相手の状況に合わせたチンパンジーの手助け行動

山本真也, タチアナ・ハムル, 田中正之

概要

チンパンジーは相手が何を必要としているかを理解し、それにあわせて利他行動を柔軟に変化させるのだろうか。本研究では、利他行動の文脈におけるチンパンジーの他者理解についてより詳細に検討した。

隣接する2つのブースのうち、片方には道具使用場面(ステッキ使用場面あるいはストロー使用場面)を設定し、もう片方のにはステッキ・ストローを含む7つの道具を与えた。ブース間パネルが透明な条件(「見える」条件)と不透明な条件(「見えない」条件)を48試行ずつ交互におこなったところ、どちらの条件でも道具使用場面の個体が穴から手を伸ばして道具を要求する行動がみられた。

しかし、渡し手の道具選択には2条件間に違いがみられ、「見える」条件では相手の状況にあわせて渡す道具の割合を有意に変化させていたのに対し、「見えない」条件ではそのような適切な道具選択ができなかった。5個体中1個体は「見えない」条件でも適切な道具を選択できていたが、この個体は道具を渡す前に穴から相手ブースを覗き見したあとに道具を選択して渡していた。

これらの結果から、チンパンジーが相手の置かれている状況を見て相手の欲求を理解し、それに応じて利他行動を柔軟に変化させていることが示めされた。同時に、相手の状況を理解していても、自発的には手助けしないことも示唆される。チンパンジーの利他行動の生起には状況の理解と要求の理解が別々かつ相補的に働いている可能性が考えられる。




Can see条件相手の道具使用状況がわかる場面です。このビデオではパン(右)はストローを必要としています。ストローを使えば壁に設置されたボトルからジュースが飲めます。パル(左)はしばらく遊んでいましたが、要求に応じてストローを選んで渡しました。

Cannot see条件相手の状況が見えない場面です。このビデオではクロエ(右)はステッキを必要としています。しかし、クレオ(左)はストロー・ホース・ハケの順に渡し、それでも要求が続いたので最終的にはステッキを渡しました。

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