ネオンテトラ(Paracheirodon inessi)の体色の適応的意味について

池田威秀 幸島司郎(東工大・生命理工)

ネオンテトラはアマゾン川原産のカラシン科淡水魚である。本研究ではネオンテトラの体色が持つ適応的な意味を、生息地の環境および体色の変化から探ってみた。本来の生息地の水の色であるブラックウォ−タ−中でのネオンテトラの見え方を分析した結果、ブラックウォ−タ−は短波長光を選択的に吸収し、青いラインを黒っぽく目立たなくすることがわかった。逆に赤い色ははっきりと見えた。このことはネオンテトラの色彩、特に青いラインに関しては目立つよりむしろ隠れるための色彩、つまり隠蔽色として機能している可能性を示唆している。体色の日変化および光条件による変化を分析した結果、夜間は色褪せて全体が白っぽくなっていたが、照明を当てることによって昼型の色彩になることがわかった。このことは体色パターンの切り替えが光条件により行われていることを示している。また、ブラックウォーター中では昼型の色彩は夜型よりも目立たないこと、昼型の体色は背景の明るさに応じて隠蔽効果を高めるように調節されているらしいことが明らかになった。以上の結果は、ネオンテトラの青い色が隠蔽的に機能していることを支持している。


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