JSPS Core-to-Core Program, A.Advanced Research Networks "Tropical Biodiversity Conservation"

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フィールド&ゲノム科学実習

本実習は、グローバルCOEプログラム「生物の多様性と進化研究のための拠点形成」(2007-2012年度)で重視して実施してきた取り組みを、発展させるべく引き継いだもので、京都大学が伝統的に重視してきたフィールドワークと、最新の分子生物学的研究の両方の技術を身につけた、新しい世代の研究者を養成する目的で、海外の学生との研究交流も兼ねて、生物科学専攻と共同で企画・実施されています。


2014年度

世界遺産の島・屋久島で、フィールドワークを経験しませんか?豊かな自然の中で、自らの手足を動かして、観察や試料採取をします。何ごとも、見聞きするのと、実際にやってみるのは大違いですが、特にフィールド調査は、実際に現場にいって初めて実感できることが多いものです。野外調査の経験や、大学院での研究分野は問いません。野外調査をしたことがない方や、大学院ではミクロの研究を志している方も歓迎します。
フィールド科学実習(以下、屋久島実習)には、タンザニア、インド、マレーシア、ブラジルの大学院生も参加します。皆さんと同じように、生物学を専攻する大学院生です。屋久島実習は、英語を公式言語としますが、参加者の英語能力は問いません。英語で話した経験の少ない方や、英会話に自信がない方の参加も歓迎します。海外からの同世代の参加者と積極的にコミュニケーションを取ってみてください(海外からの参加者も英語を母国語とする人は多くありません)。
これに続くゲノム科学実習(以下、ゲノム実習)では、屋久島で採取した試料を使って、様々な実験と解析を行います。DNAを扱った経験の少ない方向けのコースと共に、次世代シーケンサーを駆使した高度な実習も行います。フィールドでのサンプリングと、それに続くゲノム分析を通して経験することで、フィールドワークもラボワークも行える研究者を養成することを目指しています。なお、フィールド実習とゲノム実習の両方を受講することをお勧めしますが、必須ではありません。皆さんの興味や経験に応じて、片方だけを受講していただいても結構です。
なお、本実習は、2014年度より始まる、霊長類・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院(以下、リーディング大学院)の実習でもあります。リーディング大学院の単位としても認められます。

募集要項・応募要領
概要 日本語版 (pdf) 英語版(pdf)
申込み用紙 日本語版 (doc) 英語版(doc)
応募期間 2014年4月1日(木)〜4月18日(金) (4月18日 必着)
申し込み先:京都大学野生動物研究センター 前川 洋子 まで
        E-Mail:maekawa.youko.8e@kyoto-u.ac.jp

対象者 京都大学理学研究科 生物科学専攻に所属する大学院生または霊長類・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院履修生
理学研究科生物科学専攻(修士課程)の正式な単位として認められます。

屋久島フィールド科学実習
開催日: 5月18日(日)〜5月26日(月) 屋久島フィールド科学実習

A)サル コース
屋久島の西部地域では1975年よりヤクシマザル(ニホンザルの亜種)の長期調査が継続されています。野生のサルではありますが、観察者に慣れているため至近距離から観察することができます。採食行動を中心に観察し、サルが何を食べているか調べます。可能であれば、サルの食べ残した食物片を採取してください。サルが食べていないときは社会行動(グルーミングなど)の観察もできるでしょう。慣れればサルの個体識別ができるようになるかもしれません。山の中での追跡は容易ではありませんが、地図とコンパスを使いながら、講師の指示に従ってサルの追跡を試みてください。
行動観察とあわせて糞の採取も行います。採食内容を調べるうえで、糞は重要な手がかりになります。糞をする瞬間を見落とさず、その個体の識別を確実にしたうえで糞を採取してください。採取した糞はDNA解析にも用いますが、そこに含まれる種子や食物(葉や昆虫など)から採食内容を調べます。

B)昆虫コース
 昨年の実習では、ヤクシマザルの食べた昆虫を、サルの糞に含まれるDNAから同定しようとしました。しかし、昆虫のDNA配列の情報が不足しており、屋久島の昆虫DNAデータベースを自分たちで作ることが必要なことが分かってきました。そこで、屋久島で特にサルの食べそうな昆虫を採取し、そのDNAデータベースを作ることを目指します。

C)植物コース
 屋久島は九州最高峰である宮之浦岳〈1963m〉を擁し、この海抜0 mからの標高による急激な環境勾配が植物の多様化を生み出しています。年間降水量が4000−8000 mmに達する多雨地帯であり、シダ植物の宝庫となっています。屋久島におけるシダ植物の多様性と繁殖スケジュールの基礎データを得るために、植物班では、いくつかの地点で胞子形成を行っているシダと栄養成長を行っているシダの同定を行います。DNAサンプルを同時に採集することにより、形態による同定が難しい場合や、胞子体形成に至っていないシダも対象にします。これらのデータは、哺乳類によるシダ植物の利用を調べるうえでの参照データともなります。
D)シカ(および他の哺乳類の)糞コース
 昨年に続き、サル以外の糞を採取して、そこから情報を得ることを目指します。昨年は、ほとんど調査がされていないイタチの糞を探しましたが、思ったよりも糞が見つからず、十分な試料が得られませんでした。今回は、必ず取れそうなシカの糞を採取します。(もちろん、機会があれば、イタチやその他の食肉目の糞も探します)。シカは、サルに比べて直接観察が難しく、何を食べているかは、よく分かっていません。糞に含まれる植物のDNAが同定できれば、屋久島のシカの食性を知る上で、有用な情報になると思います。また、地域によってシカの食べ物も異なると思いますので、少し遠出をして、異なる地域の糞を分析して、食べているものがどの程度違うかを調べてみたいと思います。

ゲノム科学実習
開催日: 5月29日(木)〜 6月6日(金)(6/6の国際セミナーでの発表を含む)

現在計画しているのは、以下の内容です(内容は、変更する場合があります)。

・屋久島で採取してきたサルなどの糞からDNAを精製し、ターゲットリシークエンスによりヤクシマザルのゲノムを調べる
・次世代シークエンス解析によりヤクシマザルの腸内細菌を調べる
・次世代シークエンス解析によりヤクシマザルの糞に含まれる昆虫の種同定を行う
・次世代シークエンス解析によりヤクシカの糞に含まれる植物の種同定を行う
・屋久島で採取した昆虫を用いて、種同定に用いる領域の配列を決定する
・屋久島で採取したシダ植物を用いて、種同定に用いる領域の配列を決定する




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