動物園におけるクロサイ(Diceros bicornis)の排泄行動の意味

喜安薫,幸島司郎

クロサイは主に南アフリカに生息する大型哺乳類で,木の葉を主食として雌雄が単独で生活している.今回は横浜市立金沢動物園の飼育個体を対象に,臭い付けに関係していると思われる排泄行動の観察を行った.糞の排泄は全ての個体がほぼ同じ場所で行なった。排泄後,後脚で糞を蹴散らす行動が雌雄ともに観察され,糞の仕方に性差は見られなかった.しかし,尿の排泄では,雄が少量の尿を数回にわけて壁などの対象物に霧状に噴射するのに対して,雌は一度に大量の尿を壁などの対象物や糞の上にかけるという,はっきりした性差が見られた.子供の雌(1才半)はこの両方のタイプを行う.1日あたりの排尿頻度にも大きな雌雄差がみられ,雄は雌の十倍以上頻繁に,特に午前中に集中して排尿することがわかった.さらに排尿場所の特徴などにも差がみられ,雄が排尿によって臭い付けしていることが示唆された.


学会要旨リストに戻る