多様性を調べよう!

 保全に必要な基礎情報として、集団内での個体間の血縁関係、集団(地域、種など)間の系統関係、集団の多様性、などを遺伝子解析によって調べています。野生動物の多くの種では、多様性を調べるための遺伝マーカーが不足しています。そこで、次世代シーケンサーを活用して、マイクロサテライトマーカーを単離しています。従来法に比べて効率よく多数のマーカーを単離することができ、これまでにグラスカッター(西アフリカの齧歯類)、グレビーシマウマ、オオサンショウウオ、イモリ、絶滅危惧植物などで、新しいマーカーを報告しました。
 マーカーを用いて、群内の血縁関係、雄がどのくらい子供を残しているか、集団の多様性は維持されているか、雑種の識別など、社会や生態を理解するための情報が集まってきました。



 野生動物だけでなく、世界各地で古来から飼育されてきた在来家畜も絶滅の危機にあります。これらの家畜はメジャーな家畜に比べると生産性は低いものの、飼料効率がよい、耐暑性や抗病性がある、など、気候風土に合った遺伝資源を持っている可能性があります。これら在来家畜の遺伝的な特性を知る必要があります。
 そこで、エジプトの在来のハトやニワトリの多様性を調べ、保全が必要な品種の選定を行っています。

 在来家畜の生産性を向上させることで、野生動物の狩猟が減れば、保全にもつながります。西アフリカのガーナ大学との共同で、地元産のグラスカッター、ホロホロチョウのマーカーを単離し、家系を作成して有用遺伝子を探索しています。