ワカケホンセイインコの日中の行動 −飛立ちから飛来まで−

00/3卒 大滝俊介

(はじめに)
ワカケホンセイインコはアフリカからアジアにかけて広く分布するセネガルホンセイインコの亜種で、インド南部スリランカ原産のオウムの仲間である。日本ではペットとして輸入されたものが30年程前から野生化し、今も増え続けている。ワカケホンセイインコは集団でねぐらを形成する習性があり、東工大大岡山キャンパスには約800〜900羽が利用する日本最大のねぐらがある。毎朝すべてのインコが飛び立ち、日中は小集団に別れて活動し、夕方には再びねぐらに戻ってくる。
当研究室によるこれまでの研究によって、ねぐら内の行動については様々なことが次第に明らかになってきたが、飛び立ち後飛来までの日中の行動に関してはまだほとんどわかっていない。そこで本研究では、インコの日中の行動、特にねぐら集団のインコ達が、朝の飛び立ち後どのように分散し、夕方再び集合しているのかを明らかにすることを目的に調査を行った。
(方法)
東工大大岡山キャンパスのねぐらからの飛立群の追跡、昼間の行動および飛行方向の調査、目撃情報の解析などにより、その移動分散・再集合過程を分析した。また、移動経路上にある中継点での行動を観察・録画し、行動解析を行った。
(結果と考察)
飛立群の観察の結果、ねぐらから飛び立つ個体数は、方向ごとに毎日ほぼ安定しており、その割合は、ほぼ北82%、南13%、東5%、西0.2%であることがわかった。また追跡の結果、特に数の多い北への飛び立ち群は毎日ほぼ決まった3つの飛行ルートをとること、ねぐらから半径約3H以内の飛行ルート上には、多くの個体が一旦着陸する中継点が少なくとも3つあることがわかった。観察の結果、これらの中継点では群れの合流や分離などの形で群れ構成個体の再編成が行われていることがわかった。さらに、夕方ねぐらに帰ってくる時も朝と同じ3つの飛行ルートをとること、朝の中継点のうち少なくとも1つを帰りも利用していることなどが明らかになった。なぜこのような行動をするのかを考察すると共に、中継点やねぐらでの行動、飛立群が分散した後の日中の群の行動や活動範囲についても報告する予定である。



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