ボルネオ産マメジカ(Tragulus javanicus)の生態 (1) マメジカの一日

○松林尚志1、Edwin・J・Bosi2、幸島司郎1
(1:東工大生命理工、2:マレーシアサバ州野生生物局)

アジア・アフリカの熱帯雨林にのみ生息するマメジカは反芻動物のプロトタイプと考えられ、“生きている化石”と称されている。しかし、その生態に関する情報は断片的で推測の域を超えていないのが現状である。 
本研究は、東南アジアに生息する最小のマメジカであるジャワマメジカ(Tragulus javanicus)の生態解明を目的とし、1998年からマレーシアのサバ州において、ラジオトラッキング解析並びに直接観察を行っている。プロット内に約70mの固定した捕獲領域を設け、これまでに13頭のマメジカを捕獲し、うち雄4頭、雌2頭、合計6頭の行動を追跡することが出来た。2時間毎の24時間ロケーション調査の結果、活動日周期は薄明薄暮に最も高く、深夜に最も低い傾向を示した。すなわち彼らは行動圏内において、日中は隠れ家を転々とする分散した休息、薄明薄暮時には大きな移動、そして夜間は隠れ家外といったオープンエリアでの連続した休息という行動を繰り返している。この様な野外におけるマメジカの活動日周期と行動圏利用、さらには個体間行動などの報告は皆無である。したがって今回は捕獲個体の妊娠情報等を含め、とりわけ活動日周期と行動圏との関係について報告したい。



学会要旨リストに戻る