幸島のサル

幸島には現在約90頭のニホンザルが生息しています。
このページでは幸島に棲むサルたちについて紹介します。

幸島サル ニホンザル母子

幸島のニホンザルの生活史

ニホンザルはヒト以外の霊長類で最北に生息するサルです。日本固有種で、北は下北半島、南は屋久島を限界に分布しています。複雄複雌群を形成し、群れで生活しています。幸島の場合、大きい群れは現在50頭前後ですが、他の地域では200頭近くに上ることもあります。群れには序列があり、頂点はアルファオス(第一位のオスの意、いわゆる「ボスザル」)と呼ばれます。サルのアカンボウは夏に産まれ、産まれた後は母親と共に生活します。数か月するとアカンボウどうしで遊ぶ姿も見られます。 そして7歳前後になるとオスは群れを離れ、ヒトリザルとして生活を始めます。このころには性成熟し、繁殖も可能になっています。しばらく「一人暮らし」をし、その後また群れに戻ってきますが、中には群れに戻らずに一生を終える個体もいます。一方メスは、基本的に元の群れに留まり続け、出産や子育てをします。性成熟した個体は冬になると繁殖期を迎えます。発情したサルの顔やおしりは真っ赤になり、あちこちで交尾している姿を観察することができます。この頃、ヒトリザルも群れの周辺に現れ、群れのメスと交尾しようとしますが、しばしば群れのオスに追い払われます。オスもメスも発情のタイミングや好みなどの問題で、すんなり交尾することもあれば、拒絶することもあります。性成熟を迎えたサルは2-3年おきの出産を繰り返しながら、だいたい16歳くらいまで生きます。

幸島 ニホンザルの群れ

幸島のサルの調査

調査を始めた当初から、全ての幸島のサルには名前がつけられ、一頭一頭個体識別されています。個体識別をすることで、様々なデータを個体ごとに記録することが可能になり、同時に正確な頭数把握にもつながります。名前のつけ方にはいくつかルールがあります。オスには動物系の名前、メスには植物系の名前をつける兄弟は同じ文字で始まる(ex カメ、カバ、カケス)同じ名前は二度と使えないできるだけ3文字以内このような命名ルールの下、60年以上に及ぶ母系の家系図が作成されています。

幸島 ニホンザルの体重測定

また、幸島では毎月サルの体重測定を行っています。体重は個体の状態を表す重要なパラメーターのひとつです。体重の値はその個体の生存や繁殖と密接な関係があると考えられるためです。一方で、通常野生動物で体重データを得るのは非常に難しいため、野外でこのような長期データを持つ調査サイトはありません。幸島では、体重計の上に餌を置き、それを食べるためにサルが飛び乗るのを待ちます。非常にシンプルですが、サルが人馴れしていて、かつ体重計にのると餌がもらえることを学習していないとできない方法です。また、サルのコントロールも重要になります。上位の個体が何度も来てしまうため、ただ待つだけでは下位の個体の体重を測れません。そこで、別の場所に上位の個体をおびき寄せたりしながら、うまく個体をコントロールして順番に体重を測定していきます。そのため、体重測定には各個体の性格を把握した上でのハンドリングが要求されます。