立山・室堂平における積雪中のバクテリア密度分布

○宮本康司、幸島司郎、竹内望、飯田肇、長田和雄、木戸瑞佳、矢吹裕伯、中尾正義、上田豊、川田邦夫

Stratigraphy of bacterial density in snow cover at Murodou, Tateyama Mts.

K.Miyamoto, S.Kohshima, N.Takeuchi, H.Iida, K.Osada, M.Kido, H.Yabuki, M.Nakawo, Y.Ageta, K.Kawada

[はじめに] 氷河や雪渓などの雪氷中にも、昆虫や藻類などの様々な生物が生息している。特に、藻類などの雪氷微生物は、アイスコア解析の新たな環境指標として、また汚れ形成による雪氷面アルベドの低下との関係から、最近注目されている。しかし、雪氷中のバクテリアについては、その生態はまだほとんど明らかになっていない。そこで今回は、融解期に積雪表面で繁殖するバクテリアの起源を明らかにすることを目的に、季節分解能が高い大量の積雪が形成される立山・室堂平(標高2450m)において、融解前の積雪層中のバクテリアの種類と密度分布を調査した。

 [方法] 積雪採取は1998年3月21日に行った。積雪の層位や密度、雪温、化学成分分析も実施している(別発表)。全ての試料は分析まで冷凍保存し、融かした直後にホルマリン固定した試料をフィルター上に濾し取り、DNAに特異的に結合する蛍光色素(DAPI)で染色後、蛍光顕微鏡下でバクテリアを検出・計数した。同時に鉱物粒子など、他の微粒子の計測も行った。

 [結果と考察]  試料からは球状バクテリア(直径1μm程度)と融雪期に増殖する桿状バクテリア(幅1μm、長さ3μm程度)が検出された。雪温は全層マイナスであったため、これらのバクテリアは積雪中で繁殖したものではなく、降雪や大気からの降下によって積雪中に保存されたものと考えられる。球状バクテリアは桿状バクテリアの約10倍の密度で含まれていた。どちらのバクテリア密度プロファイルにも(図1)、4m以深(12〜1月の積雪)では低めで安定、表面付近2m(2〜3月の積雪)では変動が激しく、時折高いピークが現われる傾向がみられた。これは冬季と春季の気象状況の違いと関係している可能性がある。試料にはシリカと思われる透明な鉱物粒子(0.5〜6μm)や、有機的な土壌粒子と思われる暗色粒子(0.5〜4μm)なども含まれていた。大会では、これらの粒子や化学成分との関係を検討するとともに、走査電顕による分析結果も発表する予定である。本研究は科学技術庁平成10年度地域先導研究による成果の一部である。


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