京都大学野生動物研究センターでは、水族館・動物園との連携を深め その成果を広く一般の方々にも知っていただくことを目的として、 「水族館大学」と「動物園大学」という、連携水族館・動物園との共同企画によるシンポジウムを開催しています。

京都大学創立1 2 5 周年記念

第3回 動物園水族館大学シンポジウム「福祉と保全のはざまで」

動物園大学
健やかな種の保存:持続可能な動物園の課題

日時:2022年3月26日 10:20~17:00
オンライン配信&会場
会場:日本モンキーセンター

 
無事閉幕いたしました。ご参加いただきありがとうございました。
開催報告

2022年3月25日・26日の2日間、2021年度第3回動物園水族館大学シンポジウム「福祉と保全のはざまで」を実施した。1日目は、アザラシやラッコ,イタセンパラや負傷鳥獣などの国内種の域内・域外保全に果たす動物園・水族館の役割について専門家6名が講演し、対談形式で4名が討論をおこなった。オンライン形式の開催で、事前登録した188名が視聴した。2日目は、野生動物研究センターと連携する動物園9園が、「持続可能な種の保全とその現実」と題する討論や各園の活動を紹介する講演(11演題)をおこなった。ウィズコロナに対応するために、日本モンキーセンターのメイン会場に加え、他の連携園8園にサテライト会場を開設し、3密を避けて各会場の参加者を限定しつつ、例年に準じた規模の参加者となるように工夫した。また、活動紹介は年齢を問わず親しめる内容のため、YouTube配信もおこなった。その結果、対面式会場で135名が参加し、YouTube配信を158名が視聴した。2日間、生物多様性保全を社会に根付かせるために行政・研究機関、動物園、水族館が進める多様な取り組みについて、市民に向けて広く発信する機会となった。

参加人数 
3/25:オンラインで188名、 3/26:対面で135名、オンラインで158名

 

参加方法

午前の部

日本モンキーセンター(愛知県犬山市 https://www.j-monkey.jp/) および協力動物園のサテライト 会場でご参加いただけます。

※日本モンキーセンターで参加される方は 当日開園前に整理券を配布します。(先着80名・入園料別途必要)

午後の部

各会場および京都大学野生動物研究センターのYouTubeチャンネルよりご参加いただけます

 
 

プログラム

3/26(土) 午前の部
10:20
趣旨説明
森村成樹 京都大学野生動物研究センター
10:30
連携園討論「持続可能な種の保全とその現実」
和田晴太郎 京都市動物園
吉澤未来 わんぱーくこうちアニマルランド
江口雄作 名古屋市東山動物園
前田洋一 愛媛県立とべ動物園
村田浩一 横浜市立よこはま動物園
小西克弥 高知県立のいち動物公園
野田亜矢子 広島市安佐動物公園
松本充史 熊本市動植物園
綿貫宏史朗 日本モンキーセンター
基調講演 「絶えず進化し続ける動物園~悩んだり狭間に陥っている暇などない!~」
村田浩一 横浜市立よこはま動物園
12:15
休憩
午後の部
連携園活動報告
13:00
安佐動物公園とケープハイラックス
原 廣史朗 広島市安佐動物公園
13:20
マシマシ論『1⇒2』
片岡裕貴 名古屋市東山動物園
13:40
コロナ禍における飼料費クラウドファンディング 「大切な動物たちの暮らしを守りたい!」
市原涼輔 日本モンキーセンター
14:00
ゴリラへの負担の少ない健康診断を目指して
安井早紀 京都市動物園
14:20
熊本市動植物園の取り組み:「屠体給餌プログラム」と 「ICT を活用した学校教育との環境教育」について
溝端菜穂子・井形尚史 熊本市動植物園
14:40
休憩
15:00
開園 30 周年記念事業 「のいち de どうぶつ体操♪」制作について
森本さやか 高知県立のいち動物公園
15:20
とべ動物園のカバの繁殖と国内の飼育状況について
佐々木善基 愛媛県立とべ動物園
15:40
家族同士で一触即発! ~エリマキキツネザル一家のお悩みを解決!~
門谷真奈 わんぱーくこうちアニマルランド
16:00
輝け若者たち~ゴールデンターキンの誕生と成長~
太田真琴 横浜市立よこはま動物園
16:20
国内最後になるであろう ベアードバクの飼育管理とその終活について
庄子泰之 横浜市立金沢動物園
16:40
チンパンジーのハズバンダリートレーニング始めました
伊原茂男 横浜市立野毛山動物園
17:00
閉会 挨拶
三谷曜子 京都大学野生動物研究センター
 

演者プロフィール・要旨

連携園討論「持続可能な種の保全とその現実」
和田晴太郎 京都市動物園・副園長
岐阜生まれ。北里大学獣医畜産学部を卒業後,青年海外協力隊に参加し,南米パラグアイ共和国で獣医師として家畜の診療や牛の人工授精等に携わる。1996年から京都市動物園に獣医師・学芸員として勤務。臨床獣医師から安全管理,研究教育担当を経て,現在,副園長として動物園運営に従事。ドローンでの園内撮影も担当。
吉澤未来 わんぱーくこうちアニマルランド・園長
静岡県浜松市出身です。大阪府立大学獣医学科を卒業してそのままわんぱーくこうちアニマルランドの獣医師として働きはじめました。縁もゆかりもなかった高知が、今では私の人生で一番長く住んだ地となりました。園長職になったため、担当動物が人間とトサシミズサンショウウオ30匹だけになり、ちょっと寂しいこの頃です。
江口雄作 名古屋市東山動物園・飼育第二係長
獣医師。名古屋市役所に入庁してから約10年は動物愛護行政などに携わり、6年前から東山動物園で勤務。飼育業務のマネジメントをしながら、東山動植物園再生プランによって次々と生まれ変わる新獣舎の計画などに勤しんでいる。
前田洋一 愛媛県立とべ動物園・園長
1962年山口県生まれ 誕生日がコンラート・ローレンツと同じことが自慢。宮崎大学農学部で動物行動学を学び、「ニワトリ組」で鶏の行動調査に勤しむ。1985年より動物園に勤務、1987年、道後動物園からとべ動物園の移転の際に(公財)愛媛県動物園協会に採用され、現在に至る。ニホンイシガメを中心としたエコトーンの生物の保全活動や地域での環境教育において愛媛県内の博物館、学校関係者と連携をとって活動している。
村田浩一 横浜市立よこはま動物園
1952年、神戸市生まれ。宮崎大学農学部獣医学科卒業。博士(獣医学)。1978年から23年間、神戸市立王子動物園に獣医師として勤務。2001年に日本大学生物資源科学部に転職し助教授を経て2004年に教授、2018年から特任教授。2011年から横浜市立よこはま動物園ズーラシア園長および横浜市立繁殖センター担当部長(現参事)を兼務。
小西克弥 高知県立のいち動物公園・飼育第2係長
大阪府出身。1991年高知県立のいち動物公園開園時に飼育係として就職。のいちで飼育しているほとんどの動物担当を歴任し、現在2度目のキリンを担当。好きな生き物は爬虫類で家庭ではカメとカエルを飼育。
野田亜矢子 広島市安佐動物公園・動物診療係長
兵庫県西宮市生まれ,名古屋育ち. 2002年から獣医師として安佐動物公園に勤務.解剖台の上の動物とHE標本をこよなく愛する病理屋.(公社)日本動物園水族館協会・教育普及委員会・学術研究部長.
松本充史 熊本市動植物園・副園長
鹿児島大学獣医学科卒業。熊本市役所に入庁し、動物愛護センター等勤務後、動植物園に配属。 獣医師として現場診療等を経て副園長となる。12年目。 趣味はスキューバダイビング、山菜取り、野鳥観察、城巡り、酒。
綿貫宏史朗 日本モンキーセンター・学術部 キュレーター
大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)も兼務し、国内飼育下類人猿の情報収集・データベース管理などの業務に従事。専門は動物園学で、動物福祉、個体群管理、コレクションプランなどに取り組む。
連携園活動報告
安佐動物公園とケープハイラックス
ケープハイラックスは、主にアフリカの岩山で群れ生活する小型の哺乳類である。広島市安佐動物公園では1974年に導入し、群れ飼育を継続してきた。その結果、1978年から累代繁殖に成功し、国内の動物園における繁殖拠点としての役割を果たすだけでなく、本種に関する様々な知見を集積してきた。近年では、個体識別による血統関係の把握や標本管理、教育普及にも取り組んでいる。本報告では、当園の活動を中心に本種の魅力を伝えたい。
原 史朗 広島市安佐動物公園
2018年に採用され、ゾウとハイラックスを担当する。大学時代の研究対象であるオオサンショウウオの調査チームにも所属し、スーパー飼育係になるべく日々勉強中。最近は、動物の飼育もさることながら、育児の大変さを痛感している。
マシマシ論『1⇒2』
東山動物園公式ブログにて掲載中のマシマシチンパンジーという動画内容に沿ってお話させて頂きます。(講演内容はマシマシチンパンジー100号を事前に閲覧して頂いたことを前提にお話させて頂きます!)。動物の内面を健全に飼育するとは?を軸に、動物へいかにアプローチしてどのような反応が得られたか、その反応に対しどのような手を打つべきかを多くの方と共有し、答えのないテーマを少しでも動物のために突き詰められればと思います!
片岡裕貴 名古屋市東山動物園
東山動物園にて飼育員として13年目、サイ、カバ、インコ、オオカミ担当などを経て現在はチンパンジーを担当。多くの先輩、動物から学んだ『動物の内面を健全に飼育する』という技術を動物に関わる方々と共に積み上げていきたいです!
コロナ禍における飼料費クラウドファンディング 「大切な動物たちの暮らしを守りたい!」
新型コロナウイルス感染拡大により日本モンキーセンターも大きな影響を受けました。そのためおこなったのが飼料費を募るクラウドファンディング。動物を飼育する上で毎日必要なエサ代の支援活動についてお話します。また日本モンキーセンターでは今まで何度かクラウドファンディングをおこなってきました。そのなかのワオキツネザルを飼育展示しているWaoランドのクラウドファンディングもご紹介します。
市原涼輔 日本モンキーセンター
日本モンキーセンター飼育員。飼育員歴5年。キツネザルやマカクなどを担当。飼料担当。園内のWaoランドで個体紹介や簡単なガイドをしています。またTwitterやYouTubeでも担当動物の紹介しています。
ゴリラへの負担の少ない健康診断を目指して
2021年11月,京都市動物園ではゴリラの健康診断を行いました。麻酔をかけての健康診断は動物の体にも心にも負担がかかりますが,健康管理のためには必要なことでもあります。ゴリラたちにとってできるだけ負担が少ない健康診断を目指して,今回は本番の約7か月前から毎週ゴリラたちと一緒に練習をしました。何をどうやって練習してきたのか,そして本番はどのようにして麻酔をかけたのか,健康診断までの過程を練習中のハプニングなども交えてお話しします。
安井早紀 京都市動物園
大学院でゾウの研究を行った後、2014年から京都市動物園で飼育員として働く。アジアゾウやキツネ・アナグマなどの日本産の哺乳類,ハリネズミなどの熱帯動物館にいる夜行性動物を担当した後,2017年からニシゴリラを担当している。現在は,ニシゴリラの他にクサガメやニホンイシガメを担当し,テンジクネズミやヤギなどのふれあい業務も行っている。
熊本市動植物園の取り組み:「屠体給餌プログラム」と 「ICT を活用した学校教育との環境教育」について
屠体給餌
動物園における動物福祉と身近な野生鳥獣被害の2つの問題を結び付け、それぞれの問題について参加者に考えてもらうことを目的とした「屠体給餌プログラム」を実施。今回は、実施時の動物の屠体に対する反応と参加者の意識の変化について報告。
ICT環境教育
コロナ禍による感染対策の制約の中、市全庁的なDX改革推進の動きや市内小学校全校児童へのタブレット配布等をきっかけに、コロナ禍の影響を受けない環境教育の取り組みとして、教育現場と一緒に授業計画から実施まで取り組んだ本事例について紹介。
溝端菜穂子 熊本市動植物園
岩手大獣医学科卒業。動物病院、宮崎市役所勤務後、熊本市役所入庁。保健所、動物愛護センターで勤務後、現在の動植物園に配属1年目。
井形尚史 熊本市動植物園
鳥取大獣医学科卒業後、熊本市役所入庁。食肉衛生検査所、動物愛護センター勤務後、現在の動植物園に配属4年目。
開園 30 周年記念事業 「のいち de どうぶつ体操♪」制作について
子供達が動物本来の動きをまねて,体を動かしながら楽しく学び,興味をもつきっかけ作りを目的としたオリジナルのどうぶつ体操を開園30周年記念事業の一つとして制作した.名称は「のいちdeどうぶつ体操♪」とし,楽曲制作は、子供向けあそびうたを数多く手がける(有)プランニング開の高橋晃氏に依頼。作詞,振り付けは職員で行い、動物の実際の動きや体の特徴を再現し,更に体のどの部分に効果的なのか体操的な要素も考慮した。
森本さやか 高知県立のいち動物公園
石川県出身。帯広畜産大学卒業後、2009年から高知県立のいち動物公園の飼育係として勤務している。現在、カワウソ3種とアナホリフクロウを担当。JAZA ユーラシアカワウソ専門技術員。
とべ動物園のカバの繁殖と国内の飼育状況について
1990年70頭いたカバの頭数は年々減少傾向にあり2020年12月31では46頭(オス19頭、メス27頭)になっています。とべ動物園では、2021年4月に10年ぶりの繁殖に成功しました。当園のオスはサンフランシスコ動物園生まれで、国内では血統的に貴重な個体です。今回は、母獣の体形と乳房の変化、さらに子の誕生から現在に至るまでの行動や採食の様子、国内の飼育の変遷状況も併せて紹介します。
佐々木善基  愛媛県立とべ動物園
1987年9月道後動物園からとべ動物園に引っ越しを迎えた年に採用され、リスザルやニホンザルの捕獲や保定を経験し、翌年の開園からサル山と水牛の担当となる。その後シマウマやシロオリックスなどいろいろな動物たちの担当を経験して、3年前から今の担当となり、切磋琢磨して取り組んでいる。
家族同士で一触即発! ~エリマキキツネザル一家のお悩みを解決!~
野生では絶滅寸前でありながら、国内の動物園では繁殖を制限している希少種がいる現実があります。当園のクロシロエリマキキツネザルはオス4頭、メス2頭の家族で飼育中。2017年より繁殖制限のため、オスメス別々で飼育管理を行っています。オスメスの別居が引き金となりオス同士の闘争が始まりました。群れで生活する動物は単独で飼育するべきではないという考えのもと、長期間の隔離は行わず、闘争を緩和し、生活の質を向上させるための取り組みをご紹介します。
門谷真奈  わんぱーくこうちアニマルランド
愛媛県今治市生まれ。2008年大阪の専門学校卒業後、他園の臨時職員を経験。2017年高知市役所に採用され、アニマルランドに配属される。チンパンジー、キツネザル、水鳥を担当して5年。趣味は走ること。仕事に子育てに奮闘する毎日。
輝け若者たち~ゴールデンターキンの誕生と成長~
ゴールデンターキン。種名だけではどのような動物かイメージしにくいかもしれませんが、中国の急峻な山岳地帯に生息する巨大なヤギの仲間です。おとなのオスは350㎏にもなり、その名の通り金色の被毛が特徴です。よこはま動物園では、2019年に2頭のオスのゴールデンターキンが産まれました。出産準備や初めての展示場、父親との同居など、彼らの誕生から現在までの成長の様子について、飼育の裏側を交えてお話しします。
太田真琴 横浜市立よこはま動物園
2007 年に(公財)横浜市緑の協会に採用され、横浜市立よこはま動物園に配属となる。ツキノワグマ・モウコノロバを担当したのち、インドゾウ・オオワシ・カモメ類の担当を経て、現在ゴールデンターキンを担当。
国内最後になるであろう ベアードバクの飼育管理とその終活について
現在26歳のオスと25歳のオス計2頭を飼育している。寿命は約30年なので、長生きしたとしてもあと5年ほど。今後導入の予定はない。今のところ元気にしているが、かつて寒さのため体調を崩したり、体内で石ができてしまい痛みが出てしまったりなど不安要素も多い。そんな中、SNSに投稿された写真やコメントで世間的に人気が出ていることも事実である。残された時間を有意義に過ごすためにはどうすればよいか、現在の取り組みについて紹介する。
庄子泰之 横浜市立金沢動物園
2004年4月に横浜市入庁。金沢動物園インドゾウ担当として配属され現在は班長として在籍。アノア、ガウルなど希少草食動物の飼育を経験。バクはこれまでにベアードバク3頭、ブラジルバク2頭の計5頭の飼育に携わる。
チンパンジーのハズバンダリートレーニング始めました
現在野毛山動物園では、5歳から推定56歳まで、計4頭のチンパンジーを飼育しています。 当園ではこれまで、ライオン・ツキノワグマ・キリン等を対象にハズバンダリートレーニングを実施してきましたが、遅ればせながら2021年6月後半より、チンパンジーにも同トレーニングを導入しました。まずは体の各部位を檻越しに寄せさせ担当者が触れるという、基本動作の習得を目指しており、今回の発表では開始から約3か月間に渡るトレーニングの経過報告を行います。
伊原茂男 横浜市立野毛山動物園
2004年4月に(公財)横浜市緑の協会に採用され、よこはま動物園でインドゾウ、マレーバク、教育普及などを担当。2015年に野毛山動物園に異動し、ツキノワグマ、ダチョウ、ミヤコタナゴなどの担当を経て、現在チンパンジー担当2年目。
 
 

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