ワカケホンセイインコの集団ねぐら:ねぐら内でのインコの行動

96/3 小川 恵一郎

ワカケホンセイインコはインド中南部とスリランカを原産とする帰化鳥である。昼間は花やつぼみ、果実や冬芽、樹皮などを求めて数羽程度の採食集団単位で行動し、日没30分ぐらい前になると50羽ぐらいの群を1単位として特定の4、5本の木に集まって集団ねぐらを形成する。このねぐら形成の意味については諸説あるが、よく分かっていない。本研究ではねぐらの機能を明らかにするために、行動の種別と寝場所の分布を中心に調査を進めた。

(方法)

大岡山キャンパス南2号館近くの銀杏並木の中ににおよそ500羽の規模のねぐらがあるが、このインコは20年以上もこのねぐらを利用しており、間近に観察できる珍しいねぐらである。そこで、南2号館屋上にビデオを設置して記録したものをもとに、飛来から就寝までに焦点を当てて調査を行った。

(結果考察)

インコ達は飛来の後、ねぐらとなっている木の枝先から内部へと入り込み、高さ約20mの銀杏の地上15.0〜18.5mの狭いところに集中して毎日ほぼ一定の寝場所を形づくっていることがわかった。この形をスリーピングエリアとした。

最初の1羽が飛来した時間を0分として、行動頻度の時間変化を調べたところ次のようになった。

まず、全ての飛来がわずか8分間に終了する。この後大声で鳴きながら移動を繰り返し、8分から15分の間が音の大きさのピークとなる。15分までには全てのインコがスリーピングエリアに入り、その後静まっていく様子が見られる。そしておよそ30分ぐらいで全て寝場所が確定し、静まり返る。

鳴き声の種類について細かく見ると、数種類の鳴声のそれぞれ頻繁に聞こえる時間帯が異なっていることがわかった。特に全てのインコの寝場所の確定前後でその違いは顕著であった。

移動以外の目立った形式としては喧嘩が見られる。喧嘩の頻度は鳴き騒ぎの大きさとは必ずしも一致せず、喧嘩が鳴き騒ぎの原因ではないことが示唆された。この喧嘩についてはスリーピングエリアに入った後静まっていく過程に置いてよく見られるので、ねぐら内でのより良い寝場所の確保のために争っているのではないかと思われる。

また喧嘩の結果は先に居座っていたほうが勝つことが多く、早い者勝ちで寝場所が決まっていくことが示唆されたたので、寝場所の確定順を記録し、場所の選好性に着目した。捕食に対して、或は物理的安定性を意識して寝場所を選んでいるであろうと考えて、有意性があるか検討中である。

ねぐらの形成は群を作ることで警戒の目を増やし捕食者に襲われる危険性を減らすためと考えられているが、大きく鳴き騒ぐのは捕食者に発見され易くなる要因でもあり、ねぐらの中でとっているインコの行動ははそれを反映したものとは考えにくい。ねぐらの機能を明らかにするためにはさらなる調査が必要である。


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