ワカケホンセイインコの音声行動〜特に飛立ち行動と関連して〜

00/3卒 冨田敏広

ワカケホンセイインコはインド・スリランカ原産の帰化鳥で、日中は数羽の小さな群れで行動し、夜には大きな集団ねぐらを形成して寝る習性をもつ。大岡山キャンパスには日本でも最大規模の集団ねぐらがあり、現在推定約800羽が利用している。当研究室によるこれまでの研究で、その生態や行動が明らかにされつつあるが、音声行動に関する情報はまだ少なく、音声のおおまかな分類や状況による出現頻度などが一部明らかにされているものの、まだ十分明らかにはなっていない。そこで、本研究では、これまでの鳴声の記載・分類を再検討するとともに、特に飛立ち行動に関連する音声を明らかにすることを目的に調査を行なった。

(方法)大岡山キャンパス南2号館(集団ねぐら)および東深沢中仮設グラウンド(中継地:朝は飛立ち群の分散の過程で、夕方は飛来群の集合の過程で利用される場所)において、デジタルビデオに超指向性マイクをつけたものを用いて、行動および音声の撮影・録音を行った。記録した音声サンプルはパソコンに取り込み、音声解析ソフト(SoundEdit16 ver.2J)で解析した。

(結果)分析の結果、従来10種類に分類されていた本種の音声は、kyo鳴き1a 、kyo鳴き1b、kyo鳴き2a、kyo鳴き2b、kyo鳴き3a、kyo鳴き3b、byo鳴き、garg鳴き、quu鳴き、bee音、pulse音1、pulse音2、click音の13種類に分類できることが明らかになった。
新たな分類をもとにして、集団での飛立ち時に発せられる音声の分析を行った結果、以下のことが明らかになった。ねぐらからの通常の飛立ちや中継地での飛立ちにおいては、飛立直前に発声頻度や音圧が上がり、羽をふるわせながらbyo鳴きで鳴く個体が増えること、また飛立の瞬間には、kyo鳴き1bが約0.2秒間隔で4回以上発せられ、飛立ち後はkyo鳴き2bで鳴く頻度が高くなることなどが明らかになった。飛立ち後、ねぐらは一旦静まり、飛立ちごとにこの過程が繰返されていた。また、カラスなどの捕食者に向かって飛立ち、集団で捕食者を追い回すモビング行動においては、通常の飛立ち行動と異なり、kyo鳴き2bの頻度が非常に高いことなども明らかになった。これらの結果をもとに飛立ち群の形成過程に現れる音声行動の機能について考察する。


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