ず~ぜよ

動物園大学5 in 高知

本イベントは盛況のうちに終了いたしました。多数の方々のご来場誠にありがとうございました。

写真撮影および提供:高知県立のいち動物公園


実施報告はこちらのページをご覧ください。
  • 日付:2015年3月15日 (日)  午前9:45から(9:30受付開始)
  • 会場:高知県立のいち動物公園
  • 参加無料・予約不要 ※当日は動物園大学にご参加される大人の方、先着150名入園料無料!
 

巻頭言

京都大学野生動物研究センターは、野生動物、特にその多くが絶滅に瀕している大型動物に関する教育研究を行っています。現在、15名の教員と40名以上の大学院生や若手研究者が、世界各地のフィールドや国内外の動物園・水族館で様々な野生動物を研究しています。また、野生動物保全のために、アマゾンなどの自然生息地に、野生動物を飼育、半飼育、野生下で観察・研究・保全できる、理想の動物園・水族館ともいえる施設「フィールドミュージアム」を整備する国際プロジェクトも進めています。本研究センターの大きな特色の一つは、動物園や水族館との連携を重視していることです。野生動物を絶滅から守るには、自然生息地での研究・保全だけでなく、動物園・水族館で飼育されている貴重な野生動物の研究や保全、教育への利用を推進する事が重要だからです。我々は、日本の動物園・水族館は、将来、地域の自然や生物を「知り」、「楽しみ」、「守る」ための重要な拠点になるだろうと考えています。このような考えから、本センターは設立当初から、国内外の研究機関との共同研究、野生生息地での野外調査、ゲノム研究の基盤整備に加えて、地域動物園・水族館との連携を推進してきました。2008年のセンター設立当初には3園館だった連携動物園・水族館も、現在では14園館にまで増え、連携の輪は着実に広がりつつあります。また、文科省共同利用・共同研究拠点「絶滅の危機に瀕する野生動物(大型哺乳類等)の保全に関する研究拠点」として、全国の研究者や動物園・水族館職員と、野生動物保全に関する公募共同研究を実施しています。今回で第五回目を迎えるシンポジウム「動物園大学」は、連携動物園との共同企画によるもので、日ごろの連携の成果を広く一般の方々に知っていただくことを目的としています。本シンポジウムでは、動物園・水族館職員、研究者、NPO による共同研究の成果や、ユニークな活動の紹介の他、数々の楽しい企画が予定されています。このシンポジウムによって、動物園・水族館職員と大学などの研究者、動物に関心を持つ多くの人々との交流と連携がさらに深まることを願っています。

2015 年3 月15 日
京都大学野生動物研究センター長
幸島 司郎


京都大学野生動物研究センターは 、野生動物や動物園などの飼育下の動物を主な対象として、基礎研究や保全研究ならびに野生動物や自然環境への理解を深めるための教育活動などを推進しています。このような基礎研究や教育活動をより広範に進めるため、共同利用・共同研究として、当センター以外の方の研究をサポートし、共同研究を行っています。日本で唯一の野生動物保全研究の拠点を構築し、野生動物の保全をよりいっそう社会に根付いたものにしていくことを目指しています。
http://www.wrc.kyoto-u.ac.jp/ (公募は毎年1月)
 

開催によせて

私ども公益財団法人横浜市緑の協会は、指定管理者として市内3動物園(よこはま動物園、野毛山動物園、金沢動物園)や横浜山手西洋館等の管理運営を行うとともに、よこはま緑の街づくり基金をもとに、都市緑化事業の推進を図っている団体です。


ズーラシアは、昨年4 月に「アフリカのサバンナ」エリアが一部オープン、来年春にはグランドオープンが予定されております。また、本年4 月24 日には、開園15 周年を迎えます。さらに当協会は、10 月に創立30 周年を迎えます。昨年10 月には、創立30 周年の記念事業の皮切りとして、当協会と横浜市、JICA によるウガンダ野生生物教育センターへの技術協力事業である「ウガンダ野生生物保全事業」の取り組みを紹介する「国際シンポジウム」を実施しました。記念すべき年となる今年は、「歴史的建造物の保存と活用」についてのシンポジウムや「横浜市の公園と動物園」についての国際シンポジウムを予定しておりますが、今年最初に、「よこはまのどうぶつえん」での動物たちの命の誕生についてご紹介できるこのようなシンポジウムを開催できることを大変嬉しく思っております。


平成23 年2 月に当協会と京都大学は「野生動物保全に関わる研究及び教育普及の連携に関する協定書」を締結し、ズーラシアのチンパンジーやインドゾウでの研究活動が始まり、チンパンジーの親子や群れの行動調査やインドゾウの夜間の行動調査を行い、成果をあげることができました。このたび、京都大学および連携する動物園が協力して行うプロジェクト「動物園大学」の4 回目となるシンポジウム「ず~ぜよ。動物園大学④in 横浜」が横浜市で開催されることとなりました。昨年からは新たに高知県立のいち動物公園も連携園として加わり、こうした取り組みが全国に広がっていくことを心強く思っております。


今回のシンポジウムも各園からの動物や動物園での新たな一面が垣間見える話題提供、ポスター発表を行います。午後からは「動物園・水族館の将来」をテーマに講演・ディスカッションを行います。会場の皆様からもどんどん質問していただき、活発な意見交換が行われることを期待します。

高知県立のいち動物公園は、広い自然環境のなかで家族の憩いの場として、動物とふれあい伸び伸びと一緒に遊びながら、かつ、動物の生態をも学べるような動物公園として整備されてきました。

私ども公益財団法人高知県のいち動物公園協会は、当動物公園の指定管理者として公園の維持管理運営、動植物に関する調査研究、動物の知識及び愛護思想の普及、及び野生動物の保護等を行い、自然に対する認識を深めることにより、県民福祉の増進に寄与すべく日々努力を重ねてまいりました。

動物の展示については、「人も動物もいきいきと」を基本理念として、広々とした自然豊かな環境で生き生きと活動できるよう工夫をしています。また、国内で唯一のブチハイエナの家族展示など特色ある展示も行っています。昨年はニホンカワウソに一番近い種といわれるユーラシアカワウソも展示仲間に加わりました。さらに、年末にはアミメキリンに待望の赤ちゃんが生まれ、展示場を元気に走り回っており、園内はますます賑やかになりました。このたび、京都大学及び連携する動物園が協力して情報交換・共同研究・教育普及を行うプロジェクトの5回目となる「ず~ぜよ。動物園大学⑤in 高知」が当園で開催されることになりました。今回は、「動物園動物の健康と福祉」をテーマに、日本各地の動物園の飼育係がそれぞれの取り組みなどの紹介を行うことになっています。活発な意見交換が行われ、「動物園動物の健康と福祉」に向けた実り多い会議となることを期待します。


2015 年3 月15 日
公益財団法人高知県のいち動物公園協会
理事長 中澤卓史

人と動物をつなぐ

人類がこの地球上に登場して数百万年、長く環境と調和しながら進化を遂げて10 万年程前に私たちホモ・サピエンスが生まれたのですが、有史以来の文明発生や産業革命を経て人間社会優先の世界に一変してしまいました。すなわち、自然や動物に多大な負荷を掛けながら自分たちの繁栄を謳歌してきたのです。ところが、資源の枯渇や食糧不足、地球温暖化や生物多様性の衰退、希少種の絶滅などを目の当たりにして、私たちはようやく後戻りできないあたりにまで来てしまったことに気付き始めたのです。
今日、私たちは動物を単なる物や商品としてではなく、この地球号でいっしょに旅をする仲間として、いわゆる「人と動物の共生」を重視した考え方にシフトしつつあります。このことは野生動物や動物園動物についても然り。今、私たちは、彼らとの接し方、向き合い方について大幅に見直すべき時に来ています。
動物園には、そうした「動物たちとの関係」を考えるためのきっかけやヒントがそこかしこにあります。生きた本物の動物を観察し、彼らを識り、理解し、さらには彼らが歩んできた道程や故郷の環境まで思いを馳せることができます。しかし、そうした立場としての動物園は社会的に充分認知されていない、裏を返せば動物園の情報発信力、啓発力がまだまだ発展途上という反省を抱かざるを得ないのです。
そうした意味でもこの『動物園大学』は、市民と動物園を橋渡しする大変貴重な機会を提供して下さいました。全国各地の動物園の取り組みや動物たちの情報・トピックスなど、みなさんといっしょに識り、学び、考え、意見交換して参りたいと思います。

2015 年3 月15 日
高知県立のいち動物公園
園長 多々良成紀
 
 

プログラム

09:30 開場・受付(入口ゲート)
09:45 開会のあいさつ 中澤卓史(公益財団法人高知県のいち動物公園協会)
10:00-12:00

動物園の飼育係によるレクチャー

がんばれミルキー!脳性麻痺のチンパンジー「ミルキー」の成長記
高知県立のいち動物公園 山田 信宏

2013年7月14日にミルキーが誕生しました。母親は難産のため出産できず麻酔をかけて出産の手伝いをしました。赤ちゃんの心臓が動いていなかったため急いで蘇生処置をした結果、命を助けることができました。しかし、その後ミルキーは生まれもって体に障害があることが分かりました。いまは障害のある子供たちをサポートしている専門家とともにミルキーのリハビリを行ってひとりで出来ることを増やそうと協力しています。

高齢動物のケアとみとり
わんぱーくこうちアニマルランド 吉澤 未来

アニマルランドが開園してもうすぐ22年になります。高知市立動物園から連れてきた動物も、開園にあわせてやってきた動物も、高齢動物と呼べる年齢になってきました。お年寄りの動物、それも野生動物を扱うのは様々な難しさがあります。当園のお年寄り動物たちを紹介しながら、彼らへのケアや快適に暮らしてもらう工夫、そして彼らの最後をどう私たち飼育員や獣医師が迎えるかのお話をしようと思います。

障害のあるマントヒヒの群れへの復帰とその後
愛媛県立とべ動物園 熊岡 悟史

野生のマントヒヒはリーダー雄と複数の雌と、その子供たちからなる家族的な集まりを最小単位として、これらが複数集まり高度な社会性を営んでいる。愛媛県立とべ動物園では、現在16頭(♂7♀9)のマントヒヒを飼育しているが、障害のある個体が2頭いる。アンリ(♀)はケンカが原因で片足を失い、治療のため群れからの分離と復帰を繰り返した。イブナ(♀)は生まれつき目が見えないうえに生後6カ月齢で骨折、約1か月間の分離治療の末、群れへ復帰した。現在、2頭は群れの一員として他のマントヒヒたちと一緒に生活している。

ツキノワグマ サクラの老後ケアとみとり
京都市動物園 川口かおる

京都市動物園でも高齢動物が増えてきています。そして、加齢に伴い身体的な問題を抱える動物もいます。2014年11月26日に亡くなったツキノワグマのサクラも推定39歳と国内で確認されている中では最も長生きしたツキノワグマで、生態への理解や生きることの大切さを多くの人に伝えてくれました。今回は、そんなサクラの生涯をご紹介するとともに、老後の生活環境を改善するために行った取組や疾病の治療・術後管理についてお話します。

隻腕のチンパンジー、アキコ
名古屋市東山動物園 近藤 裕治

皆さんは動物園で片腕や片足、片羽の動物を見たことがありますか? 野生下では時々観察されるようですが、動物園では展示に相応しくないとしてバックヤードで飼育されるのが常識でした。しかし、東山動植物園では群れの中で生活する隻腕のチンパンジーを見ることができます。今回はアキコの左腕の異常発見から切断手術、個別飼育、群れ復帰と進めていく中で、飼育担当者や獣医師が何を思い、どう行動したかについてお話します。

11:15 演者と会場参加者のフリートークⅠ
12:00-13:00 休憩
13:00-14:20

ポスター発表(終日掲載)  

場所:どうぶつ科学館2F
研究者や動物園スタッフが、日ごろの研究活動について、また動物や動物園のあれこれについて、 わかりやすくポスターの前でお話しします。ぜひ足を運んでみてください。

14:20-16:55

動物園の飼育係によるレクチャー

アフリカゾウ「マリー」と「エリ」の幸せを考えて
熊本市動植物園 松本 松男

当園の「マリー」と「エリ」は昭和59年に来園したメスのアフリカゾウです。オスが同居していた時期もありますが、繁殖には至りませんでした。その2頭も今年で35歳、34歳となります。遠くない将来、高齢化をむかえるであろう彼女らになにをするべきか?国内のアフリカゾウの現状をみて飼育員は何を考えればいいのか?2頭の幸せを考え、熊本市動植物園で取り組んでいることをお話します。

フタコブラクダ 「ツガル」の老後ケア
(公財)横浜市緑の協会 野毛山動物園 山口 進也

昭和57年に来園したメスのフタコブラクダ(愛称:ツガル)は野毛山動物園のシンボルとしてお客様に親しまれました。関節炎のため立てなくなり、それに伴う床ずれの悪化を乗り越えながら、ガイドや誕生日会などのイベントによって多くのお客様に愛着を持って頂くことができました。そのようなお客様に支えられ昨年、飼育下では世界最高齢と思われる推定38歳で惜しまれつつ他界しました。そんなツガルさんのお話をします。

目にケガを負ったワオキツネザルの治療奮闘話~もとの群れへ帰るまで~
(公財)日本モンキーセンター  中尾汐莉

2014年の春に誕生したオスのレンネットは、生後3ヵ月の時に、ケガにより両目が白く濁る「外傷性角膜炎」になりました。群れの中での治療は難しかったため、ケガから3日後、母親や群れの仲間から分けて、治療に集中させることにしました。毎日、写真で記録を取りながら、約半年間、1日数回の目薬をさし続けました。ケガが良くなりもとの群れへ帰るまでの過程を、レンネットと私たちスタッフの奮闘ぶりと共にご紹介します。

15:05 演者と会場参加者のフリートークⅡ
15:50

のいち動物公園とわんぱーくこうちの園長のお話

動物園のこれからの歩み
高知県立のいち動物公園 園長 多々良 成紀

今日、生物多様性の重要性が世界でも日本でも叫ばれています。一方、ある有名学童文具から昆虫写真が削除されるというショッキングな話題がありました。これらがいかに懸け離れた思考であることか唖然とするばかりですが、これも現代社会の一面を反映した事実です。動物園にはこうしたギャップを埋める多くの可能性があります。そのシステムは貧弱で社会的な認知もまだまだですが、我々は一歩一歩着実に進まねばならない。

おらんくの動物園
わんぱーくこうちアニマルランド 園長 渡部 孝

わんぱーくこうちアニマルランドは、昭和25年に高知城内に開園した高知市立動物園が市制100周年を記念して、平成5年に移転オープンしました。アニマルランドでは、郷土産動物に重点をおき活動を展開しています。園内で行う域外保全活動だけでなく、実際の生息地における調査や域内保全活動、得られた知見を用いた環境教育、野生動物の疫学調査など地域性を活かした活動について考えてみませんか。

16:10

自由討論-動物も歳をとるし、病気にもなる!-

コーディ-ネーター:伊谷原一(京都大学野生動物研究センター教授 /公財 日本モンキーセンター園長)

動物園で生活する動物たちもケガや病気になります。だれが、いつ、どこで、なぜ、そしてなにをすればよいのか、など、動物のケガや病気について考えることは、動物園の重要な仕事のひとつです。どんなに大けがをしても、大病を患っても生き続けようとする動物や、それを必死で支える飼育員の姿からは、生きることの意味や命の重さを感じる人もいるでしょう。またこの問題に動物園がどのように取り組むかは、人間を含むあらゆる動物が地球という生命の星でどのように共存するかという問題とも関係しています。高知の動物園の2園長、来場のみなさんとともに議論していきたいと思います。

16:45 閉会のあいさつ 伊谷原一(京都大学野生動物研究センター・教授)
16:55 閉会
 

ポスター発表

申込受付は終了いたしました。

ポスター発表の募集

野生動物についての研究、飼育、動物福祉、保全、あるいは環境教育、動物園に関する発表であればどのようなテーマでも結構です。
発表参加費は無料です。

申込方法
下の内容をメール本文に直接 書いてご送付ください。
提出先Eメールアドレス:mail

件名を「ず~ぜよ。ポスター発表申込」としてください。

申込者の氏名
申込者の所属先
申込者の連絡先(電子メール)
発表タイトル
発表者全員の氏名と所属先
発表内容の概要(100字以内)

※記入はすべて日本語あるいは英語表記(半角英数字)を使用してください。

申込締切
2015年2月25日 (水)


注意事項
当日配布するプログラムに、各ポスター発表の番号が記載されています。
その番号の掲示パネルにポスターを掲示してください。
ポスターの掲示スペースは、横841ミリ× 縦1189 ミリ(A0サイズ縦置き)を上限とします。
形式は自由です。
画鋲、テープ類は会場で用意します。

 

会場アクセス

のいち動物公園へのアクセス情報

 

動物園大学とは

動物園大学は、京都大学および連携する動物園が協力して、情報交換・共同研究・教育普及をおこなうプロジェクトです。
詳しくは動物園大学のページをご覧ください。

 

主催
京都大学野生動物研究センター

共催
高知県立のいち動物公園
京都市動物園
名古屋市東山動物園
(公財)日本モンキーセンター
(公財)横浜市緑の協会 (よこはま動物園、野毛山動物園、金沢動物園)
熊本市動植物園
わんぱーくこうちアニマルランド
愛媛県立とべ動物園
後援
(公財) 日本動物園水族館協会
高知県教育委員会
高知市教育委員会
香南市教育委員会
共同利用・共同研究拠点事業
「絶滅の危機に瀕する野生動物(大型哺乳類)の保全に関する研究拠点」
京都大学 霊長類学・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院
高知新聞社
NHK 高知放送局
RKC 高知放送
KUTV テレビ高知
KSS さんさんテレビ
香南ケーブルテレビ