軽減措置が求められる。本講演では、講演者がこれまでカモメ類を対象として推進してきた研究成果の概要と今後の展望について述べる。


漁港に群れるオオセグロカモメ


ウミネコのヒナを捕食する外来ネコ

木村 嘉孝
(宇部市ときわ動物園)

ボンネットモンキー(Macaca radiata)の血液成分と体毛中アミノ酸組成の関連性調査

動物園において、簡易的に動物の栄養および健康状態を知る方法として、糞便性状、採食量、活力、外貌、体重といった指標で評価をしているが、これらの指標は個体の栄養状態を客観的な数値として表すことが難しいため、一般的に栄養状態の把握には血液を用いる。しかし、サンプル採取には資格、技術が必要であり、侵襲的な方法でもあるため、動物への負荷が大きい。体毛は容易に採取できるサンプルとして牛では遺伝子検査用のサンプルとして広く用いられている。体毛は、タンパク質が主な構成成分であるが、マウスにおいてタンパク質摂取量と体毛中システイン含有量に正の相関が見られていることから、体毛中アミノ酸含有量の変化により栄養状態を把握できる可能性がある。今回の発表では、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC/MS)を用いてボンネットモンキーの体毛のアミノ酸分析を行い、血液成分との関連性を検討する調査の途中経過を紹介する。




液体クロマトグラフィー 質量分析装置(LC/MS)

川瀬啓祐 1, 2、平山久留実 3、河野成史 1、伊藤秀一 4、八代田真人 3、椎原春一 1
1 大牟田市動物園、2 現: 日立市かみね動物園、3 岐阜大学応用生物学部、4 東海大学農学部)

飼育下キリンにおける血中遊離脂肪酸および血中ケトン体濃度の定量

キリンの甚急性死亡症候群は負のエネルギーバランスにより引き起こされるといわれている。この疾患は、病歴もなく突然死亡し、剖検時には脂肪の漿液性萎縮や肺水腫等が認められる。本研究では、栄養状態の把握を行うことを目的に飼育下のキリン(雄1頭、雌1頭)において、定期的な採血を行い、ウシなどの家畜でエネルギー状態を示す指標である遊離脂肪酸とケトン体の測定を行った。さらに摂餌量およびボディコンディションスコアの測定を行った。雄個体においては、週に一回の体重測定を行った。年間を通して採血を実施し、供試個体の健常値を得ることができた。また、雄個体において、年間の詳細な体重の変化も観察することができ、飼育管理において重要なデータを得ることができた。

宮川悦子 1、木下こづえ 2
1 (公財)横浜市緑の協会 金沢動物園、2 京都大学野生動物研究センター)

飼育下コアラ (Phascolarctos cinereus) における尿中ステロイドホルモン濃度測定による生理的変化の評価

動物園動物のストレスを含む健康状態は、表情、食欲、便状といった外見上の変化で判断されることが多い。ところが、コアラの場合、一日のうち18~20時間を休息あるいは睡眠に費やすため、彼らのストレスを含む健康状態を外見から的確に判断することが難しい。そこで、非侵襲的に採取が容易な尿を用いて、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)、発情ホルモン代謝産物(E1G)および黄体ホルモン代謝産物 (PdG)濃度を測定することでコアラの生理的変化の評価を行った。同時に、個体の行動を記録し、上記ホルモン測定値との関連性を調べた。その結果、獣舎工事などの環境変化に伴ってコルチゾール濃度の上昇が確認された。また、雌では、発情時にE1G濃度およびコルチゾール濃度の上昇が見られ、その後、交尾があった場合のみPdG濃度の上昇も得られた。本種の尿を用いたホルモン濃度測定例は本研究が初めてであり、本種の生理的変化の評価に有用であることが示された。



 
桃井綾子 1、桜井泰憲 2
(1 青森県営浅虫水族館、2 函館頭足類科学研究所・北海道大学名誉教授)

津軽海峡および陸奥湾におけるキタオットセイをはじめとした海棲哺乳類の目視調査

青森県営浅虫水族館では,青森県周辺海域でのキタオットセイ,トド,ゴマフアザラシ,クラカケアザラシ,ワモンアザラシの保護事例がある.特に近年,キタオットセイについては沿岸での発見事例が増加傾向にある.そこで,青森県周辺海域での鰭脚類の来遊を解明するための初期段階として,津軽海峡~陸奥湾内における来遊状況の把握を目的にフェリーからの目視調査を行った.2018年11月~2020年1月の期間に月に1~2回,青森-函館の定期航路便を使用して,海棲哺乳類の探索を行った.延べ17日間の調査で,キタオットセイ,カマイルカ,ネズミイルカ,シャチ,ミンククジラの5種類の海棲哺乳類を発見した.キタオットセイは11月~4月に出現し, 1月と2月は他の月より突出して多く見られた.また出現位置は津軽海峡内に限定されており,水深100~200mの大陸棚上に集中していた.なぜ,この海域で集中していたのか?索餌越冬回遊の可能性について考察した.





○大島由貴 1、○松波若奈 2、木村里子 3、神田幸司 1、栗田正徳 1、倉橋佳奈 2、吉田弥生 4、荒井修亮 5
1 名古屋港水族館、2 京大院農、3 京大データ研セ、4 東海大海洋、5 京大フィールド研セ

名古屋港に来遊するスナメリの生態研究:水族館の取り組みと野外調査報告

伊勢湾奥にある名古屋港は大規模な総合港湾であり、その海域環境は人間活動の影響を大きく受けています。当海域において近年スナメリ (Neophocaena asiaeorientalis sunameri) の来遊が確認されていますが、詳細な生態は未解明でした。大都市の巨大港に現れるスナメリの実態解明と、名古屋市民など地域社会に対してスナメリの生息環境への意識向上を目的として名古屋港水族館、京都大学、東海大学は共同で研究・活動しています。本発表では、名古屋港水族館における一般向けのアウトリーチ活動と、京都大学野生動物研究センターの支援を受けて実施した、音響観測の結果について報告させていただきます。音響観測調査では、名古屋港と伊勢湾を繋ぐ2か所の開口部において、長期的な音響観測によって、スナメリの日周的・季節的な変動を明らかにすることを試みました。さらに、潮位や水温などの環境パラメータと、頻繁な船舶航行によるスナメリの来遊への影響を検討しました。


名古屋港のスナメリ(撮影 名古屋港水族館)

(特に断りのない場合、写真の著作権は発表者にあります。許可なく使用しないでください)