技を盗むチンパンジー:効率のよい道具使用テクニックを他者から見て学ぶ
Basis for cumulative cultural evolution in chimpanzees: social learning of a more efficient tool-use technique.
Shinya Yamamoto, Tatyana Humle, Masayuki Tanaka
山本真也, Tatyana Humle, 田中正之
DOI: 10.1371/journal.pone.0055768本論文では、チンパンジーが道具使用「テクニック(技法)」を観察によって学習し、他者が見せる効率の良いテクニックへと方略を改善させることを明らかにしました。
京都大学霊長類研究所でおこなった実験で観察された道具使用は、ストローでのジュース「吸い」と「浸し釣り」の2つです。どちらも同じ道具(シリコンチューブ)を使い、同じ場所(壁にあいた直径1cmの穴)で同じ対象(ジュース)に対しておこなわれる「テクニック」ですが、効率が大きく異なります(「吸い」:容器内の50ccを30秒以内、「浸し釣り」:1試行10分間で最高でも20cc)。9個体を個別にテストしたところ、4個体は「吸う」テクニックを、残る5個体は「浸し釣る」テクニックをみせました。そこで、この
「浸し釣る」5個体を「吸う」モデルとペアにしたところ、最終的にすべての個体がより効率の良い「吸う」テクニックを観察して学習
しました(4個体はチンパンジーモデルを見て、1個体はヒト実験者が「吸う」のを見て学習)。
この研究のポイント(先行研究と異なる点)は、①単純な模倣戦略(刺激強調)では説明できないテクニックの社会学習、②効率のよいテクニックへの改善、の2つです。