ふんからわかるヒョウの獲物えもの

仲澤伸子

アフリカヒョウ

学名:Panthera pardus pardus

ヒョウは世界中でもっとも広範囲こうはんいに生息している野生のネコ科動物です。獲物えものとする動物はアフリカだけでも92しゅ以上いじょうで、そのなかでも体重25kgほどの獲物えものをもっともこのみます。自分でった新鮮しんせんな肉だけでなく、ウジがわいた死肉も食べます。

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提供:大谷ミア
オスのアフリカヒョウ
オスヒョウ(パズー)
メスのアフリカヒョウ
メスヒョウ(サン)

わたしは東アフリカのタンザニアにあるマハレ山塊さんかい国立公園というところでアフリカヒョウの調査ちょうさをしています。ヒョウは肉食動物なので、近づくことは決して安全ではありません。夜の森を歩くとまれにヒョウとおぼしき動物に遭遇そうぐうすることがありますが、ヒョウがこちらをじっと見つめて警戒けいかいしているのに近づくことはできませんし、懐中電灯かいちゅうでんとうの光をあてつづけることもためらわれます。そこで、ヒョウの直接ちょくせつ観察かんさつは行わず、森の中を歩き回って、ヒョウのふんを拾ってあらい、中にふくまれているほねや毛、さらにDNAの分析ぶんせきをすることで、森林に生息しているヒョウがどんな動物を獲物えものとするのか、その食性しょくせいさぐろうとしています。

アフリカヒョウの糞に入っていたヤマアラシの毛
ふんの中のヤマアラシの毛
サバンナモンキーの毛(拡大)
サバンナモンキーの毛

ブッシュバックの毛(拡大)
ブッシュバックの毛

ヒョウは獲物えものをかなりざっくりとくだいて飲みむらしく、かれらのふんからは消化しきれていない獲物えものほねや毛がたくさん出てきます。ヒョウの内臓ないぞうはよほど頑丈がんじょうなのか、ふんの中からは、20cmほどの霊長類れいちょうるい 注1はしからはしまでまっすぐにまっていることや、霊長類れいちょうるいあしの手首から先がそのまま出てくることがあります。また、とても先がするど危険きけんなヤマアラシのはりもバキバキにれた状態じょうたいふんの中から出てきます。ヤマアラシはこのはり捕食者ほしょくしゃから身を守っていると言われていますが、ヒョウはおかまいなしに食べているようです。このように分かりやすいものもありますが、通常つうじょうふんに入っているのは大量たいりょうの毛やほねのかけらです。これらのすべてを同定に使えるわけではありません。ほねの場合、歯、指骨しこつ、またはあしほね関節かんせつ部分であれば、その形から動物しゅを知ることができます。毛は、顕微鏡けんびきょうでキューティクルの模様もよう断面だんめんの形を観察かんさつし、しゅの同定を行います。霊長類れいちょうるいの毛のキューティクルは波のような形で、波形と波形の間がところどころつながっています。一方、ウシ科のブッシュバックなどははしご形の模様もようをしています。こうした情報じょうほうから、ひとつひとつのふんの中身を解析かいせきしています。

今までの調査ちょうさから、マハレのヒョウはダイカーやブッシュバックといった地上性ちじょうせいのウシ科の動物だけでなく、樹上性じゅじょうせい霊長類れいちょうるいも食べていることが分かってきました。ヒョウは地上でりをするとされています。樹上じゅじょう移動いどうする霊長類れいちょうるい捕食ほしょくするのは至難しなんの業でしょう。いったいかれらはどうやって霊長類れいちょうるい捕食ほしょくしているのでしょうか。これからもいろいろな方法ほうほう模索もさくしながら、かれらの食性しょくせいさぐっていきたいと考えています。

注1)霊長類れいちょうるい:ヒトやチンパンジー、ニホンザルといったサルの仲間なかま総称そうしょう

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