雪氷生物学のページ

雪氷生物ホームページ

雪氷生物アルバム

氷河のしくみと氷河生態系

研究テーマ

アイスコアの微生物解析
微生物のアルベド低下効果
クリオコナイトホールとは?
デブリカバー氷河の生態系

雪氷生物フィールド紹介

最近の氷河,雪渓調査

卒業研究,修論,博論要旨集

氷河関係リンク


本ページに掲載の記事・写真・カット等の転載を禁じます。
すべての著作権は幸島研究室に帰属します。
(C) Copyright 1997-1999, Kohshima-lab.

氷河のしくみと氷河生態系

日本には氷河がないので,日本人には氷河を正確にイメージするのが難しいかも知れません.氷河とは,雪からできた氷が流動しているものです.寒冷な極地や高山では,降った雪が夏の間にとけきらずに翌年に持ち越され,その上に翌年の雪が降りつもります.こうして雪が何十メートルも堆積すると,底の方では雪が圧縮されて氷になります.さらに,この氷が何十メートルも堆積すると,底の方では氷の結晶が大きな圧力によって変型しだすため、固体である氷が液体のようにゆっくりと低い方へと流れるようになるのです.これが氷河です.標高が低いところまで流れ下った氷は,気温が高いため解けてなくなってしまいます.したがって、氷河は年間通して雪が降り積もり,氷が生産される上流部(涵養域)と,氷が解けてなくなってゆく下流部(消耗域)の二つの部分に分けることができます.また,この二つの領域の境、氷の生産量と消耗量が等しい部分を平衡線といいます.涵養域はふわふわの雪の環境で,消耗域はかちこちの氷の環境です.

 このように,同じ氷河の中でも大きく異なる環境があるため,それぞれの環境ごとに異なった氷河生物が生息しています.つまり,安定した雪環境である涵養域,安定した氷環境である消耗域,雪と氷環境が毎年入れ替わる平衡線付近にそれぞれ適応した生物群集が存在します.


 氷河はゆっくりと下流に流れています.氷河の上で生活する生物は,じっとしていると氷河の流れによって下流へ流され,やがて氷河の外にながされてしまいます.したがって,生物が氷河の上にとどまるためには,上流に向かって自ら移動しなくてはなりません.ヒマラヤのヒョウガユスリカやヒョウガソコミジンコは,成虫になると上流に向かって,ひたすら移動します.藻類などは,休眠胞子が風に飛ばされて上流へ運ばれると考えられています.