京都大学ブータン友好プログラムについて

活動目標

京都大学が全学を挙げて、ブータン王国と研究・教育・社会貢献のイコールパートナーシップの構築を目指します


総合大学としての京都大学の学術力を国際貢献に大きく活用するため、京都大学の人文社会系、理工系、生命系など個々の部局(研究科、研究所、センター)が得意とする学術的領域を束ねて、ほぼすべての領域を包合する学術領域を構築し、その大きな学術成果の社会への貢献を、従来の狭小地域・対象から、大きく一国を対象としたアウトリーチ国際活動へと展開します。

設立の経緯
前列右:ケサン・ワンチュク王妃、中央:王妃母堂、左:王妃姉君
1957

第3代王妃の来日
1957年晩秋、まだ国交がなかったブータン王国より、時の第3代ブータン国王王妃ケサン・チョデン・ワンチュク殿下が母堂と姉君とともに非公式に来日されました。 京都大学学士山岳会(AACK)仲間からの情報提供により来日を知った、京都大学教授の桑原武夫氏・芦田譲治氏が、一行を接遇し、京都の街を案内したのが、京都大学とブータン王国の最初の出逢いでした。
 
1958

ブータンを訪れた最初の日本人
このご縁がきっかけとなり、翌1958年、植物生態学者の中尾佐助氏(京都大学卒・AACK会員)が、ブータンへ日本人初の入国を果たします。 このブータンでの調査の模様は、1971年に著書「秘境ブータン」として発表されました。 また現在では、大阪府立大学「中尾佐助スライドデータベース http://nakao-db.center.osakafu-u.ac.jp/」にて、 同調査の際に撮影されたスライド約1,300点を見ることができます。

中尾佐助氏とダショー・西岡
JICAの農業指導員として1964年にブータンに派遣された西岡京治氏は、中尾佐助氏が大阪府立大学で指導した学生でした。 西岡京治氏は長年にわたってブータンの農業発展に尽力し、「ダショー」という尊号が与えられました。
 
1969

桑原武夫氏・松尾稔氏による調査隊
1969年には、桑原武夫氏や、 松尾稔氏(京大工学部教授のちの名古屋大学長)が率いた京都大学ブータン学術調査隊が、ブータンを訪れています。

 
京都大学ブータン学術調査隊の記録

こちらのページで、 1969年の京都大学ブータン学術調査隊(隊長:松尾稔氏)の記録がごらんいただけます。

 
1985

マサコン(Masa Gang)峰初登頂
ブータン王国と京都大学の交流は連綿と続いており、 1985年には、堀了平氏(京都大学病院長)の率いた 京都大学ブータンヒマラヤ学術登山隊による、 ブータン・ヒマラヤの未踏峰のマサコン峰(7200 m)初登頂が達成されました。
 
当時の足跡をたどる

2011年11月に派遣された第7次訪問団が、京都大学山岳部1985年の隊と同じルートをたどるトレッキングをおこない、当時と同じ場所・同じアングルでの写真撮影を試みました。 こちらのページで、その写真がごらんいただけます。

 
2010

京都大学ブータン友好プログラムの発足

2010年10月19日、松沢哲郎氏(京都大学霊長類研究所教授)、松林公蔵氏(京都大学東南アジア研究所教授)らで構成されたブータンへの訪問団が、 第4代国王に拝謁し懇談の機会を得ました。 この懇談をもって、京都大学ブータン友好プログラムは正式に発足いたしました。

懇談が終わりお別れの時、国王からは「ブータンとの永い関係をもつ京都大学が、日本とブータンの両国友好の推進に尽力するよう」期待のお言葉をいただきました。 日本とブータン王国が、国の大小を超えたイコールパートナーとして相互交流をなおいっそう深めることを目的とし、 京都大学そして当プログラムがその架け橋となるべく、多様な教育・研究を展開推進してまいります。

活動内容

各活動の概要および最新情報は、研究プロジェクトのページをご覧ください。


京都大学ブータン友好プログラムの活動は、 健康(Health)、文化(Culture)、安全(Safety)、生態系(Ecosystem)、相互貢献(Mutual contribution)を、5つの柱としています。

健康


ブータンでは、第四代国王がGNP(国民総生産, Gross National Product)にかわるGNH(国民総幸福, Gross National Happiness)を提唱し、憲法でも「国家は国民総幸福の追求のために必要な諸条件の促進に努めなければならない」と定められています。 地域在住高齢者の生活習慣病・日常生活機能低下の予防事業が東南アジア研究所により行われています。首都にあるティンプー王立病院へは霊長類研究所・西澤和子氏を新生児科医として長期で派遣しています。また、医学部附属病院からも医師および看護婦ら医療スタッフの派遣が行われています。 2015年2月には、医学部附属病院の協力により、ブータン王国初の医科大学院・Khesar Gyalpo University of Medical Sciences of Bhutanが設置されました。

文化


ブータンでは、チベット仏教を国教とし伝統的な暮らしを守りつつ、それと並行して、初等教育の時点から英語での教育が熱心に行われています。 教育学研究科では、比較教育学の視点からの野外研究をおこない、親子関係や家族の心理学的研究もすすめています。

安全


ブータンは、ユーラシアプレートとインドプレートが衝突している地域に位置しているため、山がちな地形です。 地滑りや、近年ではマグニチュード6クラスの地震が観測されています。 また、気候変動にともなう地球温暖化の影響で、氷河湖決壊が発生し洪水による被害が出ています。 防災研究所による、災害の危険性評価と都市計画にもとづく安全で安心な街づくりへの学術的貢献が行われています。

自然


ブータンは国土の70%以上を森林が占めています。面積は南北に約250kmと九州と同程度の広さですが、インド平原の続きの標高100mから7541mの未踏峰ガンケル プンツム(Gangkar Puensum)の頂きまで7000mを超える高低差があります。 地形の険しさにより、森そして貴重な動植物がたくさん残されています。その自然を深く知り、保全する試みにも参画しています。 京都大学霊長類研究所等により、ラングールやアッサムモンキーなどの降雪地帯にすむサル類、氷河の融雪と関連した表層藻類、ヤクとウシをかけあわせたゾー・ゾッキョなどを対象とした研究が進められています。

相互貢献


ブータンとの交流を促進するため、訪問団の派遣や招聘団の受け入れを行っています。 京都大学からは、これまでに合計11隊の訪問団を派遣し学問の裾野を広げました。公募により大学院生・学部生の参加者を積極的に募ることで、本学ならではのフィールド教育をおこない次世代のブータン研究者を涵養する効果も生み出しています。 ブータンからは3回の招聘を行い、ブータン王立大学副学長(学長は国王)らによるワークショップを開催いたしました。 これらの交流事業によって、相互の見識を深めあい、イコールパートナーとしての今後の連携がますます強まることを展望しています。
活動期間

2010年-2017年