ランタンプラン・ニュースレター

No.23  2000.4.12

ツォーカンの活動は順調です

クッキーを焼く

大変ごぶさたしております。ニュースレターNo.23をお送りいたします。今回は、昨年秋にランタンに行ってこられた貞兼代表によるツォーカン活動の現状報告です。桜が咲くまでにお届けしたかったのですが、事務局の都合で発送が遅れ、東京では桜の花も散ってしまいました。申し訳ありません。しかし、報告にあるように、ランタンツォーカン開発委員会(LTBS)の活動は順調ですので御心配なく。今後も基本的には彼等の自主努力にまかせ、活動を見守る予定です。今後もニュースレターで現地の様子を適宜お伝えしますので、御意見等およせください。

☆今後の活動予定とカンパのお願い
今後数年間は大きな現地活動をしない予定です。しかし必要があればすぐに人員を派遣できる体制は維持したいと思っています。できれば1年に1度程度、必要に応じて施設運営やLTBS活動に対するアドバイスのための人員を派遣したいのですが、これには年間20-30万円程度の予算が必要です。しかし現在の会の予算残高は10万円を切っており、なんとも心もとない状況です。会費としての資金援助のお願いはいたしませんが、皆様からのカンパや御寄付をお願いいたします。今後の活動については、会員集会や報告会を開催し、皆様の御意見を伺って、必要があれば改めて提案させていただく予定です。

振込先:ランタンプラン 郵便振替 01040−4−51106



ツォーカン製のチーズとパン。吉田さんと甲田さんから合格点をもらいました

LP99報告--公民館活動その後

 

北海道の友人から春の兆しのおたよりも届きました。鎌倉界隈では梅も満開を過ぎ、桜の蕾もふくらみ始めました。みなさまいかがお過ごしでしょうか?昨年秋にランタン村を訪問してきました。少し遅くなりましたが、以下にご報告いたします。

 公民館、ワークショップ、夜間学級、ガタ、電気の保守管理と今や一大事業となった公民館活動。自立運営を促す意味でも当面遠くから眺める事にしたものの、やはりちょっと心配で、2週間の滞在をしてきました。まず次の数字から見ていただきましょう。

LTBS会計報告(Nov.98~Nov. 99) 単位:Rs.
収入の部
 電気代(未徴集) チーズ工房 パン工房 ガタ その他
 61510(11329) 43765 50315 3000 1200

 VDC(村会議)よりの助成   12500
 外国人旅行者の寄付(主に日本人トレッカー) 13640
収入合計 185930

支出の部
 給料* ミルク買い上げ  原材料購入  維持管理費 その他
 45000(6ヶ月分) 27272 11379  13185  500
支出合計 97336

差引残額 +88594
 *初年度半年間、三人の専従者の給料分はランタンプランが助成しました。

 これはランタンツォーカン開発委員会(LTBS)の98年11月から昨99年の11月までの1年間の運営収支です。初年度で何と、88597ルピー(約13万円)の黒字経営です。全く信じられない数字です。それも収入の大部を占めるワークショップのチーズとパンとクッキーの売り上げはトレッカーのシーズンのみ、後半9月から11月の3ヶ月間の収入です。( )に表示した電気料金の未払いが気になりますが、渇水期には送電に十分な発電が行われないので、なかなか円滑に徴集というわけにゆかないようです。また現金収入の少ない一人暮らしの年寄り(主に女性)には考慮してやってはどうか、と言ってみたのですが、「彼女たちは結構ためていて、渋っているだけだ」ということでした。因に電気代は1wにつき1ルピー(1円50銭)、一般家庭は一律75ルピーが徴集されることになっています。とまれ、この黒字額は普通の家庭の約2年から2年半分の収入に相当します。LTBSは県に登録された社会福祉団体です。黒字分は銀行預金にしてありますが、ネパールの制度では社会福祉団体の場合、営利目的ではないので利子がつきません。ちょっと納得がゆきませんが.....。
 予想外の運営ぶりに大いに気を良くしましたが、問題がないわけではありません。
 98年秋プロジェクトが完了した時点で危惧されていた次のような幾点かを、LTBSと確認し話し合いました。
 1)電気のメンテナンスと発電に可能な水量の問題
 2)製品となるパンとチーズの品質の問題
 3)98年完成直後に土砂崩れで破壊されたシンドゥム/ムンローのシステム
 4)夜間成人学級と公民館の活用
 5)植林計画

1)について、活動の全ては発電力に懸かっています。昨年春は水不足で2キロワットの能力しか出せず、観光シーズンには苦労したようです。しかし、夏以降は順調で、秋のシーズン、9月から12月初旬まではワークショップがフル稼動できるほど十分な水量でした。99年のユルの発電(最大能力8kw)はおおよそですが、次のとおりです。
   98/Nov〜mid-Dec................. 4kw
mid-Dec〜99/Apr................. 2kw
May ......................... 2〜4kw
Jun〜mid-Dec.............................5〜6kw
 メンテナンスは彼らの最重要ポイントで、誉めてやりたいほどがんばっています。支出の維持管理費用は、備品の購入、機械の修理(この場合全てカトマンドゥでなされるため、出張費も含む)などです。昨年春、LTBSのチェーガから「電力が十分でないので、村の下方にパワーハウスを移し、能力をあげたいがどう思うか?自分たちで資金は捻出するつもりだが」という電話を受けました。あと数年このままで気象の変動も観察すべきだ、と答えました。彼らが提案している新しい場所は、95年にプロジェクトを立ち上げる時に候補にあがった場所ですが、その時はいきなり大規模なハードでは彼らの能力を超えるだろうと残念した経緯があります。いずれ近い将来、そうなるかも知れません。ただ、クンブ地方のように、電力アップがエスカレートして、観光業者間の競争が激しくなることも予想されます。
2)最も危惧していたのは、製品であるパンとチーズのクオリティの問題です。しかし、彼らなりの工夫を重ね、職人らしく自信にあふれる仕事ぶりでした。外国人トレッカーたちは少しルートから外れているものの、ランタン産のパンとチーズとクッキーを目指して集まってきます。作る端から売れ、特に日本人の団体は、一気にさらっていってしまって、キャンチェンの帰りに立ち寄るのを楽しみに下山してくる外国人たちには、申し訳ないと思う事もしばしばでした。
 九月に家畜がキャンチェンに下りてくるときから、ワークショップのチーズ作りは始まります。毎日キャンチェンまでミルクを集めに上がり、家畜が村周辺に下降すると、ドラムをもって集めに回ります。冬が近づくと、乳の量も減り、家内でチーズを作り始めるので、12月初旬までが製造可能な期間といえます。
 帰国するとき、若者たちは私にパンとチーズを託しました。宛先は、吉備高原吉田牧場の吉田全作さん、東京渋谷ルヴァンの甲田幹夫さん、元在ネパール日本大使館の吉田重信大使(現在横浜市にお住まい)、それとカトマンドゥの日本大使館の担当官(大西さん)です。みなさん大変喜んで下さいました。とりわけ吉田さんと甲田さんからは合格点をいただきほっとしました。かなり甘い点数かもしれません。
3)シンドゥムとムンローの対岸にはこの二部落への三キロワットの発電システムを設置しました。しかし、何と電球が家々に点灯され、大喜びをしている時に突然消滅してしまいました。わずか30分の寿命でした。以来、両部落の人々は沈黙したまま。私が訪問して、どうするつもりなのか集会を開くまで、放置してあったのです。これは誰の責任でもありません。まさかの場所で突然崖が崩壊してしまったのです。しかし村人は修復を言い出せば、自分たちで出費をせねばならないと思っていたようでした。両部落の人たちと、サイトの確認をし、NYSEのシャムラージ氏のアドバイスに従って、破壊された場所から約100メートル下手、崖ではなく段丘を落差にしての発電をします。取水口からこの地点までの計測では、パイプの長さは以前のシステムより100メートル延び、修復には約10万ルピー(約15万円)の経費がかかります。村側の送電線や発電機そのものは無傷です。修復はLTBSに任す事にしました。先日手紙が届き、村会議から助成金が出資されるようです。ムンロー、シンドゥムの村人はやる気です。
 それにしても送電線の道の美しいこと。トレッカーの道と平行していますが、そのようなものがあることも気付かない程風景に溶け込んでいます。電線を意識して眺めると、天然記念物のまっすぐで根腐れをしない木材を使った電柱がまっすぐに続き、昔日の田舎道をみるようです。この位置取りの設計者野島孝行さんに感謝です。
4)という理由で、公民館事業、とりわけワークショップの仕事に忙殺されているチェーガ、ギャルボ、ニマの三人の若者たちは、夜間成人学級を開く時間の余裕がありません。小学校の先生に報酬を支払って、助けてもらうことにはなっているのですが、なかなか熱がこもらないのが現状です。せめて、と私の滞在中は再開させました。解っていても、「解らない」と答えるのが、女の子の奥床しさ。先生がむりやり黒板に書かせると、ちゃんとできるのです。教室に来れば、女の子たちも家庭のごたごたや仕事のことなど忘れて、いきいきと学びます。電力不足の時期、雨のシーズン、農繁期などを除くと可能な時間は四、五ヶ月しかありません。がんばって欲しいと思います。
5)ランタン谷一帯をバファーゾーン(Buffer Zone/環境破壊の危機的地域)に指定してもらって、植林計画を進めたいと模索中です。これまでネパールの国立公園の入山料は、地元に還元されることはありませんでした。新しい政策では、バファーゾーンに認定された地域は、入山料の一部が支給され、環境整備や保全に充てられることになります。LTBSと村とが一緒になって目下申請の為の計画案を作成中です。私からも具体的な計画案を提示しました。また、日本の企業グループも別に、国立公園に植林計画を提案しているようです。共同して良い形で進められればと思っています。

 その他、短い滞在中でしたが色々ありました。ランタン村附近に駐屯中の軍へも送電をしていますが、送電線の位置が非常に美観を損ねているので、これを地中送電にするよう示唆し、軍の了承を得ました。秋には家畜、主にヤクが理由のわからない伝染病で何頭も死んでしまいました。村人は、今年は早くに下降したので暑さにやられたのだと言います。たまに起きる病気のようですが、事は深刻です。シャブルベンシの獣医に診てくれるよう依頼して下山しましたが、その後の報告は受け取っていません。
 細かく言えば、問題はたくさんあります。しかし、彼らは着実に自立への道を歩み始めています。遠くから応援を続けたいと思います。
貞兼 綾子/Mar 15 , 00

トレッキング道ぞいにあるLTBSへの道しるべ。奥に公民館と共同作業所、パワーハウスが見える。



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